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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

現代社会×宗教「表現する宗教者たち」

2014/02/23 (Sun) 14:00~14:55 BSフジ
キーワード
現代の宗教、変化、歩み寄り、救済、別の価値観
参考
番組公式
 刻々と変容していく現代社会において、変わり始めた宗教界。伝統的な宗教者たちの間で、苦境にいる人々にどう寄り添うかという模索が始まっている。こうした新しい流れを取り上げ、作家である平野啓一郎氏と宗教学者・僧侶である釈徹宗氏と共に、信仰を持たない人間と持つ人間の双方の視点から、現代の宗教を考える。

 ―宗教の形態の変化―

 地域コミュニティや社会的な儀礼の形態変化により、現代の宗教は形を変えることを求められた。ラジオやウェブ、本など、今までにない多様な媒体を用いて救いを提供するようになり、時には他宗教・宗派と共に、人々に寄り添う活動をしている。宗教者たちは、互いに主体的な真実をもちながらも、お互いを受け入れられるように、他の宗教との歩み寄りを考える時期になってきたと、釈氏は語る。東日本大震災などの有事により、人々が心のどこかで求めている宗教的な何かに加え、こうした潮流はより勢いを増した。

 ―宗教者の存在と無宗教者の救済の形― 

 大震災後、行政では対応しきれないような、精神的外傷を負った人々のケアに当たる宗教者の存在が、今求められている。臨床宗教師―宗教や宗派を超えた中立的な立場で心のケアを実践する、新たな宗教の専門職―が生まれるなど、合理的な物事が重視されている社会全体のなかで、苦悩する人々にどう寄り添い救えるか、宗教者たちの模索は続く。最終的に信仰にいたることがなくても、信仰の際のあたりで、あるいは人生のどこかで、何かしらの救済を得ている人間もいるように思うと、平野氏は語る。

 ―現代の宗教者に望まれるもの―

 小説家として、宗教では救われないけれども、文学体験を通して最終的には魂の救済があるというのが自分のイメージだという平野氏。社会のニーズに沿ったとしても、信仰する理由、その世界観の中で生きているからこそ救済されるといった、教義に基づく宗教独自のアイデンティティは保たれるべきだと語る。
 社会に危険視されるからといって、大多数の人が信じる通念と寄り添いすぎると宗教の意味を失う。社会とは別の価値観があるからこそ、社会で救われない人々も救われうる。現代の多様な媒体による宗教伝道も、宗教者たちの苦悩の表現であろうとして、二人の対談は締めくくられた。