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宗教情報PickUp
テレビ番組ガイド・レビュー
日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。
ハートネットTV“みとりびと” ―看取(みと)りの時間に伝えあうこと― |
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2014/08/12 (Tue) 13:10~13:40 NHKEテレ
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「ハートネットTV」は「生きづらさ」を抱える全ての人に向けた新しいスタイルの福祉番組である。毎回番組では“当事者の目線”から様々な問題が取り上げられる。 今回のテーマは「看取り」である。誰にでもいつかは訪れる「死」。その最期の瞬間を自宅で過ごした人々とその家族が取材されていた。 取材の舞台となったのは滋賀県東近江市の永源寺地区である。山に囲まれたこの農村の人口はおよそ6000人。そのうち高齢化率は30%を越える。 この村では、年間に亡くなる高齢者60人のうち、半数以上が自宅での自然な最期を望む。家族はいつもの部屋で大切な人との最期の時間を過ごし、彼らを看取るのである。 村には長年連れ添ったパートナーを自分で介護して、看取ろうとする高齢者の姿も見られる。そのうちの一人が左近治之助さん97歳である。妻のセツさんは91歳。セツさんは家で転倒してから寝たきりになり、急速に体力が落ちていた。 ずっと自分を支え続けてくれたセツさんに恩返しをする番であると考えた治之助さんは、「できるだけのことは精一杯尽くしてやりたいし、そうすることが自分の務めだと思っている」と話した。しかし、実際の介護は想像以上に過酷なものであった。 治之助さんたちのような夫婦を支えているのが地元の医師・花戸貴司さんである。花戸さんは介護に取り組む家族を孤立させないため、患者をともに24時間体制でサポートしていくことのできるチームを立ち上げた。 花戸さんは治之助さんとセツさんについて、「何十年と二人で生活してきた。おそらくいまが集大成だと思います。いま二人が向き合って生活をしている。そして、充実した時間を過ごしておられると思う。それを邪魔しないようにすることがわれわれの一番の仕事です」と話した。 治之助さんが介護をはじめてから二カ月が経ち、セツさんの体力が目に見えて衰えてきた。ひ孫を連れてお見舞いに来た孫たちは、急激に体力が落ちた祖母の姿にとまどいながらも、「長生きして二人で助け合っている姿を見ていたら自分もそうありたいなと思った」と涙ながらに語った。 そして、ある晩、治之助さんはセツさんの息がとまっていることに気付いた。自宅でセツさんとの最後の時間を過ごせたことについて、治之助さんは「こんな幸せなお別れができるという事は、われわれにとっても掛けがえのない幸せです」と話した。 今年6月、治之助自身も家族に看取られるなか静かに息を引き取った。 看取りの時間。それは苦楽をともにしてきた人々が互いの想いを伝えあう時間である。そして、そのその先には死がなだらかにつながっているとして番組は締めくくられる。 死が見えにくくなっている現代社会。看取りを通して死と向き合うことは、われわれ自身が自らの生を見つめ直すきっかけともなるのではないか。誰にでも訪れる死を、忌むべきものとしてではなく、日常の出来事としてとらえ、受け入れようとすること、その姿勢からわれわれが学ぶべきことは多いであろう。 ○番組HP 「ハートネットTV」 http://www.nhk.or.jp/heart-net/ |