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宗教情報

宗教情報センターの研究員の研究活動の成果や副産物の一部を、研究レポートの形で公開します。
不定期に掲載されます。


2011/05/26

テレビにおけるスピリチュアル番組の問題はどうなったか?
~「金曜日のキセキ」などから~

宗教情報

藤山みどり(宗教情報センター研究員)

 1.「オーラの泉」終了後、占い番組が増加

◆ゴールデンタイムのレギュラー枠に登場した占い番組
  テレビ朝日系列で放映された「オーラの泉」(2005年4月~2009年9月)は“スピリチュアル・カウンセラー(※1)”称する江原啓之がゲストのオーラや前世などを“霊視”してアドバイスをする番組で、スピリチュアル・ブームを生んだ。この「オーラの泉」のレギュラー放送終了が決まったころ、テレビ関係者が「テレビ局は江原や細木(数子)に続く“霊能者”や“占い師”を探しています。心霊や占いは常に需要があって、手っ取り早く視聴率を稼げますからね」と語った(※2)が、実際に占い番組が増えている。
  占い師が一般人や芸能人の今後を占う番組が、フジテレビ系列では「くちこみっ! 大捜索!! 本当は教えたくない!(秘)凄い占い師日本全国で発見しましたSP」(2009年9月17日)、同第2弾(同年12月24日)、同第3弾(2010年4月5日)が放映され、TBS系列では「スパモク !! ザ・運命カウンセラー」(2010年9月16日)などが2時間特番で放映された。この後、フジテレビ系列で「くちこみっ うわさ体感バラエティ」(2010年4月~9月/毎週火曜日23:00~23:30)、「金曜日のキセキ」(2010年10月~/毎週金曜日19:57~20:54)などのレギュラー番組が現れた。
  「くちこみっ うわさ体感バラエティ」に登場した占い師10名のうち4名が同じプロダクションに所属し、1名は大手芸能プロダクションに所属している。プロダクション傘下の占い師が大勢いる状況をみると、今後も「占い番組」は続きそうだ。
◆スピリチュアル番組の問題点
 「オーラの泉」などのスピリチュアル番組は、民放連(日本民間放送連盟)が規定する次のような放送基準の観点から問題視された。
第8章    表現上の配慮
(54)占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない。現代人の良識から見て非科学的な迷信や、これに類する人相、手相、骨相、印相、家相、墓相、風水、運命・運勢鑑定、霊感、霊能等を取り上げる場合は、これを肯定的に取り扱わない。

  また、全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)は、民放連やBPO(放送倫理・番組向上機構)などに、統一教会が番組のビデオを見せて「霊界の存在」や「先祖の因縁」を説き、勧誘に利用しているとして、“霊界や死後の世界について安易かつ断定的にコメントし、占いなどを絶対視する”番組を是正する要望書を2007年2月に提出した。これを受けて、「オーラの番組」は2007年4月から、「“前世”、“守護霊”は、現在の科学で証明されたものではありません」などの断りのテロップを流すようになった。

