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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編 第6回「山岳のほとけさま」

2013/05/07 (Tue) 21:30~21:55 NHK Eテレ
キーワード
神仏習合、修験道、蔵王権現、六郷満山
参考
番組公式
 この番組では、東京藝術大学大学院教授・籔内佐斗司氏を講師にむかえて、日本各地の仏像を巡っていく。日本では古代から、大きな木や岩には神が宿ると信じられてきた。その後、仏教の伝来に伴い、神への信仰と仏教への信仰が一つになる「神仏習合」という考え方が生まれる。そして、この神仏習合によって誕生したのが、日本独自の宗教――修験道である。シリーズ全9回中、第6回目の今回は「山岳信仰のほとけさま」と称して、修験道にまつわる仏様が紹介されていた。
 はじめに、修験道の総本山である「金峯山寺」を訪れた。その本堂――国宝「蔵王堂」の中には、本尊として「金剛蔵王権現」が祀られている。「権現(ごんげん)」とは「権(かり)に現れる」という意味であるが、蔵王権現は何の化身なのだろうか。
 番組では、修験道の開祖・役行者が苦しむ人々を救うため、千日の苦行をしている際に現れた3体の仏様――釈迦如来、千手観音、弥勒菩薩が融合して、神の姿で現れたのが蔵王権現であるとの解説がなされていた。神仏習合によって生まれた修験道独自の仏様、まさに「神と仏の化身」が蔵王権現なのである。
 後半は、「石仏の宝庫」とも呼ばれている大分県の国東半島を舞台に、修験道と関わりのある仏様を巡った。豊後高田市の「富貴寺大堂」は、平等院鳳凰堂、中尊寺金色堂とともに「日本三阿弥陀堂」に数えられており、現存する九州最古の木造建築として国宝にも指定されている。
 富貴寺の境内には多くの石仏があり、裏山の洞窟にも、石でつくられた「薬師如来像」が祀られている。なぜ木ではなく石に彫られているのかについて、籔内氏は「行者たちが修行の一環として刻むのには木よりも石の方がやりやすかったのではないか」と話す。修行中は本格的な道具を持ち歩くことができなかったため、多くの道具を必要とする木彫よりも、ハンマーで石を彫っていく石彫の方が適していたのである。
 また、国東半島には修験道に関わる寺が点在しており、それらはまとめて「六郷満山」と呼ばれている。六郷満山は修験道の修行の場として独自の文化を築いてきた。「峯入り」という修行では、行者が山道や寺を回りながら心身を鍛える回峰行を行い、さらに行く先々で加持祈祷を行う。番組の最後では、その峯入りのスタート地点に刻まれている「熊野磨崖仏」という2体の仏様が紹介された。
 崖に彫られた仏様のうち、向かって右側は、高さ6メートルの「大日如来像」で、頭上には密教の象徴でもある種子曼荼羅が刻まれている。そして、左側は、両目を突き出し、牙をむいた高さ8メートルの「不動明王像」である。憤怒の形相であるのに優しげな表情をしているのは、長年の風雨にさらされたためだという。
 修行のために彫られたといわれる磨崖仏、自然をおそれうやまう山の信仰がいまも息づいている、として番組は締めくくられる。