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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

特集こころの時代「挑む僧侶たち~被災地に希望を~」

2016/03/03 (Sun) 3:20~4:05 NHKEテレ
キーワード
東日本大震災、僧侶、絆
参考
番組公式
 2011年3月11日、宮城県を震源とする未曾有の災害、東日本大震災が発生した。この震災を通し多くの僧侶たちが自分の存在意義を問いただしてきた。本レビューでは宮城、岩手、福島の3人の僧侶が震災時どうしていたか、今どう向き合っているかについて取り上げていく。
 はじめは宮城県仙台市の僧侶、木村敏さんについて取り上げる。木村さんは寺の副住職として父を支える一方で名取市役所に勤務していた。震災当日の夜開かれた災害対策本部で自ら遺体安置所の運営を買って出た。そこではおびただしい数の死者を目の当たりにすることになる。僧侶として慰めることが出来るのは儀式。葬式仏教の大切さ、そしてそれによってみんなの心を落ち着かせることが出来ると語った。普段から自分の死について向き合い、今生きていることをしっかり見つめることの大切さを訴えた。
 次は岩手県大槌町の住職、高橋英悟さんについて取り上げる。高橋さんは宮城県の公務員の家に生まれたが、辛さを抱える人を支えたいと僧侶の道に飛び込んだ。高橋さんが今取り組んでいるのは「生きた証プロジェクト」である。これは震災で亡くなった町民のすべて1285人の人生や人柄を記録に残し、未来へと語り継いでいこうとする事業である。遺族が個人の命や存在を感じることで前向きに生きるきっかけを作っている。
 最期に取り上げるのは福島県南相馬市の僧侶、田中徳雲さん。震災によってバラバラになった地域の絆を取り戻そうと奮闘している。およそ500件あった檀家は東北や関東、西は兵庫まで17の都府県に避難している。葬儀や法要があれば避難先にも出向き、檀家の悩み苦しむ姿と向き合ってきた。田中さんは毎月二回「清掃結い(せいそうゆい)」と呼ばれる檀家が集まり一緒にお寺の清掃をする企画をしている。散り散りになった檀家が集まり故郷の結束を確かめることが出来ればと呼びかけた。
 お寺が人と人とを繋ぎ、みんなの居場所を作ろうとしている。5年の歳月を経て、落ち着いてきてはいるが、復興したとは言い切れない。一人一人の気持ちに寄り添い、痛みを理解することはこれからも大切である。この先どうするかということを自分たちで考えられるまでに気持ちは上に向かってきている。本当の復興はここからである。