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探検バクモン「禅 ZEN 大本山總持寺へ」

2018/10/31 (Wed) 20:15~20:43 NHK総合
参考
番組公式
 ストレス社会と呼ばれる昨今、心の安定を求める人に大人気である坐禅。その魅力を探るべく、爆笑問題の2人が約700年間禅の教えを説いてきた曹洞宗大本山總持寺に潜入し、禅の世界を体験する。
 總持寺の柴田康裕さん案内のもと、まずは普段は入れない仏殿の中へ。中に安置されているお釈迦様は坐禅を組んでいる。これは、約2500年前に悟りを開いたときの姿勢だ。曹洞宗で座禅が重要視されているのはそのためである。中国の僧侶・達磨大師によってその教えが築かれたが、その後座るだけでなく、生活そのものが禅の修行であると教えが展開し、日本にも伝わった。
 總持寺ではおよそ25人の僧侶と、雲水と呼ばれる修行僧約100人がともに暮らし修行している。ほぼ毎日同じスケジュールで過ごし、そのひとつひとつに厳格な作法がある。午前4時。振鈴が鳴ると、起床の合図。僧侶たちの1日は暁天坐禅からはじまる。日中は法要や檀家さんへの対応など、お寺に関わる仕事・作務を行う。中でも掃除は作務の中心。約164mもある百間廊下へ行くと、修行僧たちが雑巾がけをしていた。掃除はその場所だけでなく、心の塵をも取り払ってくれる。「目の前のことに集中し、作法に沿ってただ取り組む。それが、迷いや不安のない揺るぎない心を育てる」のだそうだ。
 次に訪れたのは、修行僧が坐禅や食事をする大僧堂。食事は全て肉や魚などを使わない精進料理だ。僧侶にとって食事も修行の場。私語は厳禁なので、ごはんをよそってもらうときは、手で合図をする。食事中もたくさんの作法があるが、こうした作法に集中し、行いを調えることが心を調えていくことにつながる。最後にお米を7粒ほど残すのもまた作法のひとつ。これは出生(すいさん)という儀式で、残したお米をあらゆる生き物の供養のため、鳥などに施す。これらの作法は食物に対する感謝や敬意が表れたかたちなのだ。
 続いて向かったのは坐禅をする衆寮。かつて修行僧はここで坐禅や食事をしており、現在は一般向けの座禅会へ開放している。ここで修行の中でもっとも大事な坐禅を教わる。まず手を合わせておじぎをし、自分と相手の心を一つにする。坐蒲の上に左右の足を組んで座り、手は法界定印で組む。目は閉じず、体を左右にゆすり、鼻とおへそ、耳と肩が一直線になるよう体をたてていく。雑念が浮かんできても考えを追わないように、常に神経は左手の掌(たなごころ)の中で集中させることが大切だという。そして、坐禅といえば警策という棒だ。これで背中を打たれるイメージを持たれがちだが、あくまでも眠気を覚ますものであって、決して暴力的なものではないという。最後に柴田さんは、「坐禅の姿そのものが悟り。誰に何と言われても、私は坐禅で生きますという覚悟を決めること」と語った。
 俗世間と隔離された清浄な空間で、どんなことが来てもうろたえず、慌てず、決して揺るがない心を養う。そんな気概を感じた。不安定な世の中だからこそ、人々は2500年揺るがず続いてきた坐禅に心の拠り所を求めるのかもしれない。