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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

こころの時代~宗教・人生~
シリーズ ブッダの最期のことば(1)ブッダは生きている

2011/04/17(日)5:00~6:00 NHK教育
キーワード
仏教
参考
番組公式
 4月から来年3月まで毎月第3日曜日(再放送は翌土曜日の13:00~14:00)に『ブッダの最期のことば』として、釈尊の晩年の説法である『大般涅槃経』が取り上げられる。解説は、『ブッダ臨終の説法――完訳 大涅槃経』1~4(大蔵出版)などの著者である田上太秀・駒澤大学名誉教授(仏教学)、聞き手はNHKアナウンサーの草柳隆三。
 テキスト『NHK こころの時代 宗教・人生 ブッダの最期のことば 上』田上太秀著(NHK出版)が刊行されているが、番組と突き合わせると前後や割愛もある。平易な現代語訳を目指した田上氏の訳を、これまで親しまれてきた大蔵経などの訳と読み比べることも可能だ。

【2つの涅槃経】
 『大般涅槃経』(略して一般に『涅槃経』と呼ぶ)には、2種類がある。釈尊がクシナガラで入滅するまでの数カ月間、旅をしながら説法した教えと経緯がまとめられたものがひとつ(中村元氏による邦訳『ブッダ最後の旅』(岩波文庫)などで読める)、もう一方はクシナガラにあるサラ樹林で臨終に説法する場面をクローズアップしたものである。このシリーズでは、この2種類の『涅槃経』を取り上げていく。

【涅槃に達するためには】
 「涅槃」の原語は「ニッバーナ」で、「炎が消え失せた状態」が語源である。炎は、燃えている間はまわりのものを焼き尽くすので、煩悩を表す。つまり、「涅槃」とは「2度と煩悩が起こらない状態」のことであるが、それと同時に「2度とこの世に生まれ変わって来ない」という意味でもある。
 釈尊は、この「涅槃」を求めて出家した。『涅槃経』には、釈尊が「私は29歳の時に何かしら『善なるもの』を求めて出家した」と語ったとある。その「善なるもの」として釈尊が大切だと説くのが「八正道(はっしょうどう)」という、田上氏によれば「無理のない生き方」である。八正道とは8種類のバランスの取れた歩みであり、「正見」(正しい見解)、「正思」(正しい思い)、「正語」(正しい言葉)、「正業」(正しい行い)、「正命」(正しい生活)、「正精進」(正しい努力)、「正念」(正しい気遣い)、「正定」(正しい瞑想)を指す。これらは家庭で親が子どもに教えることと大差ないが、この当たり前のことに励み、煩悩をなくすことで「涅槃」の境地に達するというのが釈尊の教えと、田上氏は説明する。

【ブッダは生きている】
 2つの『涅槃経』には、「ブッダは生きている」ということが書かれている。ブッダとは「道理を知り、修行を完成した人」であって、ブッダは釈尊にだけ与えられた呼び名に思われているが、実際にはたくさんいる。
 古い『涅槃経』では、釈尊(ブッダ)は深くて高い瞑想の境地(第四禅)から、すっと涅槃に入ったと書いてある。肉体は荼毘(だび)に付されたが、三昧の境地のままで涅槃に入ったということで、普通の人間の死の意味とは全く違う。瞑想の世界で生き続けているということである。
 「貪りをもたないこと。つまり、貪りを捨てること。妄執を捨てること。そういうことをしていけば、生きているブッダに会える。なぜなら、ブッダは生きて我々のまわりにいるから。そして、仏教の信仰はそこに尽きる」と田上氏はまとめている。