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CIR・DB ニュースレポート 2026年4月 イスラム

2026/07/20

レポートタイトル
CIR・DB ニュースレポート 2026年4月 イスラム
執筆者
荒木亮
宗教情報データベースを用いて、検索したいワードの欄に「イスラム ムスリム」と入力、期間を2026年4月1日~2026年4月30日と設定し、「類義語を含む」にチェックを入れて検索したところ418件の記事が抽出された。さらに絞り込み条件として地域のカテゴリの「日本」にチェックを入れたところ91件の記事が該当した。前月と比較すると2026年3月では記事の総数が472件、絞り込み条件に「日本」を加えた結果が94件であったことから、国外の記事がやや減少したと言える。〈2026年7月8日現在〉
 

◆2026年4月の国外の出来事

3月に引き続き今月も米・イスラエルと、イスラム共和制を布く国家であるイランとの戦争関連の記事が多く、中でも11日にパキスタンの仲介による米とイランによる戦闘終結に向けた協議が開始されたことを報じる記事(朝日・東京 4/12 ほか)、および世界的に原油高が続く中で注目が集まるホルムズ海峡をめぐる状況に関する報道(日経・東京 4/19 ほか)が多く見られた。また関連するかたちで激化するレバノンでの親イラン派シーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍との戦闘の動向を伝える記事も頻繁に見られた(朝日・東京 4/14 ほか)。その他、政治や紛争にまつわる記事としては、アフガニスタンで暫定政権を担うイスラム主義組織タリバンとパキスタンの外交当局者らが1日、国境地帯での戦闘を巡る協議を中国の仲介で開始したことに関する報道(読売・東京 4/3)、シリア外務省が16日、イスラム過激派組織「イスラム国」掃討のため約10年間にわたりシリアに駐留していた米軍から軍事拠点を引き継いだと発表したことを報道する記事(読売・東京・夕 4/18 ほか)、また西アフリカのマリ共和国にて首都を含む複数の都市にて武装集団による一斉攻撃があった事件で、アルカイダ系のイスラム過激派組織が、北部の遊牧民トゥアレグの反政府勢力と共同で攻撃したとの犯行声明を出したことを報じる記事(信濃毎日・長野 4/27)などが見られた。他方、社会・文化的な記事としては、イスラム教徒が多数派である西アフリカのセネガルで3月30日、ジョマイ大統領が同性同士の性行為に対して最長5年だった拘禁刑を2倍の10年に厳罰化する改正法案に署名したことを報じる記事(朝日・東京 4/2)[→ イスラームにおける同性愛]、インドネシアのイスラム教徒が22日、米・イスラエルとイランとの戦争により中東情勢が不透明な中、聖地メッカでの大巡礼に参加すべくサウジアラビアに向けて出発したことを報じる記事(読売・東京 4/25)、トルコ議会が22日、15歳未満によるSNSの利用を禁止する法案を可決し、イスラム保守層を支持基盤とするエルドアン大統領の署名などを経て発効する見通しであることを報じる記事(東京・東京・夕 4/28)、またイスラム教徒が多数を占めるインドネシアでは米・イスラエルによるイランへの攻撃が開始されて以降に反米感情が高まり、国連平和維持活動(PKO)として同国がレバノンに派遣する部隊の縮小や撤退を求める声が出ていることを報じる記事(日経・東京 4/29)などがあった。
 

◆2026年4月の国内の出来事

福岡県糸島市に建設予定のモスクをめぐって、SNS上での反対意見や署名活動が増加していること、およびそうした状況に戸惑う現地のムスリムの声を紹介する記事(朝日・東京・夕 4/10)、富山県のご当地ラーメン「富山ブラック」を提供する富山県射水市の飲食会社「天高く」がヴィーガンやハラールに配慮したメニューで欧州・中東に進出する取り組みを紹介する記事(日経・北陸 4/17)、島根県立大浜田キャンパスの学生食堂にて4月よりハラールメニューが提供されるようになったことを紹介する記事(山陰中央新報・松江 4/21読売・島根 4/22)、今年の秋に愛知県を中心に開催されるアジア-アジアパラ競技大会に向けて、組織委員会が県栄養士会などと協力して選手や関係者向けに作成したムスリム対応の「なごやめし」レシピ集が公開されたことを報じる記事(読売・名古屋 4/27)などがあった。
 

◆記事のピックアップとコメント

✓「LOSTLAND/ロストランド ロヒンギャ姉弟の道なき道」[日経・東京・夕 4/24 ほか]
ミャンマーで迫害され隣国へと逃げるイスラム系少数民族のロヒンギャ難民の実情を描いた映画「LOSTLAND/ロストランド」が4月24日に公開された。公開に先立ち、日本ではロヒンギャが集住する群馬県高崎市にて藤元明緒監督のトークショーが開催されその様子が記事(上毛・前橋 4/6)で取り上げられたり、藤元監督へのインタビューをもとに映画に込められた思いや撮影の舞台裏などが明かされる記事(読売・東京・夕 4/17)、また映画のレビューが雑誌に掲載される(AERA 4月27日号)など紙面を賑わせた。監督の藤元氏は、アジアの移民や難民の現実をリアルかつ繊細に描くことで国際的に高く評価されており、今回の「LOSTLAND」は昨年(2025年)の第82回ベネチア国際映画祭にてオリゾンティ部門審査員特別賞を日本人監督としては初めて受賞するなど世界から注目されている。
☞ このニュースレポートでも過去に何度か取り上げてきたが[参考:2026年2月:+α 用語ミニ解説]、ロヒンギャはしばしば「世界で最も迫害された少数民族」と呼ばれ、2017年8月にミャンマー国軍が大規模な掃討作戦を実行して以来、100万にも上るといわれる人々がバングラデシュを主とした隣国に逃れた。映画がきっかけとなり、ロヒンギャ問題を知り考える者が一人でも多くなることを願いたい。
参考:映画『LOST LAND/ロストランド』公式サイト(https://www.lostland-movie.com/)
 

◆+α 用語ミニ解説

イスラームにおける同性愛:キリスト教やユダヤ教と同様に、イスラームでは同性愛が禁止されており、男女間の性交のみが認められています。より厳密にいうと、結婚した夫婦が営むセックス以外はすべて非合法であり、もし見つかった場合、イスラーム法上では石打ちの刑が科されることになっています。ユダヤ教やキリスト教が同性愛を否定する一つの根拠である、『旧約聖書』の『創世記』における「ロトの民」に相当する物語がクルアーンにも登場し、その記述がイスラームにおいて男色ないしは同性愛を否定する根拠となっているのです。ただし、現実をみていくと、サウジアラビアやイランなど、イスラーム法の影響が強い国家でも性同一性障害の存在が認められており、また東南アジアのムスリム社会でも「オカマ(レディボーイ)」の文化が根付いていることから、同性愛を禁止するイスラーム法と現実との間には多様さやグラデーションがあると言えます。

バックナンバー ⇒ 2026年3月_イスラム(CIR・DB ニュースレポート)