文字サイズ: 標準

宗教情報PickUp

テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編 第8回「博物館のほとけさま」

2013/05/21 (Tue) 21:30~21:55 NHK Eテレ
キーワード
博物館、仏像
参考
番組公式
 この番組では、東京藝術大学大学院教授・籔内佐斗司氏を講師にむかえて、日本各地の仏像を巡っていく。シリーズ全9回中、第8回目の今回は、全国の博物館に展示されている仏像を拝観しながら仏像の歴史をひもといた。
 はじめに訪れたのは東京国立博物館の東洋館である。ここには仏像がはじめて制作されたといわれているガンダーラ地方や、初期に仏像制作の中心地となった北インドの街・マトゥラーでつくられた仏像が展示されている。
 次に同じ東京国立博物館の中にある法隆寺宝物館を訪ねた。仏教が日本に伝来したのは飛鳥時代のことであるが、法隆寺宝物館ではその当時の仏像を拝観することができる。
 館内には高さ20~30cmほどの小さな仏像が展示されている。仏像が小さいのは、仏教がまだ国家宗教ではなく、それぞれの豪族が新しい宗教である仏教を個別に信仰していたからであるという。飛鳥時代の仏像の多くは、銅に金メッキを施した「金銅仏」である。
 その後、聖徳太子によって仏教は国家宗教にまで押し上げられた。聖徳太子が建立した奈良の法隆寺には、飛鳥時代を代表する仏像「釈迦三尊像」(国宝)が祀られている。この仏像は、朝鮮から来た渡来人の子孫である止利仏師によって制作された。かすかな微笑をたたえた口元がこの時代の特徴である。
 次に奈良の東大寺ミュージアムを訪ねた。ここでは奈良時代・天平文化の仏像を拝観することができる。生まれたばかりの釈迦の姿をあらわした「誕生釈迦仏立像」(国宝)は、幼児の柔らかな肉感が見事に表現された金銅仏である。
 また、この時代に多く見られるのが「塑像」という粘土でつくられた像である。「日光・月光菩薩立像」(国宝)は、繊細な質感の衣や、静謐な表情が粘土によってリアルに形作られている。
 さらに、仏像がより人間的な姿で表現されるようになったのもこの時代のことである。中国・唐との交流が活発になったため様々な種類の仏像が伝えられ、如来や菩薩の脇に控える天武の仏像も盛んに作られるようになった。
 そして、平安・鎌倉時代に仏像は最盛期を迎えることとなる。奈良国立博物館のなら仏像館には、さまざまなお寺から管理を任された貴重な仏像が展示されている。
 平安時代は日本という土地に合った素材、また、日本的な表現が模索された時代であった。初期の頃には木の一木造が盛んに行われ、「日本の仏像は木彫」というのが確立したのもこの時代のことである。
 また、大仏師・定朝は「定朝様」と呼ばれる形式を確立させた。丸みを帯び、どっしりとした姿や、複数の木材を組み合わせてつくる寄木造がその特徴である。平安時代後期にはこうした日本独自の仏像が主流となった。
 最後に鎌倉時代の仏像を拝観した。鎌倉時代になると写実的な造形が追及されていった。そして、その中心にいたのが運慶や快慶など「慶派」とよばれる仏師たちである。目に水晶をはめこむ「玉眼」という表現方法もこの時代に広まった。
 番組では金剛寺(大阪)の「降三世明王坐像」(重要文化財)が紹介されていた。仏像が鎮座するのは木材を積み重ねた「瑟瑟座(しつしつざ)」と呼ばれる台座であり、これは岩を象徴している。この仏像は快慶の弟子である行快によって制作が手がけられた。均整のとれた姿や明快な表情からは慶派の特徴がみてとれる。
 「仏像はお寺で拝観するもの」というイメージが強いかもしれない。が、博物館にも素晴らしい仏像はたくさんある。また、照明や展示方法によって、信仰の現場とは少し違った角度から仏像を拝観することができる、という籔内氏のコメントとともに番組は締めくくられる。
 
 
〇参考URL
・東京国立博物館
http://www.tnm.jp/
・東大寺ミュージアム
http://culturecenter.todaiji.or.jp/museum/index.html
・奈良国立博物館
http://www.narahaku.go.jp/index.html