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クローズアップ現代「人生のディナーを召し上がれ~終末期医療・新たな挑戦~」

2013/05/22 (Wed) 19:30~19:56 NHK総合
キーワード
終末期医療、緩和ケア、リクエスト食
参考
番組公式
 「もしあなたの命の時間がのこりわずかだと知らされたら、人生の最期に何が食べたいですか」。いま終末期医療の現場で、こうしたわたしたちの食べることへのこだわりを心のケアへ生かそうという試みがはじまっている。
 今回は、大阪のホスピス・こどもホスピス病院で行われている「リクエスト食」という取り組みが紹介されていた。ここでは週に1度、患者の希望する食事をなんでもかなえる。リクエスト食によって出されるのは、患者たちの好物や人生の思い出の食事など様々である。患者の平均寿命はおよそ1ヶ月。抗がん剤治療など、あらゆる治療が効かなくなった、ガン末期の患者が入院している。
 金曜日に栄養士が希望を聞き、翌日の土曜日にはリクエスト食を提供する。いつ急変するかわからない患者の要望に応えるため、どんな料理でも1日で準備する。リクエストを実現するのは、元日本料理店の板前など、3人の調理師である。生物(なまもの)や、ステーキなど、他の病院ではあまり出さない食べ物であっても、患者が希望したリクエストであれば1つずつ用意していく。
 余命がわずかな患者に食べたいものを食べさせてあげるという考え方は決して特別なものではない。しかし、患者の状態を考慮して、食べやすいものや消化のいいものが優先されてしまうため、とりわけ医療機関においては、患者一人ひとりの気持ちに寄り添った食事の提供が困難となっているのである。
 また、リクエスト食を提供していく上で、大切にされているのが「できるかぎり家族と一緒に楽しんでもらいたい」という精神である。家族と一緒に、思い出の食事をとるその時間は、患者だけでなく、家族にとっても貴重なものとなる。たとえ、患者自身が本当に少しの量しか食べられなくても、大切な人とともに食事をする、そのこと自体に大きな意味があるのだ。
 ホスピス・こどもホスピス病院副院長の池永昌之氏は、「病状が進むにつれ、身の回りのことがだんだんできなくなっていくなかで、これをしたい、明日はこうしたいというふうなことを、できるだけ選べるようにしていくことが、やはり患者さんのその人らしさを支える上で、大事だと思う」と語る。
 終末期の患者のケアにあたる医療機関では、新たな鎮痛薬が誕生し、患者の訴えがもっとも多い「痛み」を取り除くことが可能になった。次なる課題は、いかにして死に立ち向かう人々の「生活の質」を高めていくかである。
 番組でも触れられていたが、私たちはもう一度、食べることの意味やそれがもつ力についてよく考えていく必要があるのではないだろうか。また、リクエスト食のような取り組みは、今後の緩和ケアのあり方を考えていく上でも、参考にしていくべき点が大きいであろう。