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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

現代社会×宗教「広がる修行者たち」

2014/02/23 (Sun) 13:00~13:55 BSフジ
キーワード
社会、自我、自分、他者、宗教
参考
番組公式
 テーマは、現代人は宗教に何を求めるのか、修行が日常にもたらすものとはなにか、である。現代の修行者の声を交えながら、元プロ陸上選手の為末大氏と宗教学者・僧侶である釈徹宗氏の対談により、この現代を生きていくことを考えていく。
 今までとは違う自分を求め、修験道での過酷な修行を行う人や、自分を見つめ直すため、座禅に参加する人など、外からではなく本来の自分を内観する時間を求めてやってくる。こうした人々の動きを見て、二人の対談では、自我を確立せよと催促され続け、自己決定が社会の落し所となっている現代において、自分の知らない“自分”や自分の操れない“自分”がいることを認めたところから始めることの重要性を、現代人は考えていく必要があるのではないかと語られた。為末氏も、良いパフォーマンスを出せた時というのは、これと似た、主体が外に解けていくような状態であったと語った。
 メダリストとして競争を勝ち抜いてきた為末氏であるが、“社会”の中での認識と現実のズレ、それまで幸せとして位置づけていた目的を成し遂げ、その瞬間は幸福を感じても、時間が経てばやがて過ぎ去って行ってしまう事実を感じたと言う。こうした現実とのズレ、競争と比較が渦巻く社会の価値観にいる限り解決しない苦悩を、修行に来る人たちも感じたからこそ、現代とは別の価値観を持つ宗教に答えを求めるのではないかと話す。
 最後に、四国お遍路に関わる人の話を受け、人間は極限まで行っても自分の為だけに生きるのは難しいもので、“自分”は自我だけではなく、他者との関係性によって一時的に成り立っていると、釈氏は語る。自我では制御しきれない自分の心を受け止めながら生きていくことの大事さ。思い通りにならないことでの苦しみをいかに引き受けるか。その道筋を示す智慧の結晶として、宗教体系や、身体技法としての修行の道もあるのではないかとして、番組はまとめられた。