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100分de名著 般若心経 第3回「“無”が教えるやさしさ」

2013/01/23 (Wed) 23:00~23:25 NHK Eテレ
キーワード
般若心経、大乗仏教、色即是空、菩薩、読経
参考
番組公式
第3回「無の教えるやさしさ」
 般若心経には「無」という言葉が21回登場する。「是故空中無色」という部分は「これは物質だ」、「これは物質ではない」という区分け自体が、人が勝手に作ったもので、本当はそのような区分けは存在しないことを説いている。さらに経典は「無受想行色 無眼耳鼻舌身意……」と続いており、受想行識も眼や耳を始めとした五感も全て無なのだとしている。この経典が全ての人に当てはまり、役に立つものとするために、さまざまな言葉を用いて無を強調しているのだ。
 また、「無無明 亦無無明尽」の部分では無明(苦しみの原因である煩悩)も無明尽(煩悩を消し去った状態)も無であると示している。釈迦が説いた煩悩から抜け出し悟りを得るための正しい道(八正道*2)すら無なのだ。八正道という決められた枠組みを守ることができなくても、その枠組みを無によって消すことで悟りを得られることを言っているのだと佐々木教授は話す。さらに「無智亦無得」は完全な悟りの境地は存在せず、修行はずっと続いていくことを示しているという。
 般若心経を説く菩薩は、人を救うために永遠に修行を続ける。自分のために煩悩を破って悟りを開くのではなく、心を無にして他に尽くしていくことも悟りの道なのだと般若心経は示しているのである。

*2八正道……仏教の実践倫理の根本原理で、仏陀が初転法輪の際に、彼の悟りの中隔である中道の意義を説明するために挙げた八つの実践項目。