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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

オイコノミア「親子で幸せな“終活”考えよう」(前編)

2014/02/18 (Tue) 23:30~23:55 NHKEテレ
キーワード
終活、お墓、葬儀
参考
番組公式
 この番組は、NHK Eテレで放送された経済番組である。「『経済学的な知の体力』を身につけて、時代の荒波を乗り越えていこう!という、これからの日本を担ってゆく若者たちへメッセージを送る」ことが番組の意図するところである(番組HPより)。
 今回はいずれ訪れる親との別れに備えて、経済学の視点から人生のエンディングや就活を考えた。本レビューでは、現代社会における「お墓」や「葬儀」のあり方を番組内容にそって紹介してゆく。
 
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 いま都市部では駅から歩いていける立地の納骨堂が増えている。仏壇・墓石販売を行っている松本佳奈さんは、「最近はこういった室内のお墓もかなり需要が増えている」と話す。
 その理由として、通常のお墓よりも「安価」であることが挙げられる。都市部でお墓をたてる場合には、「最低でも500万円ほど」は必要である。しかし、室内の納骨堂であれば、「なんら外のお墓とは変わらないかたちであるにもかかわらず150万円ほど」で購入できるのである。
 さらに、掃除が不要であることに加え、参拝カードをかざすと自動で遺骨が墓石にセットされる仕組みも助けとなり、利用者が買い物や仕事帰りに「手軽に」お墓参りできるのもその利点である。
 大竹文雄氏(大阪大学特別教授・社会経済研究所教授)は、このようなお墓のスタイルの変化には、「大都市への人口の集中や少子化で代々の墓を継ぐ人がいなくなったこと」が影響していると指摘する。こうした影響を受けて、納骨堂のような「『利便性』と『墓石がほしい』というニーズの両方を兼ね備えた」新しいタイプのお墓がでてくるのである。
 
 また、番組では「ひとはなぜお墓をたてるのか」という問題を経済学の視点から考えた。わたしたちは墓地に行くとたくさんのお墓をみかける。そして、故人のことを直接は知らないが、立派なお墓をみると「その故人はお金持ちだったのかな、遺族の人から大切にされていた人なのかな」などと推測することができる。
 経済学ではこのような効果を「シグナル効果」と呼ぶ。シグナル効果とは「あるものの情報が少ないとき、別の視点で得た情報でその本質を探ろうとすること」である。お墓は、その大きさや形によって、故人が生前どのような人物であったのかを伝える「一種のシグナル」として機能しているのである。
 しかし、ネット時代の到来とともに、「人々はネット上などにでも容易に半永久的な自らのシグナルを残すこと」ができるようになった。よって、「生きていたときに自分がどんな人物であったのかを示すシグナルとして、お墓を使う必要がだんだんとなくなってきた」のである。
 このように、その大きさや形によって、故人の生前の偉功をあらわすシグナルとして機能していた「お墓」が、その他のシグナルによって代理されるようになったことも、室内納骨堂のような新しいお墓への需要が増している理由のひとつであろう。
 
 さらに、お墓だけではなく、「葬儀」にも変化が訪れているという。その変化の原因は「少子高齢化」である。
 ここ50年間で高齢化がすすみ、75歳以降で亡くなる人の数が増加した。よって、「長くなった老後が生活費を押し上げ、その影響がお葬式にもあらわれている」のである。すなわち、「お葬式までお金をとっておく」ということがだんだんと難しくなってきているのである。よって、「最期にお金をかけてあげたいが、生活費で消耗しているためにそれができない」という問題に頭を抱える人が多いのが現状である。
 また、少子化の影響によって、例えば、一人っ子どうしが結婚した場合に、2人で両親(りょうおや)を送らなければならないというケースが増えてきている。よって、以前のように兄弟が多くいた時代に比べて、葬儀費用がなかなか集まらず、ひとりあたりの負担額が増えてしまうという問題も生じている。
 親世代の「老後の生活費や介護費用のかさみ」に加えて、子世代の「少子化」による影響によって、人生をしめくくる葬儀のあり方にも変化が起きているのである。
 
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 お墓や葬儀のスタイルが変化してゆく現代において、「自分のお墓をどうしたいのか」「自分の葬儀をどうしたいのか」、また、「親にはどうしてあげたいのか」など、事前に人生のエンディングを考え、よく話し合うことが、「自分らしい最期」を迎えるためにも、より重要となってくるであろう。
 
 
○参照URL
番組HP「オイコノミア」
http://www4.nhk.or.jp/oikonomia/