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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

ブータン~ほほえみと幸せの国~

2012年9月16日(日) 21:00~22:54 BS11
キーワード
仏教、生、幸福、伝統、欲望、近代化
参考
番組公式
 近代化の波にも呑まれずに、独自の思想で欲望に執われることなく心の平和を重んじるという国、ブータン。現代の理想郷ともいえるブータンの「今」を追い、国民の暮らしや歴史、生の哲学を紹介していく。そして、ブータンの国教である仏教の教えを適宜引用することで、国民の生活に潜むブータン文化の背景を明かす補助としている。ブータンは、中国とインドの間に位置し、世界最高峰の神聖な山々に囲まれながら、チベット仏教を国教とする世界唯一の国である。
 ブータン国王は、経済発展による物質的な充足では国民の満足度は計れないとし、国民総幸福量(GNH, Gross National Happiness)なるものを導入して、国民の幸せに繋がる政策に重きを置いてきた。国王は、自然保護のために国土の4分の1を国立公園に指定したり、苦しみを生むとして、人々の物欲を刺激するものは遠ざけたり など、真の幸福を希求してきた。こうした思想は9世紀頃に伝わった仏教の影響を強く受けていると考えられ、また、仏教の教えは国民の生活にも根付いている。家を守る女性は過酷な寒さの中で瞑想し、若い僧侶は学問と祈祷に励むなど、現代社会と隔絶された生活を送る国民は、母国の伝統や精神を何よりも重んじ、仏教の尊い教えを信じている。
 今、ブータンにも新たな葛藤が生まれつつある。ブータンは、近代化の影響は避けられないとして、TV放送開始や道路建築、さらに2006年には絶対王政を廃止し、議会制民主主義を採用するなど、改革に乗り出した。だが一方で、善良で聡明な国王を愛し、民主化を疑う国民達は、近代化という魅惑の世界を恐れ、伝統の危機を感じている。多くの国々が経済の発展と引き換えに、伝統や自然を失ってきた中で、ブータンはどこまで近代化を進めていくのか。犠牲なしの発展は易しいことではない。
 終わりに、ブータンに学ぶ幸福の国の秘密とは、人間のしあわせは、物質で身を満たす先にはなく、慈の心を宿した仏教に教わる、 毎日のささやかな喜びや満足、ありふれた出来事から成り立っているということなのであろう、とまとめる。