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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

生中継「天下の大祭 御柱祭」

2010/04/10(土)13:00~16:50 BS103ch(ビーエスハイビジョン)
キーワード
御柱祭・諏訪大社
参考
信州諏訪 御柱祭公式
 寺社の用材となる樹は、ただの材料ではなく、神聖なものとして扱われる。伊勢神宮の二〇年ごとの式年遷宮など、社殿の建て替えのための用木を皆で曳いて移送することが大切な宗教儀礼となっている。今回とりあげる諏訪大社の御柱祭(「式年造営御柱大祭」)も、境内に立てるモミの柱を、七年に一度の寅と申の年に、山中から神社境内まで氏子たちが曳航するというものである。なお、秋にも周辺の神社の柱を曳き出す祭がある。
\r\n 柱が山より曳き出される「山出し」、曳き綱を用意する「綱打ち」、神社までの道中を曳いて、上社・下社の境内に建てるまでの「里曳き」(5月)など、の一連の祭礼行事をひっくるめての祭なのだが、もっとも多くの人々の注目を集めるのは、「木落し」と呼ばれる、急坂を(人を乗せたまま)引き落とす儀式である。
\r\n 祭の公式ホームページやNHKの番組案内には、祭の起源について、「室町時代の『諏方大明神画詞』という記録に、平安初期の桓武天皇(781~806)の時代に「寅・申の干支に当社造営あり」とあるのが最初の記録で、起源はさらに遡るともいわれている」とある。
\r\n 人を乗せたまま木を落とすという祭の勇壮さゆえに、この祭は、地域に在住して、永年御柱祭にたずさわっている人々に加え、数多くの見物人が訪れる大きな行事となる。どの柱を曳くかのくじ引きの行事があり、柱を曳くための綱が地元の公共施設に飾られるなど、折々に祭りを盛り上げる要素がある。
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\r\n この番組は、クライマックスの木落し生中継を中心に、御柱祭の全体像を取材画像としてとりまとめたものである。画像は美しく、祭の細部にいたるまで豊かにとらえられている。しかも、NHKアーカイブズの恩恵で、この映像をあとから高画質で楽しむことができる。
\r\n 現代的な要素が加えられた儀式、スポーツの応援のような音楽、高性能カメラでの撮影や大型モニターでの中継、周辺地域よりの数多くの見物人など、古来の祭の原型は失われたように感じる人もいるかもしれない。たとえば宗教を静かな祈りのようなものと結びつける人にとっては、祭の喧噪や蕩尽は余計なものと感じるかもしれない。だがそれは性急というものだろう。四時間近い長い番組の中から、何がこの祭を魅力あるものにしているのか、感じ取っていただきたい。\r\n

(葛西賢太)