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活動報告

2012/07/27

自殺対策研究協議会に参加(葛西研究員)

 日本における年間の自殺者の数が3万人を超えるようになって久しいです。この問題についての全国的・国家的協働の現在をかいまみる会議に,葛西賢太研究員が出席いたしました。
 第6回 自殺対策研究協議会は、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 自殺予防総合対策センターの主催で、300人近い諸分野の方々が集まって、2011年7月25日、新宿にて行われました。
 たくさんの話題が凝縮されていましたが、今回の最大の力点は、医療者や行政のみならず、NPOや企業やその他の諸団体と積極的連携をするための足がかり、ということでした。たとえば、お寺や教会には、自殺を企図している人にとって、医療者などへのゲートキーパーとしての役割が期待されるわけです。ごく一部だけ、葛西研究員の関心に触れた部分を、かいつまんで紹介いたします。
 20年前に、国連、そしてWHOが,自殺予防のためのガイドラインを提示し、各国の実態に合った対策を行うべきと提言しました。それにあわせ、2006年に、自殺対策基本法、2007年には対策大綱が制定されました(現在改訂中)。しかし、自殺の相談を受けるにあたって必要とされるさまざまな経験や知識、それらを持つ専門家との連携という大きな課題があらためて浮き彫りになりました。昨今の不況が自殺者の増加要因として指摘されますが、経済要因が自殺者増加に影響するかどうかは地域ごとに差があり、地域差の分析も怠らない必要性が確認されました。
 今回の協議会は途中で四つの分科会に分かれ、行政、医療における取り組みと連携は従来通り(もちろん新たな課題を加えて)なのですが、第三の分科会では昨今注目されている職場でのメンタルケアの課題、第四の分科会では社会的支援と連携(宗教や各種NPOなどを含む)という課題が話題にされました。前者については、たとえば、うつなどで長期休業したものが復職するにあたりゴーサインをどのように出すか、また職場の同僚が自殺した場合にどのようなケアが必要であり可能か、管理者としてどう対応すべきか、などの話題も出ました。また後者では、日本における生活困窮者の現況とNPOによる支援、司法書士のクライアントの自殺防止取り組みの話題が提供されました。
 司法書士連合会の自殺防止の取り組みについて補足しておきます。昨今、債権整理の活動などで存在感を増している司法書士ですが、依頼者が債権整理の途中で自殺されることが少なからずあり、整理を遂行していた司法書士がつらい思いや無力感に苦しむ事があるそうです。それで、数年前から、司法書士連合会ではワーキンググループを作って、自殺企図の背景となる精神疾患や前歴などにも注意を配り、依頼者とのコミュニケーションの取り方にもさまざまな工夫をしているとのことでした。
 
 関心がおありの方は、自殺問題についての統計資料などもある同センターのサイトをご覧下さい。