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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編 第1回「ほとけの世界観を知る」

2013/04/02 (Tue) 21:30~21:55 NHK Eテレ
キーワード
仏像、地蔵菩薩、六道輪廻、阿弥陀如来、極楽浄土
参考
番組公式
 この番組では、東京藝術大学大学院教授の籔内佐斗司氏を講師にむかえて、日本各地の仏像を巡っていく。籔内氏は冒頭で「仏像には光を象徴するものと、闇を背負っているものがある」と話す。シリーズ全9回中、第1回目の今回は京都を舞台に光と闇の仏に迫る。
 はじめに、寺町三条にある矢田寺の本尊「地蔵菩薩立像」が紹介された。この本尊は、「苦しみを代わって受けてくださる」という考えから、「代受苦地蔵(だいじゅくじぞう)」とも呼ばれている。仏像の前には、お不動様の閻魔のようなものがあり、これは地獄の炎を表現しているのだという。
 地蔵信仰の背景には、戦乱が繰り返された京都の歴史がある。籔内氏は、自分たちの町が焼かれていく様子――まさにこの世の地獄――を何度も見てきた人々が、生と死、特に死というものを真剣に考えてきた結果、地蔵信仰が生まれたのだ、と語る。死や闇といった、この世の地獄が身近にあったからこそ、人々は「極楽浄土にいきたい」という一心で地蔵菩薩にすがったのである。
 また、番組では六道珍皇寺の紹介とともに、「六道」についての解説が行われていた。六道とは、「死後に生まれ変わる六つの世界――地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道」を指す。仏教には、人は亡くなった後、その六つの世界のどこかに生まれ変わるという「六道輪廻」の考えがあり、六道は苦しみの世界だとされてきた。
 仏陀が入滅した後、そんな六道で苦しむ人々を救う役目を担ったとされるのが地蔵菩薩であった。そして、地蔵菩薩は後に、あらゆる現世利益をもたらしてくれる仏様として広く知れ渡っていくこととなる。
 さらに、番組の後半では、京都大原にある三千院の国宝「阿弥陀三尊坐像」が紹介されていた。中央に阿弥陀如来像、その脇に勢至菩薩と観音菩薩が控えている様子は、阿弥陀如来が極楽浄土から迎えに来た「来迎」の姿をあらわしているという。
 仏教の教えには、「死後に六道から抜け出し、極楽浄土へ行くためには、南無阿弥陀仏をひたすら唱えよ」というものがある。すると、臨終の際に阿弥陀如来が迎えに来て、極楽浄土に導いてくれると信じられてきたのだ。「阿弥陀三尊坐像」の勢至菩薩と観音菩薩が、臨終を迎えた者に語りかけるようにして座っているのもそのためである。
 闇を背負い、人々が極楽浄土に往生できるまで見守り続けてくれる仏様「地蔵菩薩」と、苦しみを抜け出したときに出会える光の仏様「阿弥陀如来」は、仏の世界を私たちに伝えてくれるとして番組は締めくくられる。

参考URL:http://www.nhk.or.jp/kurashi/doraku-tue/