2.「オーラの泉」に学んだ?「金曜日のキセキ」の番組づくり

 では、現在放映中の「金曜日のキセキ」はどうだろうか。「金曜日のキセキ」は驚異的な「的中率」&「透視力」&「鑑定力」を持つ、「奇跡の鑑定師」たちが、信じられない「凄すぎる」力を駆使して迷える人を救う、悩める芸能人や、一般人の人生を占い、その秘めたる問題点を見つけ、未来への道を示す「人生相談」コーナーを軸とする「人生の教訓」を学べる「心に響く」バラエティ番組であるという(※3)。(下線部分は番組サイトより引用)端的に言えば、占い師が人生相談を行うバラエティ番組であり、内容面では「オーラの泉」と類似している。しかし、制作面では「オーラの泉」批判に学んだ跡が伺える。
◆“霊視”“オーラ”を排除して負のイメージを払拭
  番組には、毎回、数名の“鑑定士(占い師)”が登場する。番組サイトには6名の鑑定士の連絡先が掲載されており、彼らのPR番組の側面もあるようだ。だが、鑑定士は入れ替わりで登場しており、個人のカラーは薄められている。江原啓之氏が登場する番組で指摘されたような「鑑定士タレントありき」の批判は当たらない。
 さらに、鑑定士という呼称にも配慮が伺える。例えば、ある鑑定士は個人のサイトでは「霊視鑑定師」と明記しているが、番組では「運命鑑定士」と紹介されている。
  鑑定方法の説明を見ても、熟慮されていることがわかる。「霊視」や「スピリチュアル」「オーラ」という言葉は封じられ、「鑑定」や「波動」などに置き換えられている。ある鑑定士は、週刊誌の連載では「前世」「オーラ」「守護霊」など「オーラの泉」で批判された言葉を多用しているが、番組内では一切使わない。「何を見て占っているんですか?」と聞かれても「わからないんですけど」とはぐらかす。同様に、個人のサイト上では「スピリチュアルカウンセリング、リーディング、オーラ鑑定、ヒーリング、前世鑑定などを組み合わせ」と説明されている鑑定士の鑑定方法が、番組内では「名前の波動からエネルギーを感じ、相談者の内面を探ることができる」などと紹介されている。
◆ 番組の最後にはテロップ
  鑑定士の口調は概ね穏やかだ。江原と時を同じくテレビに頻出していた占い師の細木数子は、その高圧的な口調に批判があったが、鑑定士の語尾は「~と思うんですね」「~ということはないですか?」などと穏やかだ。
  鑑定士は、相談者に悩みを聞かず、鑑定する。この「言わなくても悩みがわかる」、「本人しか知らないことを当てる」“的中率”と“透視力”に、相談者やスタジオで見ているゲストが驚嘆することで、鑑定士の信頼度を高め、提示する悩みの解決方法に説得力を与えている。そして、悩みへの解決の道筋が示される過程で、相談者やそれを見たスタジオのゲストが涙するなどして感動の光景が映し出される。
  番組の最後には「鑑定内容及び感想は個人的なものです 人生の一つのアドバイスとして お役立てください」とのテロップが流れる。これは番組内容を留保し、批判を避けようという狙いのようである。
◆非科学的な鑑定とトラブルにつながりかねない“霊”
  「金曜日のキセキ」は視聴率8~10%(※4)と悪くはないがゴールデンタイムとしては好調とはいいがたい。「オーラの泉」ほど話題となっていないからか、賛否のいずれの意見もメディアに掲載されることがほとんどない。また、それまでの批判に配慮した作りが成されているためか、BPOのサイトにも視聴者からの苦情などは寄せられていない(2011年5月15日現在)。
  しかし、批判をかわす配慮が要所に見受けられるものの、放送基準に照らすと問題がありそうだ。「占い、運勢判断およびこれに類するもの」を「断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱い」はしていないが、「これを肯定的に取り扱っている」と言わざるを得ないだろう。番組内では、“透視”や“波動”から感じた鑑定が的中しているという内容ばかりで、否定的な意見や懐疑の余地を残した説明はなく肯定一辺倒である。
  “前世”や“霊視”はないが、鑑定士は、ゲストや相談者の死んだ両親、祖母、曽祖父などが「隣にいる」あるいは「こう思っている」などと発言し、現代では非科学的とされる「死後の存在」を肯定しているようだ。また、あるゲストの自宅では、鑑定士が「寝室にいる“生き霊”のために運気が下がっている」と鑑定し、「祓うことはできるが、また来てしまう」と、室内に水晶を置く、盛り塩をして悪い霊が来るのを防ぐなどの対処方法を紹介した。“霊”の祟りを示すことで、全国弁連が懸念するような霊感商法などのトラブルにつながる危険はないだろうか。
  なぜ、このような番組はなくならないのだろうか。

