研究員レポート
2026/06/20
CIR・DB ニュースレポート 2026年3月 イスラム |
宗教情報 |
荒木亮
宗教情報データベースを用いて、検索したいワードの欄に「イスラム ムスリム」と入力、期間を2026年3月1日~2026年3月31日と設定し、「類義語を含む」にチェックを入れて検索したところ472件の記事が抽出された。さらに絞り込み条件として地域のカテゴリの「日本」にチェックを入れたところ94件の記事が該当した。前月と比較すると2026年2月では記事の総数が229件、絞り込み条件に「日本」を加えた結果が62件であったことから、国内は1.5倍程度、また国外は2倍程度、記事数が増加した。〈2026年6月1日現在〉
✓「イスラム嫌悪の現状学ぶ 福岡市でシンポ 弁護士など講演」[西日本・福岡 3/18]
国連が定める「イスラモフォビア(イスラム嫌悪)と闘う国際デー」にあわせて福岡県弁護士会が主催するシンポジウムが3月15日に福岡市内で開かれ、各地で広がるイスラム教徒への嫌悪やヘイトスピーチをめぐる現状を学び、共生社会を守る方策を考えるべく弁護士や研究者らが講演した。記事では、同県弁護士会の仲家淳彦弁護士による、ヘイトスピーチをめぐる法律の現状についての説明がなされたこと、また中東研究と国際法を専門とする九州大学の沖祐太郎特任准教授よりイスラモフォビアの背景やイスラムの多様性に関する講演がなされたことなど、当日のシンポジウムの様子が紹介されている。
☞ イスラムやその信者であるムスリムに対する嫌悪や偏見は、広くはイスラモフォビア(日本訳をするならばイスラム嫌悪やイスラム恐怖症)と表現され、世界の様々な地域で問題視されている。実際、この毎月のレポートでも取り上げている記事の内容のように、日本社会におけるイスラム教徒への嫌悪やヘイト、またムスリムの集会活動やモスク建設運動に対する反対運動などもイスラモフォビアに当てはまるものが多いと思われる。このシンポジウムのような機会を通じて、日本社会におけるヘイトスピーチの問題やその違法性の確認、また異文化理解の深化による差別や偏見の解消がなされていくことを願いたい。
バックナンバー ⇒ 2026年2月_イスラム(CIR・DB ニュースレポート)
◆2026年3月の国外の出来事
今月は2月28日に米・イスラエルがイランに対して行った直接攻撃より本格化した米・イスラエルとイランの戦争に関する記事が多く、今月の全記事数472件のうち、絞り込み条件で「イラン」という言葉を含む記事を抽出したところ226件に上った。これらの記事については下記:[→ トピック 米・イスラエルとイランとの戦争関連の記事]にまとめた。その他には、イランのハメネイ師が殺害されたことを受けてレバノンのシーア派組織ヒズボラがイスラエルを攻撃し、またそれに対するイスラエル側の反撃により多くの死傷者が出たことに関する記事(朝日・東京 3/3ほか)、アフガニスタンで暫定政権を担うイスラム主義組織タリバンが1日、隣国パキスタン北西部のパキスタン軍施設を攻撃したと表明したことと両国の軍事的緊張を報じる記事(東京・東京 3/3)、ナイジェリア北東部でイスラム過激派とみられる武装集団が集落を襲い、女性や子どもを含む住民100人以上を連れ去った事件を報じる記事(東京・東京[夕] 3/10)、インドネシア政府が13日、4月中旬に首都ジャカルタで開催する予定であり、イランも加盟する発展途上のイスラム諸国の経済協力組織「D8」の首脳会議を無期限延期すると発表したことを報じる記事(日経・東京 3/14)、軍事衝突中のパキスタン政府とアフガニスタンのタリバン暫定政権が18日、断食明けの祝祭[→ イード=アル=フィトリ]を迎えるにあたってそれぞれ一時的に攻撃を停止すると表明したことを報じる記事(東京・東京 3/20)、米国NY市にてイスラム教徒初の市長に就任したゾーラン・マムダニ氏の来歴などを報じた記事(正論 3月号)などが見られた。[トピック 米・イスラエルとイランとの戦争関連の記事]
今月は米・イスラエルとイランの戦争に関する記事が多く、2月28日に行われた米国とイスラエルによるイランへの直接攻撃に関する報道(産経・東京 3/1ほか)や一連の攻撃によりイスラム法学者でイランの最高指導者でもあるハメネイ師が殺害されたことに関する報道(毎日・東京 3/2ほか)が多かった。またイランが9日にハメネイ師の次男であるモジタバ師を新しい最高指導者に選出したことに関する報道(朝日・東京 3/10ほか)や12日に発表されたモジタバ師による初めての声明の内容を報じる記事(読売・東京[夕] 3/13)、また米国とイランの戦闘終結に向けた協議が、サウジアラビアをはじめとするイスラム圈諸国と会合を開いたパキスタンの仲介により、数日内に実施される見通しであるとの報道(東京・東京[夕] 3/30)も多く見られた。さらに関連して、米国のイラン攻撃の第一報の直後にニューヨークのタイムズスクエアで反戦デモが起こったことを紹介する記事(日刊ゲンダイ 3/2)やパキスタン南部で1日、ハメネイ師が殺害されたことに抗議する群衆が暴徒化し米国総領事館を襲撃する事件が発生したことを伝える記事(朝日・東京 3/2)、イスラム教徒が多数を占めるインドネシアではイランへの攻撃開始を受けて反米感情が高まり、同国軍も参画するガザの平和計画からの撤退論が国内で出ていることを報じる記事(日経・東京 3/5)が見られた。◆2026年3月の国内の出来事
