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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

太陽帝国の新たな伝説~もうひとつのマチュピチュを求めて~

2012/09/16 (Sun) 21:00~22:54 BS朝日
キーワード
農業、太陽崇拝、自然、誇りの伝承
参考
番組公式
 15世紀から16世紀にかけて栄え、現在のコロンビア南部からチリ中部まで、その広大な土地を制したインカ帝国。その遺跡として現存するマチュピチュについて、その謎と魅力をインカの誇りと共に追いかける。番組は、現地取材とナレーションによる解説を軸に旅仕立てにして進められていく。マチュピチュは、南米ペルーに位置し、1983年にユネスコ世界遺産に指定されたが、未だ解明されていない謎の多い遺跡である。
 前半は、マチュピチュの謎、とりわけマチュピチュの短期間で成し得た繁栄の秘密について探る。
 その秘密を探る鍵となるのが、太陽崇拝であるという。信仰は人々の求心力を生み、帝国統治の礎となり、高度な文化が生まれていった。農業を基本としたインカの人々は、日時計によって作付けや収穫の時期を計り、高度な石の加工技術を用いて、農業に必要な灌漑施設を作り、丈夫な石壁建築で豊穣なる実りを支えたのである。マチュピチュを含め、各地で得た作物は、首都を通して帝国中に流通した。太陽崇拝は、農業の振興と深く関わりがあったと考えられ、先祖代々の自然に対する豊富な知識と人々の大変な労力、そして自然の恵みの下、インカ帝国は豊かな暮らしを得たのだと、番組は説明する。
 後半は、複数都市の連携という観点から、インカ帝国にとってのマチュピチュの存在理由を考える。
 未だ発掘中のチョケキラオ遺跡は、インカ最後の都市であり、マチュピチュと多くの共通点があり、農産物の集積を担い、インカ帝国の物流網を支えたと考えられている。そして、驚くべきことにこうした天空都市がまだ近くの密林の中に眠っている可能性があるのだ。実際、2012年6月にマチュピチュ周辺でインカラカイという新たな遺跡が発見された。ここにマチュピチュの水路が流れていたと考えられ、マチュピチュ遺跡とインカラカイ遺跡は繋がった都市の一部であった可能性があることが分かった。マチュピチュ遺跡は、今まで王家の離宮として考えられていたが、要塞都市であったという新しい見方も出てきている。
 スペインによる征服の後、インカ帝国は滅んだが、インカの誇りは歌に乗せて脈々と受けつがれてきた。現代に生きる我々が、マチュピチュ遺跡に魅かれるのは、自然を畏れ、敬い、自然と共に生きてきたインカ文明に、失われた人類の理想をみるのかもしれない。さらに先祖と自然の恵みに感謝しながら、正しく勤勉に今を生きること、そして、子孫にその芳醇な恵みを伝えることの大切さを、マチュピチュは教えてくれているのだと、番組は結ばれる。