3.テレビと視聴者の成熟した関係

◆視聴率が高い心霊・占い番組
  スピリチュアル番組や占い番組が放映され続ける理由の1つに、視聴率の高さがある。高い視聴率は、番組に対する視聴者のニーズを示すとともに、放送側が放映する理由ともなる。フジテレビは、2007年にスピリチュアル番組が問題となった後も「ほんとにあった怖い話」というドラマ主体の番組(年1~2回放送)で“霊能研究家”によるタレントの“霊視・除霊”の様子を放映している。“霊能研究家”の1人は、2010年1月には浄霊代として多額の現金をだまし取られたとして訴訟(※係争中)を起こされたが、その後の同年8月にも同番組に起用された。この番組はゴールデンタイムの2時間枠(19:00~20:54)で放映されており、12.5%(※5)の視聴率を獲得した。
  同じフジテレビで2010年4月から放映された占い師が複数登場して一般人を占う「くちこみっ うわさ体感バラエティ」(23:15~23:45)も、深夜の30分番組でありながら、視聴率は8~11%(※4)と好調だった。占い師が登場するバラエティ番組は低予算で制作しやすいことなども、このような番組が存続しやすい要因となっている。
◆バラエティ番組は治外法権?
  「オーラの泉」や「金曜日のキセキ」はバラエティというジャンルに属する。バラエティ番組は多様なニーズに応えられ、低予算で制作できることもあり、民放の地上波放送ではゴールデンタイムの主役である。近年は特にバラエティ番組が多くなっている(※6)。
  そんなバラエティ番組で、1996年に「進め!電波少年」(日本テレビ系列)がヒッチハイクでユーラシア大陸を横断するときに実際には飛行機で移動したのを隠していた「やらせ」が発覚した。これについて日本テレビの氏家誠一郎社長(当時/故人)が「道義的な責任はない」と発言し、以降、バラエティ番組では「仕込み」をしてもいいということが常識化したという(※7)。
  その後、BPOの放送倫理検証委員会は、バラエティ番組での下ネタやイジメなどに苦情が多いとして、2009年に見直しを求める意見書を提出した。これを受けて民放連はシンポジウムを2010年に開催したが、広瀬道貞・民放連会長は「バラエティ番組は情報系番組とは異なり、基本的には視聴者の皆さんに喜んでもらうのが目的なので、コンプライアンス(法令順守)がしっかりしていればよいというわけではない。こうしたことについての理解も得られたのではないか」と語った(※8)。
 BPOの意見に対しては、勉強会を開催し、検証番組を放送した放送局もあったが、番組制作者からは視聴者からの苦情に反論が続出した(※9)。これらのことから判断すると、もはや放送基準はバラエティ番組には適用外なのだろうか。
◆成熟した視聴者――「占い」は娯楽
  テレビの「やらせ」については視聴者も周知しているようだ。2007年に大学生を対象に実施された國學院大學による第9回学生宗教意識調査で、「オーラの泉」を知っていた学生の8割(※10)が、この番組を「やらせ」があると回答している。「占い」については、BPO・放送と青少年に関する委員会が2006年に小中学生を対象に行ったインタビュー調査では、情報番組の占いコーナーについてはまじめに受け取らず、娯楽として見ているという結果が出ている(※11)。放送基準に抵触するような番組が増える中で、視聴者の側も相応のリテラシーを備えているようだ。
  だが、先の調査で、「オーラの泉」での「霊の話」を信じるかどうかを聞いたところ、46.1%(※10)が信じると回答した。「やらせ」という演出を認識しつつも、「霊の話」という放送内容は信じているのだ。これは、若年層を中心とした視聴者の側に神秘的な力を信じる素地があることも関係しそうだ。同調査で「霊魂の存在」を信じると回答した学生は68.6%(※10)と多く、2010年の第10回調査でも65.5%と同水準で高い(※12)。5年ごとに行われているNHK「日本人の意識」調査(2008年)の結果をみると、「奇跡」や「あの世、来世」を信じる人が若年層を中心に増えている(※13)。
  霊感商法のトラブルが増える背景には、テレビのスピリチュアル番組の影響力がないとは言えないが、このような神秘的なものを信じる人の多さも影響しているだろう。

4.放送規制の今後は?

