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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

「たかじんのそこまで言って委員会 お盆特別企画 都市伝説祭り!!」

2010/08/15(日)13:30~15:00 読売テレビ
キーワード
宗教法人格の売買、マスメディア論
参考
番組公式
 今回はお盆特別企画で、番組が取り上げた都市伝説をランキング形式で発表し、各ゲストやコメンテーターにそれらを信じるか信じないかを討議させるという内容だった。
 そのランキングで2位となったのが「宗教法人を売買する地下オークションが存在する」というものだった。宗教法人ではお布施は非課税扱いであるため、その仕組みに目を付けた脱税したい人たちの標的になっているというのだ。
オウム真理教が反社会的な事件を起こして以来、宗教法人の設立が厳格になり、宗教法人を簡単には設立できないようになっている。だが、教祖の死亡や参拝者の減少などで休眠状態になっている宗教団体は現在5000ほどあり、その法人格の売買は法律で禁止されていない。だから、宗教法人格を買い取って代表者の名前さえ変えれば、税金を払わずに済むのだ。また、休眠状態になっている宗教法人を売りさばくブローカーも存在しており、そのブローカー達は高額所得者などに詰め寄り、「宗教法人を買って、脱税しませんか」などと言って勧誘するらしいのだ。その例として、あるラブホテルが休憩料などをお布施として申告し、約14億円の所得隠しをしていた事件が挙げられていた。このような実態があるにもかかわらず、検挙された宗教法人が少ない理由は、現在の国や地方自治体は現存する宗教団体の監査をせずに、放置したままにしていることが多いからだという。
 ここで番組VTRによる説明が終わり、各コメンテーターの討論が始まった。その結果、このような売買があり得ると信じた人は8人中6人と圧倒的多数であった。またコラムニストの勝谷誠彦氏は「これだけ休眠法人があればあってもおかしくはないが・・・」と言って判断を保留していた。唯一「信じない」派であった評論家の宮崎哲弥氏は「宗教法人の売買はもはや公然に行われており地下で売買は行われていない。私が信じないのは地下で行われているという部分であり、売買そのものは行われていて当然である」と言った。
「信じる」派の元経済産業省官僚で岸博幸氏は「過去には公益法人の売買もあったらしいから、宗教法人の売買もあってもおかしくはない。公益法人や宗教法人は既得権益化しており、非常にオイシイ」と発言した。同じく「信じる」派のジャーナリストの上杉隆氏は「もはや都市伝説ではなく事実、2000年前後に企業が節税のために宗教法人を購入するほどであった。宗教法人法の改正の動きもあるが、利益を手放したくない巨大宗教団体の影響でなかなか改正されない現状もある」と発言。
 そこで落語家の桂ざこば氏が「信者も教義も全くないのに宗教法人と名乗っている法人は、なぜ逮捕されないのか?」と質問すると、岸氏は「国や行政の監査が甘いから」と答えた。またコラムニストの勝谷誠彦氏は「監査をして宗教法人を廃止しようとしても、憲法で保障されている信教の自由が問題になり難しくなる」と補足した。
 番組内では、宗教法人格の売買が行われていると発言する人が多かったが、どれも確かな信憑性があるとは言いづらかった。ともすれば、何も知らずにこの番組を見た視聴者が、識者たちの発言をもとにしてあたかも「宗教法人格の売買は行われている」ということが当然のように信じられてしまう危険性がある。その点は、大きな影響力をもつテレビであるだけに、制作者側にも配慮が必要だったのではないだろうか。また、最初は「宗教法人の地下オークションが行われているか」という議題だったはずなのにいつの間にか「宗教法人の売買は存在するか」という議論になり、論点がずれた。そして番組としてのはっきりとした「宗教法人の地下オークションはあるか」ということの結論は結局明確に示されていなかった。この番組の制作者側が言いたいことは結局、「これはあくまで都市伝説なので信じるか信じないかはあなた次第です」というニュアンスのもので、事実か否かを明示する気がないようにも感じる。しかしマスコミュニケーションとはあくまで事実のみを放送するべきであり、いくら娯楽番組といえども視聴者に影響を及ぼす恐れのある不確定情報を無責任に発信するのは倫理的に問題があるのではないだろうか。