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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編 第4回「西方浄土のほとけさま」

2013/04/23 (Tue) 21:30~21:55 NHK Eテレ
キーワード
阿弥陀如来、極楽浄土、九品往生、末法思想
参考
番組公式
 この番組では、東京藝術大学大学院教授・籔内佐斗司氏を講師にむかえて、日本各地の仏像を巡っていく。シリーズ全9回中、第4回目の今回は「西方浄土の仏様」に迫る。西の彼方にあるとされる西方浄土。その浄土を主宰している仏様が阿弥陀如来である。
 今回はじめに紹介されたのは、東京の世田谷にある九品仏浄真寺というお寺だ。浄真寺には3つの阿弥陀堂があり、それぞれのお堂に3体の阿弥陀像が安置されている。いずれの阿弥陀像も、亡くなった人を極楽から迎えに来たときの姿をあらわしているという。ちなみに、九品仏の名前はこの9体の阿弥陀像からつけられたそうだ。
 また、人間は亡くなる際に、生前の行いの良し悪しや信仰心の深さによって、9段階に分けられると考えられてきた。そして、それぞれの段階によって極楽への往生の仕方が異なる。この考え方が「九品往生」である。
 九品往生において、最上位の「上品上生」は仏教の教えをまもり功徳を積んだ人を指し、最下位の「下品下生」は仏法にそむき罪を犯した人を指している。しかし、この世での身分や地位に関係なく、南無阿弥陀仏と唱え阿弥陀如来にすがる衆生は、すべて救われていくというのが浄土信仰の大きな特徴である。
 阿弥陀如来への信仰は藤原貴族が支配していた平安時代中期から盛んになった。その背景には、当時広まっていた「末法思想」がある。末法思想とは、「釈迦の死後2000年経つと仏法が衰え社会が乱れる」という考えだ。平安中期はその末法の世の始まりとされており、仏の力があるうちに極楽へと往生したいと願った人々が、必死に浄土思想にすがったのだ。こうして、浄土思想は貴族から庶民まで幅広い層の間で強く信仰されていくこととなる。
 また、番組の後半では、京都の伏見にある法界寺が紹介されていた。法界寺の阿弥陀堂には国宝「阿弥陀如来坐像」が祀られている。この阿弥陀如来坐像は、「定朝様(じょうちょうよう)」と呼ばれる様式でつくられている。定朝様とは、平安時代の仏師・定朝にはじまる丸みを帯びた優雅な彫刻様式を指す。さらに、阿弥陀如来坐像の頭上には極楽浄土の様子が描かれており、天女が飛翔する「飛天図」などからは、極楽浄土の美しい風景に想い焦がれていた当時の人々の情景が窺える。
 籔内氏は「昔の人たちが死後の世界や、死をどうやって迎えるのかを一生懸命考えて、それを形にしたものが阿弥陀様であった」と語る。番組は、苦しみの世から抜け出し、極楽に往生したいという人々の願いを受け止めてきた仏様、それが阿弥陀如来である、として締めくくられる。

参考URL:http://www.nhk.or.jp/kurashi/doraku-tue/