  実態として放送基準を骨抜きにしている放送関係者と、バラエティ番組には「やらせ」があるという認識を持ち、一定の距離を保って番組を見る視聴者――テレビ放送開始後60年近く経つ今日、両者には成熟した関係があるようだ。この現状を見ると、放送番組の規制が厳格に適用される可能性は低そうだ。
◆放送基準とは
  そもそも放送基準は放送法で規定されている。放送法は、表現の自由を擁護するとともに放送の不偏不党、真実及び自律を保障するものだ。放送法(第3条の2)では、放送事業者は「公安及び善良な風俗を害しないこと」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などを定めている。さらに放送法(第3条の3)では、放送事業者は放送番組の編集の基準(番組基準)を定め、これに従って放送番組の編集をしなければならないとしている。その番組基準は放送事業者が自主自律により定めるもので、社会環境に応じて見直される。なお、民放テレビ各局が定める番組基準は、民間放送事業者の大部分が加盟する民放連で定めた放送基準に準拠する形となっている(NHKは独自に定めた日本放送協会番組基準に依拠する)。
◆放送規制か表現の自由か
  これらの放送法や番組基準に抵触した場合、総務省の行政指導が入る。2004年以降は特に多くなっているが、表現の自由との関係で難しい側面もあるようだ。「発掘!あるある大事典Ⅱ」(関西テレビ制作/フジテレビ系列)でデータが捏造だったことが発覚した事件(2007年)を重くみた政府は、捏造番組を流した放送局への行政処分を導入する改正放送法案を国会に提出したが、民放連と民主党(当時は野党)が「表現の自由を侵害する」と反対し、この規定は削除された(※14)。
  「放送規制」と「表現の自由」という二者のせめぎ合いにおいては、放送規制の根拠が揺らぎつつある現在、放送規制のほうが不利な状況だ。
  数あるメディアの中でも、放送については「放送法」が存在することからもわかるように規制が多い。この根拠は伝統的には「有限希少な電波を排他的に使用するものであること」「社会的影響力が極めて大きなメディアであること」とされてきたが、多様なメディアが登場し、放送の影響力が相対的に低下するなかで、この根拠も揺らいできた。マスメディアのなかでも部分的に放送のみを規制し、他のメディアが規制の行き過ぎを抑制することで、メディア全体として社会に公平な情報を適用するという「部分規制論」が新たに唱えられているようだが、「放送」のみを特別視する根拠が曖昧である(※15)。
◆アメリカでは言論・表現の自由
 ちなみに、日本が何かと範としてきたアメリカでは言論・表現の自由が憲法で保障されており、それは放送局にもあてはまる。日本では放送法で「報道は事実をまげないですること」と規定されているが、アメリカでは報道の真実を担保する規定はない(※16)。このためかどうかはわからないが、テレビへの信頼度が日本では高いのに比べるとアメリカでは格段と低い(※17)。
 アメリカでの放送規制は、政府ではなく電気通信法に基づく独立機関であるFCC(連邦通信委員会)が行っている。日本よりも規制が緩やかに思われるアメリカであるが、青少年への影響を考慮して、暴力、性、低俗な発言などの表現については日本よりも厳格に規制している。だが、放送事業者がFCCの規制を言論・表現の自由を保障する憲法に違反するとして連邦裁判所に申し立てる例が多いという(※18)。
  一方で、宗教について、日本では民放連の放送基準で「信仰の強要や他宗派の中傷、科学の否定、特定教団のための寄付」などが禁止されており、布教宣伝番組は放送されないが、アメリカではテレビ伝道が認められている。また、「オーラの泉」のようなスピリチュアル番組も放映可能である。アメリカでは、1996年に放送規制が全般的に緩和されたこともあり、宗教が取り上げられる機会も多く、“霊能”番組を問題視する声も少ないようだ(※19)。

