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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

クローズアップ現代「凛(りん)とした最期を迎えたい」

2013/04/03 (Wed) 19:30~19:58 NHK総合
キーワード
高齢者、延命治療、家族、医師
参考
番組公式
 今回番組では、高齢者が希望通りの最期を迎えるための課題とその実現に向けての取り組みが紹介されていた。延命治療を希望しない高齢者が増えている近年だが、その希望が実現されることは極めて難しい。それはいったいなぜなのだろうか。
 その原因として、本人と家族との意思疎通がうまく行われていないことが挙げられる。本人の意思が正確に伝わっていないケースもあれば、それを家族が受け入れられないという場合もある。「親に少しでも長生きしてもらいたい」という想いから、本人の意思を知りながらも、家族が延命を希望してしまうことは決して珍しいことではないのである。
 また、医師もその使命感や、家族に訴えられるのではないかという不安から、延命治療を施さざるを得ないという。番組では、「もう寿命だと思える高齢者でも、救急車で運ばれてきた以上は手を尽くさざるを得ない」、「書面で意思表明をしていても、家族から訴えられるリスクもあり延命治療をやめられない」といった医師の切実な想いが紹介されていた。
 こうした中、在宅医療で高齢者たちの希望を叶えようとする医師もいる。そんな医師のひとりである太田秀樹氏は、高齢者が「人間らしい最期」を迎えるためのサポートを行っている。太田氏は、自身も父親が脳梗塞で倒れた際、回復の見込みがほとんどない状態であるにもかかわらず、濃厚な医療(延命治療)の介入を希望した経験をもつ。しかし、「父は最期をどう迎えたかったのか」と自問自答を続ける中に、「家族が日頃から本人の希望を明確に把握し、その死を受け入れる準備をしておくことの重要性に気付いた」と話す。
 一方で、高齢者の願いを実現させるため、地域で連携した動きを進めていく例もみられる。愛知県大府市の国立長寿医療研究センターでは、終末期の医療についての希望を、事前に患者へ確認する取り組みを行っている。地域の医療機関との連携を進め、事前希望書の内容を共有することで、患者の意思を実現させることを目指すのだ。
 この事前希望書には、「人生において最も大切にしていることは何か」という記入項目もあり、今回のゲスト、新田國夫氏は、「私たちは今までは機能的な身体症状のみで医療を判断してきたが、やはりその人のもつ宗教観、社会性、家族、環境、すべての判断の中で、行っていく医療、それが本当は最善の医療である」とコメントしている。
 「人間らしい最期」をめぐる議論が繰り返される中、「最善の医療」とは何かを考えていくこと、また、それをいかに実現していくかが今後の課題であろう。