研究員レポート
2026/09/20
CIR・DB ニュースレポート 2026年6月 イスラム |
宗教情報 |
荒木亮
宗教情報データベースを用いて、検索したいワードの欄に「イスラム ムスリム」と入力、期間を2026年6月1日~2026年6月30日と設定し、「類義語を含む」にチェックを入れて検索したところ307件の記事が抽出された。さらに絞り込み条件として地域のカテゴリの「日本」にチェックを入れたところ64件の記事が該当した。前月と比較すると2026年5月では記事の総数が244件、絞り込み条件に「日本」を加えた結果が72件であったことから、国外の記事が増加し国内の記事がやや減少したと言える。〈2026年9月7日現在〉
その他、6月11日に開幕したサッカーW杯北中米大会に出場しているイラン代表が15日、米ロサンゼルスでニュージーランドとの初戦に挑んだ際、現体制が誕生した1979年のイスラム革命の前に使われていた獅子と太陽の旗が掲げられたことを報じる記事(朝日・東京 6/17)や、12日にマレーシア政府とムスリム世界連盟(MWL)の共催により第3回国際宗教指導者サミットが開催され、日本からは神道国際学会理事長の三宅善信氏や日本ムスリム協会副会長のサイード佐藤裕一氏が招待を受けて参加したことを報じる記事(中外日報 6/17、仏教タイムス 6/25)などがあった。
その他、各国の認証団体から「ハラール認証」を取得しイスラム圈への和牛輸出で販路を広げてきた徳島県東みよし町の「にし阿波ビーフ」の取り組みを紹介する記事(読売・徳島 6/5)、大手飲食チェーンであるサイゼリアのマレーシア1号店が4日に開店し、現地のイスラム教徒に向けたハラール認証の取得にも取り組む様子を紹介した記事(日経・東京 6/10)、埼玉県三郷市の人気ハラールスーパー「BongoBazar(ボンゴバザール)」の様子を取材し、訪れた客や店の店長、ハラール食品輸入会社の代表取締役も務める店のオーナーへのインタビューを記載した記事(朝日・埼玉 6/14)、長野県辰野町にある下辰野商店街の空き店舗に、各種スパイスやイスラム教の戒律に従ったハラール製品などを扱う食材店と交流施設「アーシングセンターたつの」がオープンしたことを紹介する記事(信濃毎日・長野 6/18)、茨城県産ブランド黒毛和牛「常陸牛」の昨年度輸出量が、前年度比3倍以上を記録し過去最多となったが、その要因として昨年度より常陸牛がイスラム教の戒律に沿った「ハラール」に対応するにようになったことでサウジアラビアを始めとするイスラム教圏国家にも輸出されるようになったことを挙げる記事(読売・茨城 6/19)などがあった。
✓「きんようぶんか 映画『わたしの聖なるインド』監督 ノウシーン・ハーンさんに聞く…」[週刊金曜日 1571号(6/5)]
✓「シネマ★ヒット調査隊 ドキュメンタリー編 今週のターゲット 『わたしの聖なるインド』…」[週刊文春 6月18日号]
インドで起きているイスラム教徒(ムスリム)に対する迫害を取り上げたドキュメンタリー映画「わたしの聖なるインド」が6日から公開された。
モディ政権下のインドにおいて2019年12月、ムスリムに差別的な「市民権改正法」が成立し、それに対する主にムスリム側からの批判や反対運動が展開された。本作品は、自身も女性でありムスリムであるノウシー・ハーン監督が、同改正法に対してムスリムの女性たちが非暴力で行った平和的抗議活動に焦点を当て、やがてインド全土に広がっていくこの活動の顛末をとらえたドキュメンタリー映画である。紹介した紙誌では映画「わたしの聖なるインド」に関するあらすじが、現代インドの社会政治状況に関する解説をはさみつつ紹介され(週刊文春 6月18日号)、ノウシー・ハーン監督によるインタビューでは撮影の裏側や監督自身の生い立ちなども語られている(しんぶん赤旗 6/1、週刊金曜日 1571号(6/5))。
☞ 2014年5月にインドではヒンドゥー至上主義を掲げるモディ政権が発足[→ (現代インドの)ヒンドゥー至上主義]。人口の約8割を占めるヒンドゥー教徒を優遇し、その他の宗教を信仰する者、とりわけ人口の15%程度を占めるイスラム教徒を抑圧や排斥する政策を実施してきた。モディ政権による、イスラム教徒をはじめとする宗教的マイノリティへの弾圧によってインド社会の対立や分断が深刻化していると言われる。映画を通じて、インド社会が直面する、宗教や人権に関する問題への理解を深めていきたい。
