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日本国内で刊行された宗教関連書籍のレビューです。
約一ヶ月、さまざまな分野の書籍からピックアップしてご紹介します。毎月25日頃に更新します。
興味深い本を見逃さないよう、ぜひとも、毎月チェックしてみてください。
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最新の書評  2025/08/17

【書籍紹介】『いま,ともに考える社会学』(有斐閣、2025年6月刊)

『いま,ともに考える社会学』書影

2025年6月に刊行された、山田真茂留・有田伸・中村英代 編『いま,ともに考える社会学』(有斐閣)をご献本いただきました。
本書は、「学問をとおして社会とつながろう」というコンセプトのもとに展開される「y-knot」シリーズの一冊で、社会学を“鑑賞”するのではなく、実際に概念やモデル、データを使って社会を読み解く力を身につけようという入門書です。

第4章では、「社会の中の宗教 宗教のトリセツ」と題して、宗教について取り上げられています。宗教学者・永井美紀子先生による執筆で、宗教をめぐるさまざまな調査や研究成果をもとに、わかりやすく丁寧に解説されています。ここ ではその内容を少しだけ紹介させていただきます。

この章ではまず、日本・アメリカ・フランスの宗教状況を挙げて、社会の中での宗教がどのように位置づけられているかを見ていきます。たとえば、日本では「宗教離れ」が語られる一方で、実は日常の中に宗教的な文化や慣習が息づいていることが、統計や意識調査を通して明らかにされます。
アメリカでは「スピリチュアルだけど宗教的ではない(SBNR)」という人々が増えており、その背景には、宗教と政治(特に共和党)との結びつきがあると感じられていること、伝統的保守的な宗教と多様化する社会とのギャップが指摘されます。フランスでは、カトリックの伝統があるにもかかわらず、カトリックで否定している人工妊娠中絶の権利を2024年に憲法改定して保障するという大きな変化が起きたことが紹介され、宗教の社会的影響の変容が浮き彫りになります。

さらに、日本の宗教的歴史や新宗教の動向にも触れ、「宗教2世」と呼ばれる人々の問題が取り上げられます。600万人とも言われる宗教2世の存在と、その中で生まれる葛藤や苦悩は、また宗教に限らず、学校や職場など他の社会関係にも通じる問題として描かれています。

この章は、宗教が「社会の中でどう機能しているか」「どのように語られているか」という視点から捉えています。宗教をめぐる多様な文化や価値観を理解することは、グローバル社会を生きる私たちにとって欠かせない視点です。

四六判で軽く、装丁も親しみやすいため、若い読者にも手に取りやすい一冊です。宗教についても、限られたページ数ながら、日本と世界の状況をバランスよく紹介しており、入門として非常に優れた内容になっています。