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小さな旅「雨降りの山で~神奈川県大山~」

2013/09/29 (Sun) 08:00~08:25 NHK総合
キーワード
大山、門前町、水、祈り、感謝
参考
番組公式
 「小さな旅」は「日本各地の美しい風景と、そこではぐくまれる人々の豊かな暮らし」を紹介する旅番組である(番組HPより)。今回は古くから雨乞いの霊山として敬われてきた大山と、その恵みに謝して暮らす人々の生活が紹介されていた。
 大山の豊かな水の流れは、古くからその周辺の田畑を潤してきた。江戸時代には関東を中心に大山参りをするグループ(=大山講)が次々と生まれ、入山が許される夏になると講の人たちは大勢でやってきたという。
 大山の麓には門前町がある。風情ある町並みはいまも昔も変わらない。講の人たちが寄進した石の垣根「玉垣」には、消防や漁師、農家や風呂屋など、水のご利益にあやかりたいという人々の願いが刻まれている。
 門前町には旅館の看板の下に「先導師」と書かれた宿が並ぶ。先導師とは、代々各地から訪れる大山講の人たちに宿を提供し、参拝の手引きをしてきた人々である。いまも40軒の先導師宿があり、今日では一般の観光客も、宿泊や食事のために利用することができる。
 佐藤大住さんは37代目の先導師として、大山参りに来る人々をサポートしている。宿には毎年、雨乞いを願う農家だけでなく、さまざまな職を持つ人々がそれぞれの願いを胸にやってくる。宿の奥には大山の神を祭った神殿があり、講の人たちはここでお祓いをうけて、身を清めてから山に登る。
 神殿には毎日、大山の新鮮な湧水がお供えされる。「水への感謝を忘れないこと」。それが代々言い伝えられてきた教訓である。佐藤さんは「水元を守り、水と水の出る山を大事にしたい」と話す。そして、「大山をみると、ほっとするというか、安心する。拝む対象、お礼の対象としてみることもあるが、抱かれているというか、守られているという気がする」と語った。
 また、大山は豆腐の名産地としても知られている。130年続く豆腐店の4代目店主・加藤貴克さんは、父のもとで15年豆腐作りを学び、店を継いだ。大山の豆腐は、かつて農家が先導師へのお礼に大豆を納めたことからはじまったといわれている。参詣客は名物の豆腐を手のひらにのせ、それをすすりながら山を登る。
 加藤さんは「生まれたときからここの水を使って、よその水は飲んだこともない」と話す。そして、生活の一部でもあり、仕事にも欠かすことのできない水を、「命の次に大事なもの」と語った。
 門前町の川のほとりには、良弁滝と呼ばれる滝がある。その脇のお堂には、奈良時代の高僧・良弁(689~774)が祀られている。良弁は、ここで身を浄めて大山を開いたといわれている。かつては大山参りに臨む人々も、この滝に当たり身を浄めてから登山したという。
 夏の終わりには、大山阿夫利神社の秋季例大祭が行われる。門前町の人々は、祭りで大山の神を迎えて、夏山の賑わいに感謝する。先導師の佐藤さんも神職の一人として神輿の行列に加わった。そして、その姿をみつめるのが38代目を継ぐ息子の純さんと、さらに39代目を継ぐ孫の壱くんである。
 親から子へ、子々孫々に渡って伝えられてきた水への信仰。「祈り」と「感謝」。雨降りの山で受け継がれてきたこの営みは、これからも絶えることなく続いていくであろう。
 
〇参考URL
・番組HP「小さな旅~こころのふるさとをみつめて~」
http://www.nhk.or.jp/kotabi/archive/2013/konkai_130929.html