参考:映画『わたしの聖なるインド』公式WEBサイト(https://landofmydreams-film.com/)
バックナンバー ⇒ 2026年5月_イスラム(CIR・DB ニュースレポート)
◆2026年6月の国外の出来事
これまでと同様に今月も米・イスラエルとイランとの戦争の動向を伝える記事が多く、中でも21日にスイス中部ビュルゲンシュトックで戦闘終結の最終合意を目指す協議を始めたというニュース(朝日・東京 6/22ほか)などに注目が集まった。またイスラエルとレバノンとの戦闘に関する記事も多く見られたが、中でも米国のルビオ国務長官が26日、両国が和平の実現に向けた枠組みに合意したと発表したことが注目を集めた(毎日・東京 6/28ほか)。この他にも紛争に関連するニュースが多く抽出されたが、パキスタンとアフガニスタンとの間で発生した軍事衝突に関する報道(しんぶん赤旗 6/12ほか)、西アフリカ・ニジェールの首都で18日、武装集団が国際空港を襲撃し、治安要員との間で銃撃戦が発生した事件でアルカイダ系の過激派「イスラムとムスリムの支援団」(JNIM)が犯行声明を出したことを報じる記事(産経・東京 6/20)、またパレスチナ自治区ガザの保健当局が17日、昨年10月の停戦発効以降、ガザの死者が1,005人になったと発表したことを報じる記事(毎日・東京 6/19ほか)などが見られた。なお、フランス南部マルセイユで開催された世界各国の報道機関でつくる世界新聞・ニュース発行者協会(WANIIFRA)の「世界ニュースメディア大会」にて、報道の自由に寄与したジャーナリストや組織に贈られる2026年度の「自由のための金ペン賞」がパレスチナ自治区ガザで活動する写真・映像記者に授与されたことを報じる記事(東京・東京・夕 6/4)があった。その他、6月11日に開幕したサッカーW杯北中米大会に出場しているイラン代表が15日、米ロサンゼルスでニュージーランドとの初戦に挑んだ際、現体制が誕生した1979年のイスラム革命の前に使われていた獅子と太陽の旗が掲げられたことを報じる記事(朝日・東京 6/17)や、12日にマレーシア政府とムスリム世界連盟(MWL)の共催により第3回国際宗教指導者サミットが開催され、日本からは神道国際学会理事長の三宅善信氏や日本ムスリム協会副会長のサイード佐藤裕一氏が招待を受けて参加したことを報じる記事(中外日報 6/17、仏教タイムス 6/25)などがあった。
◆2026年6月の国内の出来事
埼玉県川越市の建設禁止地区に無許可でイスラム教のモスクが建ち、人々が礼拝に訪れていることについて森田初恵市長が1日、定例記者会見で「今の状況を容認することはできないという方針のもとで(職員に)動いてもらっている。できるだけ早期に解決できるよう努める」と述べたことに関する記事(朝日・埼玉 6/2)、愛知県西尾市の河川敷緑地公園で5月27日、イスラム教の大祭である犠牲祭を実施したことをめぐって寄せられた「政教分離の原則に抵触するのではないか」等の意見と、それに対する中村健市長による市としての「対応は適切だった」といった話、また名城大法学部の近藤敦教授による「(公園は)他の国民や団体も同じ条件で使えるため、まず(政教分離を規定した憲法)20条には抵触しない」という指摘を紹介した記事(中日・名古屋 6/13)、千葉県市川市にある行徳モスクが行った犠牲祭における近隣の公園の使用不許可をめぐって、市の判断はイスラモフォビア(イスラム嫌悪)を助長したのではないかという識者の指摘を紹介した記事(しんぶん赤旗 6/14)[→ 市川・行徳モスクの犠牲祭と公園の使用不許可に関しては「5月号◆記事のピックアップとコメント」を参照]、富山県の元工業高校長である安吉克興氏が、イスラムへの偏見を払拭するきっかけとなることを期待し、フィクションを交えつつイスラム国家の成り立ちをまとめた『イスラームの歴史物語』(すがの印刷)を自費出版したことを紹介する記事(北日本・富山 6/18)、9日に東京大学にてマレーシアのアンワル首相がAI(人工知能)と人間らしさをテーマに学生や研究者ら約500人に特別講義をし、イスラム教が重んじるイフサン(思いやり)やラフマ(慈悲の心)は「どんな機械でも代替はできない」と語ったことなどを紹介する記事(朝日・東京 6/22)が見られた。