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NHKスペシャル「僕はなぜ止められなかったのか?~いじめ自殺・元同級生の告白」

2013/08/25 (Sun) 21:00~21:50 NHK総合
キーワード
いじめ、自殺
参考
番組公式
 3年前、1人の中学生が自殺した。彼を自殺に追い込んだのは「いじめ」であった。いじめによって自殺した篠原真也くん。その突然の死は、家族や親友のこころに大きな衝撃を与えた。今回番組では、真也くんの親友である小島萩司くんと、残された家族の想いが取り上げられていた。小島くんは今年で高校3年生。親友の死から3年が経ったいまでも、小島くんは月命日に真也くんの両親のもとへ足を運び続けている。
 これまで小島くんは、真也くんの死について誰にも話そうとしなかった。しかし、今回取材に応じたのにはある理由があった。その理由について、彼は次のように語る。「最近、いじめの事件が多いし、同じように辛い経験をしている人が何人もいるだろうから、代弁者というか、生徒はこう思っていると世間に示したい」。
 真也くんの死後、130人近くの聞き取りをもとに調査委員会がまとめた報告書。当初、真也くんはいわゆる「いじられキャラ」としてクラスの人気者であったという。しかし、どんな無茶振りにも嫌だと言わなかった真也くんに対して、「いじり」は段々とエスカレートしていった。元クラスメイトは当時の様子を「みんな上限が分からなくなっていた」と話す。
 このように、最初はそのつもりでなくても、いつの間にかそれがいじめへと発展してしまうケースは少なくない。さらに、こうした場合、やっている方も観ている方も「いじめている」という気持ちがないままに、それがエスカレートしてしまうことが多いのだ。
 また番組では、日本の学校の大きな特徴として、「いじめを止めに入る人が、学年が上がるにつれて減っていく」ことが挙げられていた。そして、それとは対照的に、いじめに対して何もできない「傍観者が増えていく」というデータが示されていた。
 いじめが起きていることに気付いたとしても、止めに入れば次は自分がいじめられるかもしれない。このような恐怖から、目の前で起きている「いじめ」に対して、「自分がやられているわけではないし、やっているわけでもない」として、多くの生徒が目をつむってしまうのである。
 小島くんも、真也くんが自分に対して何度もSOSを送ってくれていたと当時を振り返る。しかし、「自分はそれらに対して適当な返事しかしなかった。もうちょっと考えるべきであった」というコメントを何度も繰り返した。
 真也くんは自殺の直前に15通のメールを書いている。そして、その1通目が小島くん宛てであった。そこには「今までありがとう」「もう恨んでないよ」「さようなら」という言葉が並んでいた。真也くんが「恨んでないよ」と送ったのは15通のうち小島くんに宛てたメールだけであった。
 真也くんの父・篠原宏明さんは「真也も残酷だね。真也自身はたぶん誰の責任でもないと言いたかったのだろうけど、こういう文章をもらうと彼(小島くん)はつらいだろうな、自分を責めるよな」「えらく大きいものを背負わせてしまった。聞いたことはないけれど、しんどいと思う」と語った。
 そしてある月命日の前日、真也くんの両親は小島くんに「もう自分を責めないでほしい」と告げる。「友だちとして忘れないでほしいという想いもあるが、もういいよという想いもある。もう自分を責めないでほしい。一回はきちんと謝りたかったし、お礼も言いたかった。いつも心配していたけれど、怖くて聞けなかった」と、ずっと抱えていた複雑な想いを伝えた。
 小島くんはこの言葉を受けて、「これからも責め続けるとは思うが、責めないでくれと言われて、ちょっと楽になった」とその心境を語った。
 「もう二度といじめを最悪の結果で終らせることがないように」という願いを込めて今回取材に応じてくれた小島くん。番組の最後で彼は、「友達を表立ってかばうことができないのなら、それこそ今ならメールでもいいですし、ちゃんと真っ向から相談に乗ってあげるというか、みんなに見えるところでなくてもいいから支えてやるべきというか、そういうのを分かってもらいたい」と語った。
 多くの人がいじめに悩み苦しんでいる現代社会。私たちは、小島くんの想いを真摯に受け止めていかなければならないであろう。