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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

グラン・ジュテ~私が跳んだ日~「死化粧師 ウール琴子」

2013/03/23 (Sat) 22:25~22:50 NHK Eテレ
キーワード
死化粧、死化粧師、ウール琴子
参考
番組公式
 「グラン・ジュテ」は、人生の挫折を乗り越え、飛躍を遂げた女性たちを特集するドキ
ュメンタリー番組である。今回は死化粧師のウール琴子さんが取り上げられていた。死化
粧は、死後に遺体へ化粧を施す仕事として知られている。このレビューでは、死化粧を通
して別れの場をつくり続ける琴子さんの信念に迫っていく。
  琴子さんが死化粧をはじめたのは10年前。ニューヨークでメイクアップアーティストと
して活躍していた彼女は、アメリカ同時多発テロによって多くの命が失われたことに強い
ショックを受けていた。そんな琴子さんに、法医学者である父の佐藤喜宜さんは「亡くな
った人をメイクで生前の姿に戻すことはできないのか」という提案をしたのだ。この提案
を受けて、琴子さんは死化粧と出会うこととなる。
  帰国後、琴子さんは死化粧師としての仕事をスタートさせる。しかし、当時の日本で死
化粧はあまり知られておらず、葬儀会社の社員や看護師が行うことが一般的であった。こ
うした中、琴子さんは「死化粧の重要性を伝えたい」という一心で、誰もが簡単にメイク
を行えるような工夫を重ね、専用の化粧水も開発、さらには全国をまわって講習会を行う
など、死化粧を専門的な仕事として確立させるために尽力した。すると、次第に理解者も
あらわれ、彼女の努力は徐々に実を結んでいった。
  死化粧師としての仕事が軌道に乗った頃、自分の死化粧でどこまで顔をきれいにできる
のか、という想いから、琴子さんは完璧さを追求しはじめた。しかし、ある遺族からの一
言によって、彼女は自分のやり方に疑問を抱くこととなる。それは、女性の死化粧を依頼
されたときのことだった。メイクを終えた琴子さんは、「おばあちゃんじゃないみたい。
きれいすぎる」という言葉をかけられたのだ。
  当時の心境を、「遠回しに違うと言われたのがこころに残っていて、絶対こういう風に
してはいけないのだと感じた」と語る。遺族が死化粧に求めているものは何か、その答え
が見つからぬまま自問自答を繰り返す日々が続いたという。しかし、一人の親友から死化
粧の依頼をされたことを機に、「家族の要望を聞きながら、一緒に死化粧をすることが大
切なのではないか」と感じるようになる。
  それ以降、死化粧に関わる時間が遺族にとって悲しみを癒す助けになる、と考えるよう
になった琴子さんは、メイクをする際、遺族に積極的にかかわってもらうようになったと
いう。「大切な人を失った遺族がいい状態でお別れできる場をつくりたい」と語る琴子さ
ん。そんな彼女だからこそ、遺族たちに提供できる「特別な最後」があるのではないだろ