その他、各国の認証団体から「ハラール認証」を取得しイスラム圈への和牛輸出で販路を広げてきた徳島県東みよし町の「にし阿波ビーフ」の取り組みを紹介する記事(読売・徳島 6/5)、大手飲食チェーンであるサイゼリアのマレーシア1号店が4日に開店し、現地のイスラム教徒に向けたハラール認証の取得にも取り組む様子を紹介した記事(日経・東京 6/10)、埼玉県三郷市の人気ハラールスーパー「BongoBazar(ボンゴバザール)」の様子を取材し、訪れた客や店の店長、ハラール食品輸入会社の代表取締役も務める店のオーナーへのインタビューを記載した記事(朝日・埼玉 6/14)、長野県辰野町にある下辰野商店街の空き店舗に、各種スパイスやイスラム教の戒律に従ったハラール製品などを扱う食材店と交流施設「アーシングセンターたつの」がオープンしたことを紹介する記事(信濃毎日・長野 6/18)、茨城県産ブランド黒毛和牛「常陸牛」の昨年度輸出量が、前年度比3倍以上を記録し過去最多となったが、その要因として昨年度より常陸牛がイスラム教の戒律に沿った「ハラール」に対応するにようになったことでサウジアラビアを始めとするイスラム教圏国家にも輸出されるようになったことを挙げる記事(読売・茨城 6/19)などがあった。
◆記事のピックアップとコメント
✓「ドキュメンタリー映画 「わたしの聖なるインド」監督 ノウシーン・ハーンさんに聞く…」[しんぶん赤旗 6/1]✓「きんようぶんか 映画『わたしの聖なるインド』監督 ノウシーン・ハーンさんに聞く…」[週刊金曜日 1571号(6/5)]
✓「シネマ★ヒット調査隊 ドキュメンタリー編 今週のターゲット 『わたしの聖なるインド』…」[週刊文春 6月18日号]
インドで起きているイスラム教徒(ムスリム)に対する迫害を取り上げたドキュメンタリー映画「わたしの聖なるインド」が6日から公開された。
モディ政権下のインドにおいて2019年12月、ムスリムに差別的な「市民権改正法」が成立し、それに対する主にムスリム側からの批判や反対運動が展開された。本作品は、自身も女性でありムスリムであるノウシー・ハーン監督が、同改正法に対してムスリムの女性たちが非暴力で行った平和的抗議活動に焦点を当て、やがてインド全土に広がっていくこの活動の顛末をとらえたドキュメンタリー映画である。紹介した紙誌では映画「わたしの聖なるインド」に関するあらすじが、現代インドの社会政治状況に関する解説をはさみつつ紹介され(週刊文春 6月18日号)、ノウシー・ハーン監督によるインタビューでは撮影の裏側や監督自身の生い立ちなども語られている(しんぶん赤旗 6/1、週刊金曜日 1571号(6/5))。
☞ 2014年5月にインドではヒンドゥー至上主義を掲げるモディ政権が発足[→ (現代インドの)ヒンドゥー至上主義]。人口の約8割を占めるヒンドゥー教徒を優遇し、その他の宗教を信仰する者、とりわけ人口の15%程度を占めるイスラム教徒を抑圧や排斥する政策を実施してきた。モディ政権による、イスラム教徒をはじめとする宗教的マイノリティへの弾圧によってインド社会の対立や分断が深刻化していると言われる。映画を通じて、インド社会が直面する、宗教や人権に関する問題への理解を深めていきたい。
参考:映画『わたしの聖なるインド』公式WEBサイト(https://landofmydreams-film.com/)
◆+α 用語ミニ解説
(現代インドの)ヒンドゥー至上主義:インド総人口の約8割を占めるヒンドゥー教徒の優先を主張する考え方。現在インドの政権の座につくモディ首相は、極右的なヒンドゥー教団体や民族義勇団(ヒンドゥー至上主義を掲げて社会奉仕などを行うインドの団体)を有力な支持母体とするインド人民党(BJP)を率いて2014年の総選挙に勝利した。以後、モディ政権は支持基盤であるヒンドゥー教徒を重視した政策を打ち出していると言われており、近年ではインド北部アヨディヤにて、もともとイスラーム教のモスクがあった場所にヒンドゥー教寺院を立てる事業を後押しする言動があり、ムスリムからの大きな反発を招くという出来事があった(毎日・東京 2024/1/23ほか)。モディ政権によるヒンドゥー至上主義がインドで推し進められることで、ムスリムをはじめとした宗教的マイノリティへの抑圧が危惧されている。バックナンバー ⇒ 2026年5月_イスラム(CIR・DB ニュースレポート)
