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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

歴史秘話ヒストリア「神と仏のゴチャマゼ千年 謎解き!ニッポンの信仰心」

2018/05/30 (Wed) 22:25~23:10 NHK総合
参考
番組公式

人口の49%が「無宗教」の国・日本。その一方で、正月の初詣には神社や寺に訪れ、最近ではご朱印帳を集めている人も多い。一体、日本人にとっての信仰の在り方とは何なのか。  
 朝鮮半島の百済から日本に仏教がもたらされたのは
6世紀のこと。それから約200年間、神と仏が交わることはなかった。しかし、8世紀の奈良時代になると、神と仏が結びつく神仏習合が始まった。日本に先駆けて、道教の神と仏の神仏習合が進んでいた唐を手本に、地方に仏教を広めようとする僧と仏教を取り入れたい豪族。そんな両者がタッグを組むことで神と仏が織りなす信仰が始まったのだ、と番組では説明する。
 そして実際に神仏習合の大きな節目となったのは、聖武天皇が指揮をした大仏建立。このとき八幡神のお告げにより、大仏を覆うための金が陸奥の国で採れたことから、
752年大仏が開眼されるに至った。その際、守護神として東大寺の隣にある手向山八幡宮に招かれたのが、この八幡神である。
 神と仏の「ゴチャマゼ」千年、その第一ステージは神が「仏教に帰依」し、その「守護神」となるという形で始まったのである。

 平安時代の終わりになると、神仏習合は新たなステージへ突入していく。春日大社に祀られている神々を描いた『春日本迹曼荼羅』には、春日大社に祀られる神から雲が吹き出しており、その雲の上には仏が乗っている。これは当時広まっていった究極の「ゴチャマゼ」理論、本地垂迹説を表しており、「日本の神々は仏が衆生を救うために姿を変えて現れたものだ」とする説だ。本地
()とは変身前の本来の姿、垂迹()は変身後の仮の姿を意味し、この理論によって、その「ゴチャマゼ」具合は格段に進んでいった。こうして奈良時代までは全く異なる存在であった神と仏は、一体化して「神仏」と呼ばれるようになる。
 しかし、現在、神仏習合は、その痕跡しかみることができない。今から
150年前の明治維新のとき、日本人の信仰を揺るがす大きな事件が起こったからだ。新政府は王政復古、つまり仏教が伝わる前の天皇を中心とした理想の政治の復活をスローガンに掲げた。1868年には神仏分離を命じ、神仏習合を禁止した。「神仏習合をしている神社から仏教色を排除し、美しい古代の信仰(神道)を取り戻せば、本来の美しい日本に戻って世の中がよくなる」という考えからだった。こうして仏教と切り離された神道は、天皇中心の国家神道となり、1945年の敗戦まで続いた。
 古くから日本人は神と仏を同列に扱ってきた。これは正に神仏習合の賜物であろう。そうした両者が混然一体となった中で、いつしか神や仏は人間を助ける存在であるという考え方が広まっていった。そしてある特定の教義を拠り所とするよりも、自身に降りかかる災難を避け、幸福に暮らせるようにとご利益を願うことばかりが信仰であるかのようになっていった。「無宗教である」と言う日本人が多いのはこういったところが関係しているのではないだろうか。日本人が千年かけて作り上げた神仏習合。「良い
(いい)」かげんに懐の広い土壌があったからこそ私たちの間に根付くことができたのだと思う。