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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

日本人は何を考えてきたのか 第9回「大本教 民衆は何を求めたのか」

2013/01/06 (Sun) 22:00~23:30 NHK Eテレ
キーワード
近代化、格差、民衆、反発、平和、思想の変貌
参考
番組公式
 大本教は、京都府綾部と亀岡に本部を置き、出口ナオとその女婿出口王仁三郎(おにさぶろう)を教祖とする。民衆の願いを背負いつつ世界の変革を目指すも、国家による弾圧を受けた。そんな大本教が求めたものとはなにか。なぜ弾圧されたか。近代日本の底流に流れていた民衆の思想を見つめる。番組構成は、大本教の過程を追いつつ、三人の専門家と司会でその節目ごとに解説を加えながらすすめる。
 初めは、大本教の成立までを出口ナオを中心に進める。
 とても貧しい環境で育った出口ナオは、近代化という競争社会での格差の影響を一身に受けた。身の回りに次々起こる不幸とともに、近代社会に対する不満や怒りを抱いた末、出口ナオは神がかりして大本教を開き、自らにかかった「艮の金神」によって世界の立て替え、つまり世直し願望を説いて、全人類の救済と世界の平和を祈った。大本教は、当時の民衆にも広がりつつあった近代化への反発とともに生まれた信仰でもあった。
 次は、もう一人の開祖王仁三郎の存在に絡めて、二人の開祖の役割と発展、そして弾圧について語る。
 王仁三郎は、なおと同様、貧しい家庭で育つ。自身の山ごもりで培った悟りと正統的な神道知識を得て、ナオのもとを訪れた。互いに異質な二人の結びつきによって、大本教は発展していく。世界の立て直しを実践していった王仁三郎は、格差拡大などによる社会混乱は、政治に宗教が欠けているからとし、独自の世界ユートピア構想を世に謳い始めた。そして、大正デモクラシーの風潮とともに、民衆の現状打破の欲求とリンクして、大本教は拡大を続けた。
 王仁三郎が宗教活動から政治活動へと乗りだし、いよいよ規模を巨大化させてきた大本教の団体は、国家的脅威とみなされ、二度にわたって弾圧されたのだとする。
 最後は、弾圧の理由と大本教の求めたものについて、番組の見解をまとめる。
日本でファシズムが成立する際に、自分たち国家に比較的近いが異端的なものは弾圧する必要があった。弾圧は、大本教の思想内容よりも、その規模のエネルギーが国家にとっては脅威であったからではないかと考える。そして、王仁三郎は、二度の弾圧と太平洋戦争の敗北をへて、今までの過ちと、自らの信仰の本質が真の人類同胞主義にあったことを見つめ直し、本当の世界平和は全世界の軍備が撤廃したとき初めて叶うとした。
 大本教の思想は、民衆が近代をどう受け止めたかを反映しており、民衆の格差を無視した時代状況によって、変貌していった民衆思想の顛末を、今まさに、見つめ直す必要性があるとして、番組は、締めくくられる。