国外ではイラン関連の記事が多く見られたが、国内でも、埼玉県にてペルシアエ芸品店を営む、イラン出身のイスラム教徒が祖国を案じる様子を紹介する記事(埼玉・さいたま 3/8)や、中東・イスラム圏の民族衣装用の生地を加工している福井県の染色加工が戦争の長期化により出荷に影響が出ないか懸念を募らせている状況を紹介する記事(福井・福井 3/5)などが見られた。また2月から3月にかけてイスラム圏では断食月(※日本社会におけるイスラムの断食の様子については[研究員レポート:2月18日(夜)より始まるラマダーン月(断食月)に寄せて]をご覧ください )と重なっているが、茨城県水戸市の水戸モスクにて、日没後の断食明けの食事「イフタール」を共にしながら、互いの文化への理解を深めるイベントが行われたことに関する記事(毎日・茨城 3/6)や、茨城県筑西市のNPO法人が1日、「イフタール」を調理する料理教室を開いたことを取り上げた記事(茨城・水戸 3/8)があった。その他の記事では、訪日客拡大を目的としてマレーシアの学生を町内に招く教育旅行事業を始めた福井県丹生郡越前町の宗教面の環境整備への取り組みを紹介する記事(福井・福井 3/1)や、モスクの建設をめぐって反対運動が起きている藤沢市でイスラム教を理解するための学習会が開かれ、市内の小中学校の教員ら60人以上が参加したことを紹介する記事(東京・神奈川 3/4)、徳島県にある阿波銀行の取引先企業でつくる「あわぎんビジネスカレッジ」の経済視察団が2月7日~12日の日程でマレーシアを訪れ、ハラール認証を受けたスイーツを製造する現地の日系企業を視察したことなどを報告する記事(徳島・徳島 3/17)、インドネシアやマレーシアからの観光客が急増している北海道にてムスリムに配慮した食事や礼拝に配慮した「おもてなし」対応が、北海道内で商機を生みつつあることを現地の取り組みも踏まえ紹介する記事(北海道・札幌 3/25)があった。加えて、モスク建設計画をめぐる課題や問題について神奈川県の出来事を事例に伝える記事(朝日・東京 3/26)や、日本社会のモスク建設問題やイスラム教をめぐる状況に対するサイード佐藤裕一・日本ムスリム協会副会長の寄稿を掲載する記事(キリスト新聞 3/21)、「現代における宗教の役割研究会(通称・コルモス)」が主催する第72回コルモス研究会議にて発表されたムスリム墓地に関する報告の概要を掲載する記事があった(文化時報 3/24)。また、北海道江別市にある中古車販売会社事務所とモスクとして使用されているプレハブで火災が相次いでいることを報じる記事(朝日・札幌 3/1、産経・東京 3/4)、イスラム系過激派組織であるアルカーイダによって計画され米国で収監中のラムジ・ユセフ受刑者によって平成6年(1994年)に実行された比航空機爆破事件の捜査を沖縄県警が25日に終結したことを報じる記事(産経・東京 3/26)などがあった。◆記事のピックアップとコメント
✓「ヘイト防止条例「福岡でも」訴え イスラム嫌悪の背景や現状解説」[朝日・北九州 3/18]✓「イスラム嫌悪の現状学ぶ 福岡市でシンポ 弁護士など講演」[西日本・福岡 3/18]
国連が定める「イスラモフォビア(イスラム嫌悪)と闘う国際デー」にあわせて福岡県弁護士会が主催するシンポジウムが3月15日に福岡市内で開かれ、各地で広がるイスラム教徒への嫌悪やヘイトスピーチをめぐる現状を学び、共生社会を守る方策を考えるべく弁護士や研究者らが講演した。記事では、同県弁護士会の仲家淳彦弁護士による、ヘイトスピーチをめぐる法律の現状についての説明がなされたこと、また中東研究と国際法を専門とする九州大学の沖祐太郎特任准教授よりイスラモフォビアの背景やイスラムの多様性に関する講演がなされたことなど、当日のシンポジウムの様子が紹介されている。
☞ イスラムやその信者であるムスリムに対する嫌悪や偏見は、広くはイスラモフォビア(日本訳をするならばイスラム嫌悪やイスラム恐怖症)と表現され、世界の様々な地域で問題視されている。実際、この毎月のレポートでも取り上げている記事の内容のように、日本社会におけるイスラム教徒への嫌悪やヘイト、またムスリムの集会活動やモスク建設運動に対する反対運動などもイスラモフォビアに当てはまるものが多いと思われる。このシンポジウムのような機会を通じて、日本社会におけるヘイトスピーチの問題やその違法性の確認、また異文化理解の深化による差別や偏見の解消がなされていくことを願いたい。
◆+α 用語ミニ解説
イード=アル=フィトリ(断食明けの祝祭):イスラム歴の第9月(ラマダーン月)の間、約30日にわたる毎日の断食実践が終わると、第10月(シャウワール月)の第1日目には早朝にモスクにて特別な礼拝が行われます。今年は3月20日(金)に断食が終わり――すなわち20日がイスラム歴の第9月(ラマダーン月)の最終日となり――、21日(土)が断食明けの初日――すなわち第10月(シャウワール月)の第1日目――となりました。ムスリムは断食明けの礼拝後、国や地域、宗派によって多少異なりますが、家族や親戚と会って一緒に食事をしたり、近隣住民や友人に挨拶をしたり、子供にお年玉のような小遣いやプレゼントを渡したりしながらラマダーン月における断食を無事にやり遂げたことをアッラー(神)に感謝し、お祝いする数日間を過ごします。ご関心のある方は、インドネシアのイード=アル=フィトリを取り上げた過去の[研究員レポート:断食明けのお祭り]をご覧ください。バックナンバー ⇒ 2026年2月_イスラム(CIR・DB ニュースレポート)
