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謎解き!江戸のススメ「幽霊~日本の怪談」

2012/08/06 (Mon) 22:00~22:54 BS-TBS
キーワード
江戸時代、幽霊、妖怪、怪談、浮世絵
参考
番組公式
 江戸時代、幽霊を題材とした歌舞伎や浮世絵が注目を集め、人々を楽しませたという。番組は幽霊や妖怪が江戸の人々にどのように受け入れられていったのか、数多くの幽霊画や妖怪の浮世絵を画面に映しながら紹介する。
 まず「幽霊には足がない」というイメージのルーツが円山応挙の幽霊画にあり、それが焚くと死者が姿を見せるというお香(返魂香)の伝説とともに、好奇心旺盛な江戸庶民の心を惹きつけたというエピソードに触れる。さらに、当時の最大の娯楽とされた歌舞伎でも四谷怪談などが夏の演目として楽しまれたことや、歌舞伎における幽霊の登場技法が現在の映画にも用いられていることなど、江戸文化に幽霊観が深く関わっていることが紹介される。
 次に取りあげるのは番長皿屋敷のお菊さんだ。番長皿屋敷伝説はお菊さんが落ちたと言われる井戸やお菊さんのものと伝わる墓を含め全国四十八カ所に伝わっている。同様の伝説が全国各地に存在する理由について兵庫県立歴史博物館主査の香川雅信氏は「虐げられざるをえなかった弱い人たちが唯一(身分の高い人に)抵抗する手段が幽霊になること。それが当時の人々に共感を持って迎えられたのではないか」と解説する。
 幽霊とともに江戸の人々に受け入れられていったのが妖怪である。「妖怪がいないよりはいたほうが楽しいだろう」という江戸庶民の粋な心が、妖怪が社会に受け入れられる根底にあったという。幽霊と妖怪の違いについて「幽霊は恨みがある特定の人物の前に現れ、現れる時間は幽霊によって違う。一方、妖怪は不特定の相手に、黄昏時という決まった時間に出没する」という柳田國男の提唱した定義が香川氏の口から語られる。
 最後には妖怪をモチーフにした浮世絵を多く描いた二人の浮世絵師、葛飾北斎と歌川国芳に注目する。とくに歌川国芳については、天保の改革で役者画や美人画のような浮世絵が取り締まられた際に描いた源頼光公館蜘作妖怪図(1843年作)が取りあげられている。一見ただの妖怪図だが、天保の改革を指揮した時の老中・水野忠邦の家紋の付いた主人公に、改革の反動で損害を被った人々が妖怪になり襲いかかっている。このような浮世絵に隠された風刺を江戸庶民は見つけ出しては喜んでいたという。