 5.今後の方向性

 放送規制の厳格化が期待できない状況では、どのような方向性が考えられるだろうか。
◆メディア・リテラシー教育
 日本の放送規制がアメリカのような方向に進むのかどうかはわからないが、規制が比較的緩やかなインターネットの動画サイトや携帯サイトなどで、さまざまな情報が氾濫している現在、情報発信側を規制するよりも情報の受け手のメディア・リテラシー(情報活用能力)を醸成することで対処しようという動きも目立っている。
 アメリカでは1990年ごろから始まった学校教育でのメディア・リテラシーへの取り組みは、日本では2000年になってからである。総務省は2000年度から放送分野におけるメディア・リテラシーを高めるための教材を作成している。また、文部科学省は出会い系サイトを通じて子供が犯罪に巻き込まれる事件が増加していることから、2004年度からメディア・リテラシー教育に取り組み、2009年度からはインターネットの危険を教える「情報モラル教育」を学習指導要領に明記した。
◆宗教についての啓蒙
  スピリチュアルや心霊・占いなどの分野に特化するならば、霊性や死後の世界などについて見解をもつ宗教について啓蒙することも有用だろう。石井研士・國學院大學教授は著書『テレビと宗教』(中公新書ラクレ)において、テレビが放映する宗教映像はステレオタイプ化されており、伝統宗教については伝統行事しか報じず、新しい宗教団体については危険性を煽り、宗教団体の公益的活動は放送されないという問題点を指摘したうえで、宗教教育の必要性を訴えている。
   テレビではスピリチュアルが多く取り上げられる一方で、宗教については放送基準が厳格に適用され、あまり登場しない。スピリチュアル番組が伝える情報とのバランスを取るうえでも、霊性や死後の世界について宗教における考え方などの情報を多面的に提供することは良いのではないだろうか。霊についてさまざまな考えを知ることで、霊感商法への抵抗力も醸成される可能性もある。その意味では、メディア・リテラシー教育が整ったという前提で、スピリチュアル番組も宗教番組もありというアメリカのような放送の在り方も検討の余地はあるかもしれない。
  宗教者などが人生観を語る「こころの時代~宗教・人生~」(NHK教育)は地上波放送では唯一ともいえる宗教番組である。「宗教を信仰している」人は高齢層ほど多い(※20)ということもあるためか、これまで視聴者層の中心は60~70代だったが、最近は40~50代も増えているという(※21)。スピリチュアル番組が人気を博している背景に、物質志向への反動や精神性への希求があるならば、宗教番組も作り方次第では視聴者の注目を集めるかもしれない。
  今年に入ってからのテレビ番組を見ていると、歴史をさかのぼって日本人と仏教の関係を明らかにする「たけしの教科書に載らない日本人の謎 仏教と怨霊と天皇~なぜホトケ様を拝むのか?~」(日本テレビ系列/2011年1月3日放送)、有名な僧侶たちが人生相談に回答する「スパモク!! お坊さんがズバリ!解決!紳助の駆け込み寺」(TBS系列/2011年3月3日、同5月12日放送)など、従来にない切り口で宗教を取り上げる番組も出てきている。ともに典型的なバラエティ番組ではあるが、笑いをとりながら前者は日本における仏教の歴史をわかりやすく説明し、後者は5人の僧侶がときには仏教用語を用いて回答するなど、宗教性を貶めるようなところは見られなかった。両番組とも仏教に関するものであったが、仏教に親しみを感じる人が増加している背景もあるのかもしれない(※20)。ちなみに「たけしの教科書に載らない日本人の謎」は視聴率12.7%(※4)で、「スパモク!!」の視聴率は不明だが、第2弾が放映されたということは好評だったのではないだろうか。
  問題の多い番組がなくならないことについては、放送関係者だけでなく視聴者側にも責任がある。視聴者が良識を持って見るべき番組を選択することが、良い番組を増やしていくことにつながるのではないだろうか。



