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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

NHKスペシャル 未解決事件 File.02 オウム真理教 17年目の真実

2012/05/26 (Sat) 19:30~20:45 NHK総合
参考
番組公式
 オウム真理教元幹部の証言などを元にしたドキュメンタリードラマだ。事件の真相を追うNHK記者が行うオウム元幹部・深山織枝(みやまおりえ・仮名)への取材から、教団が暴走した原因を探っていく。
 取材の中で、深山は教団での生活や修行の様子を回想し、当時の自分を含めた若者が入信していった理由を「当時のバブル景気や、終末思想が流行する世の中に違和感を覚えていたため」だとしている。
 また、教団が反社会的な側面を持ち始めたきっかけとして在家信者死亡事件、男性信者殺害事件を取り上げている。劇中の記者は「これらの事件を隠蔽したことが、殺人を許す論理を完成させることにつながったのではないか」と指摘する。
 後半に入ると、深山が教団へ疑問を抱き、逃亡するまでに触れる。深山は松本サリン事件を「神々の怒りによるもの」とした麻原を耳にし、教団に疑問を持ち始める。自身が教団のあり方について麻原に問い詰めることもあったようだが、電気ショックで記憶を消されてしまったという。その後、地下鉄サリン事件をきっかけに深山は教団から逃亡した。
ドラマの終盤、記者は深山とともに、富士山ふもとのオウム真理教施設跡地に足を運ぶ。記者は「オウムの人たちも普通の人。だが集団の中では、誰でもオウムと同じようなことをする可能性がある。大事なのは集団が暴走したとき、それに抗えるのか、立ち止まることができるのか」ではないかと事件を総括する。深山は「オウムは失敗だった、ではすまされない。自分に対しても、世間に対しても……」と自分に言い聞かせるように話した。
 ドラマの後には、麻原の学生時代を知る人物による証言や、大学教授による検証が行われる。麻原が通った盲学校の担任は「模範的な生徒だったと思う」と話す反面、寄宿舎で寝食を共にした先輩は「自分より立場の弱い者は徹底的に自分の良いようにしてしまう。一方で、自分がかなわないような立場の人間には上手く言って可愛がられる」という印象の人物だったと話す。
 また、麻原の説法や、側近への発言を録音したテープからは麻原が教団発足当初より、国家転覆や殺人を正当化する発言をしていたことが分かる。会話分析の第一人者である明治学院大学の西阪仰教授は、「麻原は感情や権威に訴えるのではなく、会話を組み立てている」と信者をコントロールした麻原の会話術を解説する。北海道大学の宗教社会学者、櫻井義秀教授は麻原の説法を「聖書とか仏典を出しているが、荒唐無稽なものだ」、「オウムの考えは正しいこと、間違っていることを全て麻原が決め、間違ったことをしている人は破壊してあげるのが善行だという非常に倒錯した考え」と断言した。

藤山研究員による詳しい番組のレビューはこちら

藤山研究員レポート『「NHKスペシャル/未解決事件file.02 オウム真理教」を検証する』はこちら