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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編 第3回「密教のほとけさま」

2013/04/16 (Tue) 21:30~21:55 NHKEテレ
キーワード
密教、東密、台密、空海、最澄、立体曼荼羅
参考
番組公式
 この番組では、東京藝術大学大学院教授・籔内佐斗司氏を講師にむかえて、日本各地の仏像を巡っていく。シリーズ全9回中、第3回目の今回は再び京都を舞台に「密教の仏様」に迫る。平安時代、京都では災害や疫病、貴族の死が度重なり、人々はそれらを悪霊や怨霊によるものとして恐れた。そこで密教を取り入れ、導師の加持祈祷によって禍(わざわい)を退けようとしたのだ。
 密教をいち早く日本にもたらしたのは空海と最澄であった。空海は仏教の一派である密教を唐で学び、帰国した後に真言宗をひらいて東寺を密教の根本道場とした。空海が開いた真言宗の密教は東寺の名前から「東密」とも呼ばれている。それに対して、「台密」とされているのが最澄のひらいた天台宗の密教である。天台宗の総本山は比叡山延暦寺である。最澄も唐で学び、密教や法華経、禅を日本に伝えた。
 はじめに紹介されたのは、東寺の「立体曼荼羅」である。講堂の中央に、密教では最も重要な仏とされている大日如来を中心に21体の仏像が並ぶ。空海は「密教は深遠なもので文章だけではあらわすことが難しい」と残しており、経典では伝えきれない密教の教えをたくさんの仏像によって表現しようとしたのだ。
 立体曼荼羅の仏像は、その種類ごとに体系的に安置されている。中央のグループは5体の如来であり、「五智如来」と呼ばれ、密教で説かれる5つの知恵をあらわしている。向かって右側は「五菩薩」と呼ばれる菩薩のグループで、左側は「五大明王」と呼ばれる明王のグループである。この五大明王の中心に祭られているのが、国宝「不動明王坐像」である。さらに、梵天や帝釈天など6体の天部が、守護神としてこれらの仏を守っている。菩薩も明王も大日如来が変化(へんげ)したものと考えられており、立体曼荼羅は密教の力を象徴的に表している。
 次に、比叡山延暦寺の中心にある国宝「根本中堂」が紹介された。本尊は最澄が自ら刻んだとされる「薬師如来像」である。本尊「薬師如来像」は秘仏とされ、厨子の奥に安置されているため、厨子の前に立っているのは「御前立(おまえだち)」と呼ばれる代理の仏像である。
 平安時代に、延暦寺は日本仏教の最先端だった。そのため新しい教えを学ぼうと多くの僧侶が集まった。四種相承ともいわれているように、延暦寺は天台教学、密教、戒律、禅といった4つの事柄を総合的に学べる環境であったため、様々な祖師(新しい宗派を興した僧侶)が誕生した。延暦寺で学び、新しい宗派を興した祖師たちの中には、臨済宗をひらいた栄西、曹洞宗をおこした道元、日蓮宗の開祖である日蓮、さらに、浄土宗を広めた法然、その弟子で浄土真宗をひらいた親鸞などがいる。現代の日本にのこっている仏教の各宗派は、その多くが比叡山に学んだ僧侶によって開かれたのである。
 密教の教えには、師から弟子へと、その密なる教えを守り、継承していこうという物語があったのだとして番組は締めくくられる。

参考URL:http://www.nhk.or.jp/kurashi/doraku-tue/