文字サイズ: 標準

宗教情報PickUp

テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

「ココロ見」極上の人生の対話(ゲスト:堂本剛と塩沼亮潤)

2010/09/25(土)23:45~00:15 NHK教育
参考
番組公式

 

 アーティスト堂本剛(31歳)と金峯山修験本宗慈眼寺住職の大阿闍梨である塩沼亮潤(42歳)との、「人生」について語る、対談番組。
 一方は人気アイドル歌手の堂本剛、他方は千日回峰行を成し遂げた修行者、塩沼亮潤。一見異色の組み合わせのように思えるも、二人の対談は、本質的なところで多く相通じるものが見出され、同時に「人生」の奥深さを思わせる内容であった。番組は、「空欲」という堂本の書で締めくくられ、求めすぎないことが人生の秘訣とまとめられた。

 堂本剛、故郷の奈良へ。まず足を運んだのが、古来より多くのアーティストを魅了してきた天河大辨財天社。創作のエネルギーをチャージする。続いて吉野山へ。吉野山では、仙台にある金峯山修験本宗慈眼寺(じげんじ)住職の大阿闍梨(だいあじゃり)、塩沼亮潤と出会う。塩沼は1300年間で2人しか成満者がいない、吉野・金峯山寺での大峯千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)を成し遂げた人間だ。
 この2人が出会った後、番組では、堂本と塩沼の対談が進められていく。堂本は、中学2年14歳のときに奈良から東京にわたり、それ以来ファンが求める自分になっていこうとしてきた。そのことに対し、本人は、「それはファンが求める自分であって、それが本当の自分であるのかと、思うようになっていった。イメージの自分と本当の自分。求められているものに自分が応えることで、ファンが喜んでいるのは感じる。しかし、自分はまったく喜べず、光をあきらめるような状態を感じ始めてから、自分の本音は言ってはいけないのかと感じていた」という過去を語る。
 その違和感に対して現在の堂本は「自分がやりたいことをやってくれた方が良い」と言うファンに支えられながら、自らの思いを曲や歌詞に託し、「愛」や「生きる大切さ」を率直に伝えていることを中心に、音楽活動を行っている。
 塩沼が故郷の仙台を離れ、奈良の吉野に修行に来たのが19歳のときであった。幼少期の頃の生活が大変で、世の中のためになるような生き方をしないといけないと、心のどこかで思っていた。大峯千日回峰行を終えて、気づいたら厄年を過ぎていた。
 堂本は「やるときは0か100。ちょっとやれば良いと言われたら、ものすごくやってしまう。それがときに、人を傷つけたり、自分に優しくなかったり、ちょっと極端だと思うけど、性格が許さない。自分のありのままを追究して生きていきたい」と述べる。

 2人で千日回峰行の道を歩いてみる。同じ道をひたすら歩くだけの行。それは心と体の限界に直面する経験。
 塩沼は495日目、生きるか死ぬか、瀬戸際に立たされた。そのとき、極限状態の塩沼を救ったもの、それは母だった。送り出してくれた母。塩沼は「ぎりぎりの状態のとき、砂をかむような思いをしろとの母の声が聞こえた。そこで、一歩進めることができ、行を続けられた」と言う。そして花が1輪。それが自分を癒す。自分は周りの人に、何を以て癒しとなるような行いができるのかと反省・・・。
 音楽は生老病死とつながっている。歌もお客さん、その先に捧げるということは一緒。捧げる、自分の奥深くのものを振るわせること。歌は捧げるもの。音で共感する。響が宇宙に永遠に広がっていく。どう話したら聞いてくれる人の幸せにつながるか。「他者とつながっていく」こと、一方、「自分がある」ということ・・・。「神様と仏様って親なのであろうか」とつぶやく堂本。
 最後に、死が隣り合わせの行をした塩沼が「人生は思い通りにならないように設定されているんだな」としみじみと語るところで番組はエンディングへと向かっていった。