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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

NHKスペシャル 未解決事件 File.02 オウム真理教 オウムVS警察

2012/05/27 (Sun) 21:00~22:00 NHK総合
キーワード
カルト宗教、オウム真理教、松本サリン事件、地下鉄サリン事件、上祐史浩
参考
番組公式
 オウム真理教の地下鉄サリン事件(1995年3月20日)は戦後最大級の無差別殺人事件として、そして都市部で市民に対し化学兵器(神経ガスサリン)が使用された事件として世界中から注目を集めた。この事件で13人が死亡、6300人が負傷し、今なお後遺症に苦しむ人がいる。
 地下鉄サリン事件は未然に防ぐことはできなかったのか。事件をめぐる警察とオウムの攻防の姿に迫る。当時の関係者へのインタビューが主な内容となっているが、シリーズ前編で用いられた再現VTRや、オウムを巡る当時のニュース映像(地下鉄サリン事件発生時の日比谷線構内の様子やオウム真理教施設への強制捜査など)が挿入されている。
 警察がオウム真理教に対して疑いを持ったのは1990年、熊本県波野村に教団が巨大な施設を建設し始めたころからだという。オウム真理教元幹部の上祐史浩氏は、この施設は表向きには信者の理想郷であるとしていたが、実際は兵器開発の拠点として活用されていたと語る。にもかかわらず、熊本県警元幹部の桑原政行氏によれば、県警がオウムの土地取得の方法に国土法違反があったとして施設内を強制捜査した際には、兵器開発に関する物は何もなかったという。「宗教団体相手の捜査だから」と捜査を遅らせている間に、オウム側に強制捜査の情報が漏れてしまい、兵器開発に関係するものは全て隠されてしまったことが原因だった。
 次に松本サリン事件(1994年6月27日)が発生した当時の警察の動きを紹介している。この時期、オウムは山梨県上九一色村に軍事開発の拠点を移し、すでにサリンの製造を始めていた。
長野県警は松本サリン事件発生後、無関係の河野義行氏を犯人と疑う一方で、サリン製造に必要な薬品の流通情報を調査し、サリン製造者を極秘に捜査していた。当時の捜査員、吉池松男氏が薬品を購入した人物を割り出し、その住所へ向かうとオウムの施設があった。吉池氏は「俺たちはえらいものと喧嘩することになるな」と感じたという。また、坂本弁護士殺害事件に関係し、全国のオウム施設に張り込んでいた神奈川県警の志賀俊明捜査員も教団によるサリン製造を確信し、その情報を長野県警の情報と共に警察庁へ報告した。
 しかし、警察庁はすぐには動けなかった。当時警察庁刑事局長だった垣見隆氏は、サリン製造を罰する法律がなかったこと、波野村での捜査でなにも発見されなかったことなどが決断を遅らせたと話す。その結果、捜査に踏みきったのは1995年3月22日、地下鉄サリン事件が発生した二日後であった。
 オウムにあと一歩まで迫っていた志賀、吉池、垣見の三氏それぞれが事件を振り返って語ったことを以下に引用しておく。「くやしいです。坂本事件が早く解決していればサリン事件がなかったのではないかという批判もあるが、これは宿命として素直に受けるしかない」(志賀)、「オウム真理教なる組織の把握がまったく危険性をはらむということをつかんでいなかった」(吉池)、「今まで経験しなかったことについての想像力が不足していると言われればそのとおりで、もうちょっと違った観点から物ごとを受けとめる、予測することが必要なんだろうと思う」(垣見)。

藤山研究員による詳しい番組のレビューはこちら

藤山研究員レポート『「NHKスペシャル/未解決事件file.02 オウム真理教」を検証する』はこちら