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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

深層NEWS▽自殺防止対策の最前線。追い込まれた死を防ぐ…「生きる支援」とは。

2014/06/30 (Mon) 22:00~23:00 BS日テレ
キーワード
自殺、連鎖、踏み込んだ応対、連携、本人の気持ち
参考
番組公式

自殺者の実態と原因

 NPO法人 ライフリンク代表 清水康之氏をゲストに、自殺の現状とその取り組みについて語ってもらう形で、番組は進められる。1998年に自殺は急増、以降三万人を超えてきた。近年は対策の効果もあり、ここ四年間なだらかに減少しつつある。しかし、諸外国と比べてもその自殺率は依然として高く、若年層20~30代の死因で自殺が一番なのは日本ぐらいのもので、毎年新たに3万人近くが自ら命を絶っているのだから、いまだ深刻な事態である。
 若年層の自殺の原因は、景気の問題だけでなく、若者にとって生きごたえのある社会、生き心地のよい社会だとは思ってもらえなくなっていると思われる。若者たちの場合、死にたいというよりも、生きるのをやめたい、この人生を今の自分が生きているのがつらいというのが少なくない。これはなかなか受け入れがたく、難しい問題ではあるが、当事者から話を聞く、様々な指標と合わせて分析するなど、実態を正確にとらえ、この事実と冷静に向き合う必要がある。
 さらに、調査で自殺の背景には70近くの要因があるとわかった。自殺で亡くなった方は、平均すると一人四つほど抱えてなくなっており、問題が次の問題に連鎖していって心理的あるいは金銭的に追い込まれていくということだ。今までのような、それぞれの問題を別個として対応ではなく、プロセスで起きている自殺の因果関係を把握しリスクを封じ込めなくてはいけない。そのプロセスが最近より明らかになってきたのだ。

自治体による自殺対策の取り組み

 足立区では、縦割り式の窓口相談の形態を変えた「生きる支援」を取り入れ、自殺防止の成果を上げている。自分の役割としての窓口相談に終しまいにせず、区役所職員が区民の抱える隠れた問題を察知したとき、それに応じて適切な関係機関につなぐようにするなど、一歩踏み込んだ応対で、根本原因の解決に努めているのだ。国が、法律や財源を確保するなどして、各自治体の取り組みを支援する一方で、各自治体は、現場として問題連鎖プロセスへ効果的に対応していくことが今求められる。市民も自分の所属する自治体がどのような取り組みをしているか把握・監視する必要があるだろう。
 近年、自殺のデータが、市区町村単位で毎月更新、公開され、地域別での自殺の傾向がわかるようになった。一部自治体ではいち早く取り入れられ、よりピンポイントでの対策に利用されている。

 今後として

 今までのような後手の対策ではなく、先見した中長期的な対策が必要で、現在、少しずつではあるが地区ごとの連携の強化、自殺対策の現場、研究、政策の連動はかるよう動き出している。遺族向けの支援も必要だろう。しかし、自殺を考えている人への対応は、あまりマニュアル化しすぎても危険だ。まずはその人の気持ちを受け止めること。決してこちらの気持ちを押し付けるのではなくて、本人がどう思っているのかを考えることが大事である。