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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

歴史秘話ヒストリア 出雲縁結びの旅へ!~古事記編纂1300年神話の里の物語~

2012/11/7(Wed) 22:00~22:45 NHK総合
キーワード
神道、出雲大社、大国主、素戔嗚尊、櫛名田比売、須世理比売、縁結び、小泉八雲
参考
番組公式
 歴史上の偉人や土地、建物や文化などに注目し、それらに関わるエピソードを再現VTRなどで紹介していく番組。今回は2012年が古事記編纂1300年に当たる年であることから、出雲大社にスポットを当てる。出雲に伝わる日本神話の伝説を中心に、権威の象徴として朝廷で愛された勾玉や、出雲の地に魅せられ「怪談」を執筆した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の姿など紹介していく。
 出雲大社は現在、60年に一度行われる改修工事、平成の大遷宮の最中でもある。出雲大社は大国主(おおくにぬし)を祀り、恋愛や家族、仕事の縁を結ぶパワースポットだと紹介されている。11月は神在祭(かみありさい)という日本中の神々が出雲大社に集まり、人々の縁を結ぶと伝えられる祭が執り行われる。
 出雲には恋愛や子宝といった縁を結ぶ霊験のある神社が多い。松江市の八重垣神社は、素戔嗚尊(すさのおのみこと)と櫛名田比売(くしなだひめ)が結婚したという伝説が残っており、出会いを求める参拝客が多い。本殿の奥には、鏡の池という縁占いができる池がある。小銭を乗せた紙が水底に沈むまでの時間により、縁が結ばれるまでの時間が決まるのだという。
 また、雲南市の須我神社は素戔嗚尊が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した後に建てられ、櫛名田比売と安住した場所だと言われている。神社から一望できる日本海とその上を棚引く雲を見て、素戔嗚尊は「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」という歌を詠んだという。「沸き立つ雲が垣根を巡らしてくれ、妻を住まわせる素晴しい家ができた」と素戔嗚尊の喜びが歌には込められていると紹介する。須我神社の奥の宮には素戔嗚尊と櫛名田比売が宿ったと言われる夫婦岩がある。この岩に祈れば子宝が授けられると伝えられている。
 素戔嗚尊と櫛名田比売の間には須世理比売(すせりひめ)という娘が産まれる。その須世理比売に対し求婚したのが、前出の大国主だ。大国主は須世理比売の他にも全国各地の女神を嫁として迎えている。子供の数は180以上に及ぶと言われている。立正大学文学部教授の三浦佑之はこの伝承について、女神への求婚は大国主が土地を領有するということで、出雲を中心に日本が繁栄していたことを表しているのだと解説する。
 伝承以外にも出雲が全国から注目されていたことを示すものがある。2000年に出雲大社の地中から巨大な柱の一部が見つかった。この柱を分析した結果、48mの高さを持つ本殿が建てられていたことが明らかになった。一説には大和朝廷による国家事業として本殿が築かれたとも言われており、朝廷が出雲を重要視していたことが窺えるという。さらに、出雲で作られていた勾玉も、出雲の力を垣間見ることができるもののひとつだ。大和朝廷は、重要な祭事の折に、天皇の霊力を高めるために出雲の勾玉を用いた。また、勾玉は魂を象ったものと言われ、権威の象徴として扱われたという。
 古代の日本において注目を集めた出雲は、近代においても人々を惹きつけた。番組ではその代表として、ギリシャ出身で、日本の民俗に深い関心を持ち、日本風に改名までした小泉八雲(前出のラフカディオ・ハーン)を取り上げている。古事記を通じて日本に興味を持ち、松江を訪れた八雲を感動させたのは、海や山に祈りを捧げる、人々の素朴な暮らしだった。八雲は人々が日々祈る姿を見て、神々が自然の中に息づいていることを感じ、松江を神々の国の首都と称した。また、八雲が著した「怪談」には出雲に伝わる怪談や民話が載せられていることで有名だ。彼が多くの怪談を集めた理由について、八雲のひ孫である鳥取県立短期大学部教授の小泉凡氏は、「『怪談』には日本人の自然に対する畏怖の念がこもっている」とした上で、八雲は怪談の中から、自然をコントロールするのではなく、自然に合わせて生活する、日本人の謙虚さを感じ取ったのだという旨の解説をしている。
 番組の最後には、出雲の人々に数百年間伝わっている潮汲みという風習を紹介する。毎朝、稲佐の浜という浜辺で海水を竹筒に汲み、氏神の社を浄めるのだという。約40年間、潮汲みを続ける蚊屋フミ子さんは、病いや夫の死など、さまざまな苦難を神に感謝することで乗り越えてきたのだという。「毎日神に感謝して、それで守ってくださるのではないかなと思います」と語った。