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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

古寺名刹こころの百景 第12話 高野山金剛峯寺(和歌山)

2012/07/24 (Tue) 18:00~18:55 BSフジ
キーワード
空海、真言密教、高野山、金剛峯寺、曼荼羅、世界遺産
参考
番組公式
 高野山は周りを山々に囲まれた、標高約800mの高さに位置する盆地である。高野山真言宗の総本山である金剛峯寺をはじめとした117の寺院が存在し、2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録された。番組は高野山の名所をめぐり、真言密教の祖、弘法大師空海が説いた教えを紹介する。
 まず、高野山ではじめに諸堂が築かれた場所である壇上伽藍に関連し、空海の生い立ちや真言密教が紹介される。空海は京で儒学を学んでいたが、名声ばかりを求める当時の教えに嫌気がさし、山に入ったと言われている。金剛峯寺宗務総長公室の薮邦彦師は「(空海は)山岳修行のなかで、万物全てに仏が宿るという考え(山川草木悉皆成仏)を研ぎ澄ませていったのだと思います」と話す。番組では、空海が説いた密教について、言葉で表すことのできない秘密の教えだとしている。薮師の「即身成仏というこの身このままで仏になることができる教えが真言密教の特徴です」という言葉も取り上げられていた。
 次に金堂の本尊薬師如来を中心とした仏像とともに、内陣両脇の胎蔵界曼荼羅、金剛界曼荼羅も紹介される。胎蔵界曼荼羅を大日如来の智慧が現実世界に広がり、実践される様子を表したもの、金剛界曼荼羅を中央から外側に救いの道、外側から中央へ悟りの道を示したものと解説する。さらに大塔の内陣は、胎蔵界曼荼羅の中央にある大日如来(本尊)とその周囲を金剛界の四仏、柱に描かれた16体の菩薩によって立体曼荼羅を表す。また、壇上伽藍全体も一つの曼荼羅となるよう、諸堂が配置されているという。
 壇上伽藍の境内端には神社があり、丹生明神(にうみょうじん)、高野明神(こうやみょうじん)が祀られている。高野明神は狩人に姿を変え、空海が高野山へ向かう道中を助けた。丹生明神は高野山の地を司り、空海は丹生明神から高野山を借り受けたと伝えられている。高野山の麓にある丹生都比売(にうつひめ)神社には空海が訪れる500年以上前から丹生明神が祀られており、壇上伽藍で100日間の修行を終えた僧はお札を納める。丹生晃市宮司は「仏と神が共にあるこの地には日本人の信仰観の源泉がある」と話す。
 最後には奥之院を取り上げる。奥之院には空海の御廟があり、参道には20万基ともいわれる墓石が並ぶ。中には織田信長、上杉謙信、武田信玄などの墓もあり、生前戦い合った者も、仏のもとで平等に祈ることができる場所だとしている。御廟には毎日食事が運ばれ、参拝者は御廟の手前にある御廟橋を渡るとき、深く一礼するという。これらの様子は今なお空海が人々の心の中で生き続けている証しなのだと番組はまとめる。