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- 第二十七回 アルジェリアに住む「イスラムの清教徒」
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テレビ番組ガイド・レビュー
日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。
アルジェリアの主な宗教はイスラム教スンニ派です。しかし、南部ガルダイアを中心とする世界遺産「ムザブの谷」に住む少数民族ベルベル人のムザブ族は、イスラム教ハワリージュ派の流れを汲むイバード派を信仰しています。ハワリージュとは「離脱した人々」の意味です。この呼び名は、イスラム教預言者ムハンマドの従弟で第四代カリフ(最高指導者)のアリーから離れていったことに由来します。アリーが彼に反旗を翻したムアーウィヤと和平を結び、いずれがカリフにふさわしいかを人間による判定に委ねたことに不満をもち、彼を不信仰者(カーフイル)として暗殺した分派です。
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▲1350年に築かれた最も新しい街ベニ・イスゲン。モスクを中心に発展した他の街と異なり、市場から街が広がったため、見張り塔(左手の四角い建物)が最も高い位置にある。右手の尖塔がモスクのミナレット。 |
▲1012年に築かれた最古の街エル・アーティフの城塞の南側に15世紀に建てられたシディ・イブラヒム廟(中央の白い建物)。ル・コルビュジェ作「ロンシャンの礼拝堂」に影響を与えた。 |
▲シディ・イブラヒム廟の男性用礼拝室。壁の小さな窪みは、コーランの置き場。 |
▲シディ・イブラヒム廟のミンバル(説教壇)。壁の穴を通して壁を隔てた女性用礼拝室に説教が伝わる。女性用礼拝室は半地下があり2層になっている。 |
ここに住むムザブ族は、コーランの厳密な解釈から導き出された独自の戒律とみなされる2つの原則――すべての信者は平等で、あらゆる行為は例外を除いて善か悪かである――に基づいて暮らしています。戒律に忠実に暮らしているため「イスラムの清教徒」とも呼ばれています。
労働は宗教的な義務で、怠惰は最も責められるべき悪の一つとみなされています。宗教的側面と現実的側面が合致しており、サハラ交易で富んだ住民が多いようですが、平等主義の原則から貧富の別なく同じような四方形の建物に住み、質素な生活を営んでいます。モスクも、日干しレンガに白い漆喰が塗られた簡素な建物です。これは、「ムザブの谷」に定住する前、華やかな暮らしをしていたために襲撃され、集団移住せざるを得なかった苦い経験から学んだ知恵でもあります。
5つの街の中心となるガルダイア以外の街には、異教徒はガイドなしでは入ることができず、肌を露出した服装や喫煙、許可無く住民を撮影することは許されません。
▲“「ムザブの谷」の首都”や“オアシスの真珠”と呼ばれるガルダイアの街は1057年に築かれた。このガルダイアの広場でのみ人物撮影が許されている。この地区ではムザブ族とアラブ人の抗争や暴動が頻発しているため、治安部隊が点在して警戒している。 |
▲11世紀初頭にできた街メリカの中心部にあるモスク。「ムザブの谷」のモスクは、先端が王冠状のミナレットが特徴的。 |
既婚女性は外出時には頭から白い布を被り、片目だけを出して歩きます。これは夫以外の男性に顔を見せてはいけないからです。万が一、夫が先に亡くなった場合は、町の人々が暮らしを助けてくれます。助け合いの精神は、貧しい人たちにナツメヤシの実を分け与える伝統にも垣間見られます。町には人々を見張る審判官がいて、罪を犯した場合は罰として犯罪者同士で暮らさなくてはなりません。
「ムザブの谷」には、1882年にフランスの支配下になってから水道と電気が引かれ、灌漑システムがいっそう発展しました。さらに1962年にアルジェリアが独立してからは、近代化の波を受けて生活環境は大きく変わりました。高低差がある狭い路地では荷物の運搬にはロバが重宝されていましたが、現在ではロバを見かけることは少なくなり、オートバイが住民の足となっています。家々の屋上には衛星放送受信用のパラボラアンテナが立ち並び、景観にも変化がみられます。けれども、千年前から受け継がれた人々の暮らしを貫く宗教的な精神に、変わりはありません。
(文責 藤山みどり)
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- ●参考資料:
- 私市正年『北アフリカ・イスラーム主義運動の歴史』白水社2004年
- 下中弘編『イスラム事典』平凡社1982年
- 後藤明『ビジュアル版 イスラーム歴史物語』講談社2001年
- 私市正年編著『アルジェリアを知るための62章』明石書店2009年
- Djilali SARI “LE M’ZAB” Editions ANEP ,2014
- ユネスコ公式サイト http://whc.unesco.co.org/en/list/188
- アルジェリア文化省「ムザブの谷」保護宣伝局公式サイトhttp://www.opvm.dz/
※1: カリフについては、高尾賢一郎先生による寄稿コラム「『宗教』的観点から見た『イスラーム国』とは?」も参照のこと。※2: ルスタム王朝は777~909年などの説もある。








