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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編 第5回「みちのくのほとけさま」

2013/04/30 (Tue) 21:30~21:55 NHK Eテレ
キーワード
薬師如来、瑠璃光浄土、徳一、慈恩寺、恵隆寺
参考
番組公式
 この番組では、東京藝術大学大学院教授・籔内佐斗司氏を講師にむかえて、日本各地の仏像を巡っていく。仏教の世界では、西の彼方には阿弥陀如来の極楽浄土が、東の彼方には薬師如来の瑠璃光浄土が存在すると考えられている。瑠璃光は、夜明け前に東の空に浮かぶ、澄み切った青い光を指す。シリーズ全9回中、第5回目の今回は「みちのくのほとけさま」と称して、苦しみの闇を照らし、あらゆる病や災難から人々を救う仏様――薬師如来が紹介されていた。
 東北地方では、平安時代はじめに磐梯山が大噴火し、その後も出羽大地震、貞観大地震などの大災害が続いた。この時代に奈良からやってきた僧侶・徳一は、災害に苦しむ人々を救うため、東北に仏教を広めるとともに、多くの寺を建てるなどしてこの地の復興につとめたのである。
 番組では、はじめに藤原貴族縁(ゆかり)の寺である慈恩寺が紹介された。慈恩寺の薬師堂には「薬師三尊像」が安置されている。「薬師如来座像」の両脇に「日光菩薩立像」と「月光菩薩立像」が控えており、その後方では、薬師如来のまわり十二方位を守る「十二神将立像」が護法神として祭られている。十二神将立像には、その多くが鎌倉時代の作であるにもかかわらず、当時の彩色がよく残されている。
 続いて、会津坂下町にある恵隆寺が紹介された。本堂に安置されているのは高さ8.5メートルの「十一面千手観音立像」である。仏像があまりにも大きすぎて厨子のような扉をつけることができないため、本尊の前には大きな幕が降ろされている。
 この十一面千手観音立像は、ケヤキの一木造で、国の重要文化財にも指定されている。さらに、千手観音のまわりに安置されている「二十八部衆」も、すべてが一木造の仏像である。帝釈天や毘沙門天、仙人や大王など28体の守護神が千手観音を守っている様子は圧巻である。また、寺の縁起によると、この仏像は立ち木に彫られたことから、「立木観音」とも呼ばれている。根がついた立ち木にそのまま仏像を彫り、そのまわりにお堂を建てたのだ。その根株は現在でも床下まで続いているという。
 日本には木でつくられた仏像が圧倒的に多いが、これは世界的に見たら珍しい。籔内氏は「世界では石とか金属でつくられている場合が多く、一見そのほうが強そうにみえるが、人から人に伝えていくことを考えると、自分たちに近しい素材で作られた仏像の方が大切にされる気がする」と話す。
 この地で生まれ、愛され続けてきたみちのくの仏様は、いつも人々を慈悲の目でみつめている、として番組は締めくくられる。

参考URL:http://www.nhk.or.jp/kurashi/doraku-tue/