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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

猫のしっぽ カエルの手 京都大原 ベニシアの手づくり暮らし「熊野古道・高野山」

2014/02/09 (Sun) 18:00~18:30 NHKEテレ
キーワード
高野山、熊野古道、巡礼、祈り
参考
番組公式
 本番組は、ハーブ研究家や英会話学校の経営で知られているイギリス人女性、ベニシ
ア・スタンリー・スミスさんが日本の自然の中を散策しながらその土地の文化や宗教に触
れ、最後に彼女が感じたことをメッセージにしてまとめるというものである。
元々イギリスの貴族の家系にいたベニシアさんは、その暮らしに疑問を感じ19歳でイン
ドを訪れた。そこで仏教の奥深さを感じ、祈ることの大切さを知ったという。1971年に九
州に訪れた後、東京・岡山の生活を経て1978年から京都で英会話教室の経営を始めた。そ
の後1996年に京都の大原に移住したのがきっかけで、メディアなどに取り上げられるよう
になった。

 今回ベニシアさんが訪れたのは、熊野古道から高野山までの巡礼の道。その道中で彼女は、出会った人々との温かい交流を重ねていく。神様に捧げる榊を摘む女性や、農業を営
みながら自給自足の生活を送るお婆さん、「天空の里」と呼ばれる集落で林業を営むお爺
さんなど、厳しい環境の中で生活するたくましい人々だ。不便な土地なのにも関わらず、
彼らは見事に自然と共存していた。またベニシアさんは原生植物に囲まれた道を歩きなが
ら、悠久の時を感じていた。古来より、人々は山地で祈りを捧げてきた。彼らは山や森を
信仰し、身分や立場を気にせずその平等な恵みに感謝してきたのだ。
  熊野古道を歩くと、ユニークなものを発見することができる。旅の安全への願いを込め
たお地蔵様や、牛に乗った天皇の像をかたどった「牛馬童子像」、聖域への入り口と呼ば
れる「発心門」などだ。お地蔵様に藁がかぶせてあったり、その様子は巡礼道を歩くベニ
シアさんの心を温かくしてくれた。

  旅の目的地である高野山で、ベニシアさんは無量光院(900年以上の歴史を持つ真言宗
のお寺)へと向かう。このお寺では、毎日行われている勤行に国籍や宗教を問わず誰もが
参加することができる。以前ベニシアさんは無量光院の住職、土生川正道さんと初めて会
った時、「心の友」のように感じたという。壬生川さんは、60年近く住職を続けている人
物で、キリストやイスラム教との交流も積極的に行っている。久しぶりに再会した2人は
対話を通して、西洋と東洋の宗教間の違いはあっても自由があって良いのだという考えを
共有した。「人は辛いことを経験して助け合うようになる。」自己本位な考えに陥りやす
い現代においても、他を思うことが重要だと壬生川住職は感じていた。
  この旅の中でベニシアさんは、大自然の中を歩きながらそれと共にたくましく生きる人
々と出会い、巡礼道の持つ神秘に触れることで生きる喜びを感じられたようだ。彼女は、
祈りによって自然にエネルギーが宿ると考えている。我々は必要なものの全てを地球から
平等に授かっている。だからこそ、残された自然環境を次の世代に残さなければならな
い。