研究員レポート
2026/06/20
CIR・DB ニュースレポート 2026年3月 新宗教 |
宗教情報 |
道蔦汐里
宗教情報データベースにて、期間を2026年3月1日~2026年3月31日と設定し、「類義語を含む」「日本の新宗教」にチェックを入れて検索したところ423件の記事が抽出された。前月の2026年2月は427件であったことから、記事件数はほぼ横ばいとなった。〈2026年6月8日現在〉◆ 2026年3月の出来事
4日に世界平和統一家庭連合(通称・統一教会)に対する東京高裁の解散命令があったことから、これに関する記事が多く見られ、「統一教会」という言葉を含む記事件数は423件のうち212件にのぼった(類語を含む)[→◆ 記事のピックアップとコメント参照]。各紙は2日ごろから、解散命令が4日に出る予定だとする報道をし始め、4日以降には全国紙・地方紙が解散決定を一斉に報じた(朝日・東京・夕3/4、読売・東京・夕3/4ほか)。その後、教団は高裁決定を不服として、9日に最高裁へ特別抗告し(毎日・東京3/10ほか)、25日には教団が特別抗告の理由書を最高裁に提出するなど(読売・東京3/26ほか)の報道が相次いだ。他にも統一教会関連として、教団の有志団体が、おはら祭(鹿児島市)への参加を拒否されたことをめぐり、信者側が同市に対して起こした訴訟で、信者側の請求を棄却した鹿児島地裁判決を不服として、信者側が3日に福岡高裁宮崎支部に控訴したことを報じる記事(南日本・鹿児島3/4)もみられた。
オウム真理教とその後継団体に関する記事もいくつか見られ、「オウム真理教」という言葉を含む記事件数は89件にのぼった(類語を含む)。具体的には、9日にオウム真理教後継団体・アレフに対する7回目の再発防止処分が決定した記事(読売・東京3/10ほか)、ひかりの輪がアレフを民事執行法違反容疑で告発していたことが20日に判明した記事(東京・東京3/20)、信者6人が今年2月に団体規制法違反(使用禁止場所の使用)の疑いで送検されたものの3/25に不起訴になった記事(北海道・札幌3/26ほか)などが報じられた。また、地下鉄サリン事件から30年が経過したことに伴って被害者に対して行われたアンケート結果が10日に公表された記事(日経・東京3/11ほか)や、20日で事件から31年目を迎えることに関する被害者らの動きついての記事(東京・東京3/19、産経・東京3/21ほか)もみられた。
その他、念法眞教が関東大震災と東京大空襲の慰霊法要を教団行事として初開催したことに関する記事(仏教タイムス3/5、文化時報3/6ほか)や、立正佼成会の庭野平和財団が10日、庭野平和賞にアマゾン先住民の精神的指導者のベンキ・ピヤコ氏を選んだことに関する記事(中外日報3/13、仏教タイムス3/19ほか)もみられた。また、妙智會教団(2日)や立正佼成会(12日)、大本・人類愛善会(17日)が中東地域での紛争激化に対する声明を出したことに関する記事(文化時報3/24、中外日報3/25ほか)も報じられた。
◆ 記事のピックアップとコメント
✓「旧統一教会 高裁も解散命令 地裁決定支持 教団清算手続きへ」[朝日・東京・夕3/4(読売・東京・夕3/4 、日経・東京3/5ほか)]
✓「旧統一教会 特別抗告 解散命令不服 最高裁」
[毎日・東京3/10(日経・東京3/10、産経・東京3/10ほか)]
✓「旧統一教会が理由書提出」
[読売・東京3/26]
高額献金などの問題をめぐり、文部科学省が請求していた統一教会に対する解散命令について、東京高裁は3月4日、2025年3月の東京地裁判決を支持し、教団に解散を命じる決定を出した。法令違反を理由とする解散命令は、オウム真理教と明覚寺に続き3例目となるが、民法上の不法行為を根拠とするのは初となる。宗教法人法では高裁決定の効力が即時に生じるとされているため、教団は法人格を失い、清算手続きに入ることとなった。
なお、教団は高裁決定を不服として9日に最高裁へ特別抗告し、25日には特別抗告の理由書を最高裁に提出した。理由書では、不法行為を具体的に裏付ける証拠が無いにもかかわらず高裁が解散を命じたとして、信教の自由を保障した憲法に違反しているなどと主張した。
☞ 2022年7月8日の安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、統一教会をめぐる問題が改めて注目された。文部科学省は、宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」を計7回行使し、教団に法令違反の疑いがあるとして調査を進めた。その結果、同法が定める解散命令事由に該当すると判断し、2023年10月13日、東京地裁に解散命令を請求した(読売・東京・夕2023/10/13ほか)。その後東京地裁は2025年3月25日、教団に対する解散命令を決定した(毎日・東京2025/3/26ほか)。これに対して教団は同年4月7日に即時抗告(読売・東京・夕2025/4/7ほか)していたことから、高裁での判断が注目されていた。そして今回、東京高裁は地裁決定を支持し、教団の即時抗告を棄却した。
高裁決定を受け、教団や関係者からは反発や憤りの声が上がった。一方で、被害者支援に取り組む弁護士や「宗教2世」当事者団体からは高裁決定を支持する意見が示されたほか、宗教団体からもさまざまな反応が寄せられた。また一般紙・宗教専門紙ともに社説や有識者の論評を掲載するなど、決定は大きな反響を呼んだ。
高裁決定に基づき、教団の清算手続きが開始された。清算手続きでは、教団が所有する土地や建物などの財産が処分され、債務の弁済が行われる。弁済後に財産が残った場合には、宗教法人法に基づき、教団が残余財産の帰属先として定めている天地正教(北海道帯広市)[→◆+α 用語ミニ解説参照]へ引き渡されることになっている。この点については、全国霊感商法対策弁護士連絡会などから懸念が示された(仏教タイムス3/19ほか)。今後、被害者救済がどのように進むのか、また最高裁がどのような判断を示すのかが注目されている。
◆ +α 用語ミニ解説
天地正教:教祖・川瀬カヨ(1911~1994)が1956年に「啓示」を受けて立教した宗教団体。発足当初は「天運教」を名乗り、1987年に宗教法人として認証された後、翌1988年に天地正教へ改称した。本部は北海道帯広市にあり、統一教会によれば教団の友好団体とされる。統一教会は2009年6月、解散後に残余財産が生じた場合の帰属先を天地正教とすることを決議した。同年は、霊感商法をめぐり教団傘下企業の社長が逮捕された「新世事件」を受けて、教団が「コンプライアンス宣言」を発表した時期でもあった。櫻井義秀・北海道大学大学院教授によれば、天地正教は1999年に統一教会へ事実上吸収されたとされる(毎日・東京2025/3/29、2025/4/2ほか)。
また、天地正教の代表役員が2026年2月21日付で24年ぶりに交代していたことが報じられた。新たに就任した男性は、今回の代表交代と統一教会への解散命令との関連を否定している。一方で、この男性は天運教時代からの信者であり、学生時代から統一教会とも関わりがあったとされる(北海道3/6)。
