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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

平城京遷都1300年企画 「追跡 幻の八角七重塔~古代ニッポン最後の女帝の夢」

2010/10/12(火)21:00~22:30 NHKBS2
キーワード
仏教建築、塔、奈良時代、西大寺、称徳天皇、孝謙天皇、女帝、女性天皇、道鏡
 五重塔、七重塔など木造高層建築が次々と建てられた奈良時代、平城京の西に位置する西大寺には、説話上の伝説と思われていた八角七重の巨大な塔が、東大寺を建立した聖武天皇の娘、称徳天皇によって実際に計画されていたことが明らかになった。本番組では古文書や現存する後代の八角塔などから、巨大八角塔建立の技術的な検証を行うとともに、女性天皇として多難な人生を強いられた称徳天皇が塔建立の発願に込めた想いや、政治的な思惑を様々な角度から考察する。
 当時、女性天皇に対しては反対勢力も多く、その治世は権力闘争を伴う、障害多きものだった。在位中に発願された八角塔からは、かつて側近でありながら、後に反乱を企て討伐された藤原仲麻呂の鎮魂、あるいは僧侶・道鏡を重用し、自身を後継する最高権力者にしようとさえしていた称徳天皇の、最高位たる仏に天皇が仕えるという政治的変革のメッセージ、等を読み取ることができる。
 CG、模型を駆使しての考察から、奈良時代の技術では高さ90m以上と言われる八角塔の建立は実際には不可能だったことがわかった。称徳天皇は中国史上唯一の女帝、則天武后を強く意識していたという。則天武后はその政治支配の象徴として、やはり八角形の巨大建造物を建造していたという。当時国内に先例がなく、高度な技術を要する巨大八角塔の発願は、様々な反発に立ち向かわざるを得なかった称徳天皇が、則天武后や、大仏を建立した父に自らを重ね合わせ、女帝による斬新で強力な政治体制の確立をアピールするものだったのである。番組では幻の八角塔の調査から、それにまつわる女帝・称徳天皇の人間的側面や、現代人の想像を遥かに上回る、当時の高度な技術、文化水準などが明らかにされ、1300年前の奈良時代についてのイメージを今まで以上に豊かに膨らませるものとなっている。