文字サイズ: 標準

研究の三本柱

3 仏教研究

現在、私たちが触れることのできる仏教は、ブッダ亡き後、2500年もの長きに渡り、数え切れない人々によって守られ、伝えられてきた努力の成果です。しかし、時代や地域に応じて変化を遂げる中で、多様な形態が派生し、現代では、ひとくくりに仏教を捉えることは困難になっています。たとえば私たちは、禅寺と密教寺院、あるいは日本の仏教と、中国、チベット、東南アジアなど、諸外国の仏教との違いに驚かされます。そういった印象の違いから、時には誤解が生じることもあります。
そこで、宗教情報センターでは、国内外の研究者と協力しながら、様々な仏教資料をもとに、仏教の変遷過程を検証し、学術的により正確な仏教理解の追求を目指します。また、その成果を一般の方々にもわかりやすい形で発信していきます。

 

現在、主に次の2つのプロジェクトを進めています。


1)大乗仏教の起源の解明

釈尊入滅後、およそ5、6世紀を経て大乗仏教は登場しました。修行者は出家在家の区別なく、自らを菩薩と称し、正覚を目指しました。後に登場する密教も、広義にはこの大乗仏教に含まれます。鎌倉時代までに日本に伝わった、私たちに馴染みの深い仏教は、全て大乗仏教です。その起源解明の研究は、近年大きな進歩を遂げていますが、しかしながら、未だに定説をみません。そこで、当センターでは、様々な大乗仏典を取り上げ、その解明の一助となるべく研究を進めています。現在は、大乗仏教最初期に作られた経典『阿閦仏国経』及び、大乗仏教成熟期の経典『大般涅槃経』に焦点を当てています。

2)大般涅槃経と密教の接点

紀元後6世紀頃から、師資相承や儀礼を重んじる秘密仏教(密教)と呼ばれる新しい仏教が登場します。大乗仏教同様に、未だにその起源は解明されていません。そこで、当センターでは、大乗仏教成熟期に成立した『大般涅槃経』に焦点を当て、研究を進めています。『大般涅槃経』は、自らを「秘密深奥蔵門」と称し、また、密教で重要な「阿閦仏」を護法の象徴として描くなど、密教の萌芽を感じさせます。『大般涅槃経』チベット語訳(漢訳南本からの重訳)のテキスト校訂、及び現代語訳を準備中です。