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活動報告

2012/06/27

葛西研究員、大正大学宗教学会2012年度春期大会「こころのケアと宗教」に出席

 2012年6月22日に開催された大正大学でのシンポジウム「こころのケアと宗教」に葛西研究員が出席。「臨床宗教師」制度の創設に関わっているおひとりの高橋原先生(東北大学実践宗教学寄付講座准教授)と、日本スピリチュアルケア学会において認定資格制度の整備に携わっている大河内大博先生(上智大学グリーフケア研究所人材養成講座講師)の発表、「臨床心理士」制度に携わってきた伊藤直文先生(大正大学人間学部長・臨床心理学科教授)の前二者へのコメントを伺ってきました。なかでも現在、特に注目を集めている「臨床宗教師」についての最新情報を共有させていただきます。
 東北大学実践宗教学寄付講座が養成する「臨床宗教師」(※レポートを参照ください)は2013年春には誕生するとのこと。資格認定要件は、「宮城県宗教法人連絡会」加盟団体による僧侶等の資格を与えられていることですが、寺族などにまで広げるか、新宗教教団の教師等の場合はどうするかなどは検討中だそうです。
養成講座の第1弾は、2012年秋から2013年3月まで週13時間の予定で開催されます。この時間数は、米国のCPE(臨床牧会訓練)のプログラム(1600~1800時間)や、2013年に認定開始予定の日本スピリチュアルケア学会の認定資格(312時間~)よりも少ないものとなっています。
 「臨床宗教師」は、「宗教者」であることを重んじるため、日本スピリチュアルケア学会の認定プログラムとは一線を画しています。異なる信仰をもつ他者の信仰(あるいはもたない人の信念)を尊重して宗教者がケアするというスタンスです。宗教的ケアを押しつけるわけではありませんが、まったくの「超宗教」ではなく、各宗教者のもっているものを活かしたケアを考えているようです。たとえば、「臨床宗教師」養成プログラムの特徴は、日常的な儀礼や宗教的なサービスの分かち合いをすることにあります。具体的には、異なる宗教者とともに儀礼を共有したり、臨終の作法やあの世についての考え方などの分かち合いをしたりすることなどがあげられました。
 課題は、現時点では仏教者とキリスト教者が主に担っていること、被災地が復興しつつあるなかで臨床宗教師の働く「現場」とはどこを想定するのか、など諸般あります。ですが、シンポジウムのおりにも、臨床宗教師への期待や課題、問題点などを積極的に受け付けている旨を周知し、智恵を集約させて練り上げていこうという意気込みが伝わってきました。日本スピリチュアルケア学会の認定資格ともども、「臨床宗教師」制度が難路を切り開かれるよう、お祈りいたします。