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わたしの世界遺産「建築・藤森照信」(第1回/全6回シリーズ)

2011/01/01(土)23:30~24:30 NHKBS hi
キーワード
世界遺産・建築・キリスト教・イスラム教
参考
番組公式
 世界遺産を各界の専門家が独自の視点で厳選し、紹介するシリーズ。今回は、建築士、建築史家である藤森照信氏が建築遺産のベスト10ランキングを選出する。藤森氏は、研究者として多数の著書があり、また屋根に植物の生えた「タンポポ・ハウス」「ニラ・ハウス」「一本松ハウス」などが知られる、アバンギャルドならぬ「野蛮ギャルド」の建築家でもある。ランキングは次の通り。
 10位 オビエドとアストゥリアス王国の建造物(スペイン)
 9位 メテオラ(ギリシア)
 8位 カッパドキア(トルコ)
 7位 アルベロベッロのトゥルッリ(イタリア)
 6位 天壇(中国)
 5位 古代都市テオティワカン(メキシコ)
 4位 ストーンヘンジ(イギリス)
 3位 白川郷・五箇山(日本)
 2位 ウルネスの木造教会(ノルウェー)
 1位 ジェンネ旧市街(マリ)
 10位から8位までは、キリスト教の建築物である。メテオラやカッパドキアは、イスラムの侵略から逃れて、天空近い岩山や地下深くに築かれた建築だ。7位から4位までは、トゥルッリと呼ばれる、石造りの三角屋根が並ぶイタリア・アルベロベッロの景観、中国皇帝による円形の塔「天壇」、メキシコの古代都市・テオティワカンのピラミッド、サークル状に並べられた巨石群・ストーンヘンジといった石の建築が占める。3位と2位は木造建築である、白川郷、ウルネスの木造教会が挙げられている。
 西洋始め、多くの文明の建築が、木から石へと変遷したのに対し、日本では石から木へと移っていった。藤森氏は、地質の違いから「良い石が採れるところで良い木は採れない、良い木が採れるところで良い石は採れない」という。木の建築を発達させた民族は、この技術をもって船を造り、侵略や交易に力を発揮した(倭寇・バイキングなど)。木の文化、石の文化の違いは、後々まで人々の暮らしのあり方、歴史に大きな影響を与えることとなったのである。
 しかし「7、8年前なら木造をトップにしたが」と前置きした上で、藤森氏が1位に選んだのは、マリ・ジェンネ旧市街の泥塗りのモスクである。藤森氏は泥を「もっとも人間にとって本質的な材料」という。この建築は川から採れる泥を日干しのレンガにし、人間の手で塗り固めることだけからできている。また、石、木など一切の素材は分解されれば土となることから、泥は「究極の素材」ともいう。土でできた建築は地面との境目を持たない。
 パルテノンの神殿も、法隆寺もランクインしていない、このランキングを特徴付けているのは、土を掘る、石を積む、といった人間の基本的な動きの集積を基本要素(削除)とした建築が、多く挙げられていることだろう。白川郷の合掌造り建築も、木を縛り、茅葺を積むといった作業で造られている。大地に巨大石を立てた、ストーンヘンジが「建築」として挙げられていることにも注意したい。(順序入れ換え)
 図面上の設計が統御する建築を、思考が主導する建築だとすれば、彫る、積む、縛るといった作業からなる建築は、身体性が主導する建築であると言える。前者が規則的で、ある単位によって分割されうるのに対し、後者はイレギュラーかつ、連続的な構造を持つ。その究極は、泥を塗り固めたモスクである。それらは本来どちらのあり方が古い、新しいということはないはずである。しかし、私たちは普段、法隆寺から現代建築に至るまで、前者のような概念のみで、建築を捉えがちではないだろうか。本番組では、世界の建築遺産から、改めて人間の知のあり方を考え直すことができる。