※追記1:2011年4月からは、テレビ朝日「やじうまテレビ!」で、火・水・木の早朝5時43分ごろから「そっと後押し きょうの説法」という約3分間のコーナーが始まった。このコーナーでは、「自殺対策に取り組む僧侶の会」のメンバーの僧侶がひと言アドバイスを行っている。このコーナーも、従来にない仏教の取り上げ方をしている好例であろう。
※追記2:「金曜日のキセキ」は2011年6月17日の放送をもって終了となった。

※レポートの企画設定は執筆者個人によるものであり、内容も執筆者個人の見解です。


※ 1  江原啓之は、2011年3月31日から“スピリチュアリスト”に名称変更している。
※ 2  『日刊ゲンダイ』2009年2月19日
※ 3  フジテレビ「金曜日のキセキ」のサイトより
※ 4  F-CAST 「テレビドラマ視聴率感想」のサイトより
※ 5  株式会社ビデオリサーチのサイトより
※ 6  「テレビ番組の放映内容と放送の「多様性」~地上波放送のゴールデンタイムの内容分析調査~」 
     音好宏 日吉昭彦 莫 广瑩 『コミュニケーション研究』(上智大学コミュニケーション学会)2008年
      「テレビ番組の放映内容と放映の『多様性』(その2)
     ~地上波放送とBS放送のゴールデンタイムの内容分析調査~」 
     音好宏 日吉昭彦 中田絢子 『コミュニケーション研究』(上智大学コミュニケーション学会)2010年
※ 7  『テレビ局の裏側』中川勇樹(新潮新書)2009年
※ 8 日本民間放送連盟サイト「2010-03-18-広瀬会長会見」より。 
※ 9  『読売新聞』2010年3月16日夕
※ 10 「やらせだと思う(「殆んどやらせである」+「時にはやらせがある」)」が80.1%   
     「霊の話」を「信じる(「信じる」+「どちらかと言えば信じる」)」が46.1%
     「霊魂の存在」を「信じる(「信じる」+「どちらかと言えば信じる」)」が86.6%
※  11 「第4章――放送コードと霊能者」菅直子、『バラエティ化する宗教』石井研士編(青弓社)2010年
※ 12 『第10回学生宗教意識調査報告』井上順孝 2011年
※ 13 「日本人の意識変化の35年の軌跡(2)~第8回「日本人の意識・2008」調査から~」
           河野啓/高橋幸市/原美和子
     『放送研究と調査』(NHK出版)2009年5月
※ 14 『毎日新聞』2007年11月28日   
※ 15 「情報通信報構想と放送規制をめぐる論議」 清水直樹
     『レファレンス』(国立国会図書館調査及び立法考査局)2008年11月
※  16 「放送番組の規制のあり方」 清水直樹
     『調査と情報』(国立国会図書館) 第597号
※ 17 『世界主要国 価値観データブック』電通 電通総研 日本リサーチセンター編(同友館)2008年
     組織・制度への信頼/テレビ
     「信頼する(非常に信頼する+やや信頼する)」日本67.4% アメリカ23.4% (2005年調査)
※18  「情報時代における言論・表現の自由」白田秀彰 2002年(青空文庫)
※19  「アメリカにおけるテレビと宗教」 藤原聖子 『宗教と現代がわかる本 2010』(平凡社)2010年
※20  「“宗教的なもの”にひかれる日本人」西久美子、『放送研究と調査』(NHK出版)2009年5月
     ・60歳以上では、男女とも過半数の56%が宗教を信仰している。
     ・2008年に日本で実施されたISSP国際比較調査(宗教)では、
           仏教に親しみを感じる人が10年前の49%から65%へと増加している。
     資料13でも、2008年には「仏」を信じる人が30年ぶりに増加している。
※21  『東京新聞』2011年5月23日

参考資料
総務省「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会」報告書(2000年6月23日)
『日本経済新聞』2003年8月19日夕、2009年12月25日
『テレビと宗教』石井研士(中公新書ラクレ)2008年

(研究員 藤山みどり)