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宗教情報

宗教情報センターの研究員の研究活動の成果や副産物の一部を、研究レポートの形で公開します。
不定期に掲載されます。


2013/12/22

2013年の国内の宗教関連の出来事

宗教情報

藤山みどり(宗教情報センター研究員)

 2013年は、民主党政権から自公連立政権に戻って最初の1年であった。アベノミクスの効果か景気回復の兆しがみられ、6月には富士山の世界遺産登録が決定し、9月には2020年夏季五輪の開催地が東京に決まるなど、日本が上昇気流に乗ったようである。その一方で、7月の参院選でねじれを解消した政権が12月には特定秘密保護法を強行採決するなど、長期政権が予測されるなかでの強行突破を不安視する声もある。
 社会に目を向けると、1月に大阪市立桜宮高校で体罰を苦にした自殺事件の発覚、女子柔道界における暴力告発問題、10月以降にホテルやデパートで相次いで発覚した食材偽装問題などが世間を騒がせた。2012年に急速に冷え込んだ中国や韓国との関係は、悪化の一途を辿っている。
 これらを踏まえて、1年間の国内の宗教関連の出来事を振り返ってみたい。なお、2013年に起きた国内・海外の宗教ニュースの詳細は、来春発行予定の『宗教と現代がわかる本 2014』(平凡社)を参照されたい。
 
2013年の国内の宗教関連の主な出来事
1月14日 天台宗総本山・比叡山延暦寺、慈覚大師円仁の1150年御遠忌祥当法要
1月16日 多々良学園の破綻で曹洞宗に使用者責任、地裁が約16億5千万円の賠償命令
2月10日 日蓮宗大本山・中山法華経寺の加行所での荒行、134人成満、11人途中退堂うち1人死亡
2月27日 高野山真言宗、庄野光昭宗務総長不信任案が26日に可決、宗会解散
3月26日 高野山真言宗最福寺、競売に掛けられた朝鮮総連本部ビルを約45億円で落札
4月15日 浄土真宗本願寺派大谷光真門主、引退表明
5月8日  臨床仏教研究所、「臨床仏教師」養成プログラム開始
5月10日 出雲大社の「平成の大遷宮」、60年ぶりの本殿遷座祭
6月22日 富士山、ユネスコの世界文化遺産に登録決定
7月17日 曹洞宗正法寺、修行僧に暴行して骨折させた疑いで僧侶2人逮捕
7月17日 世界遺産「日光の社寺」共通拝観券停止
9月1日 イオン、3万5000円からの納骨・永代供養サービス開始
10月   伊勢神宮の「式年遷宮」、2日に内宮で「遷御の儀」、5日に外宮で「遷御の儀」
11月14日 天皇、皇后両陛下の葬儀、火葬に
 

遷宮とツーリズム

 2013年は、60年ぶりの出雲大社(島根県出雲市)の「平成の大遷宮」の「本殿遷座祭」(5月)と、20年ごとに行われる伊勢神宮(三重県伊勢市)の「式年遷宮」の「遷御の儀」(10月)が重なる年であった。伊勢神宮の2013年の参拝者数は、1896年に統計を取り始めてから過去最高を記録し、10月12日午後2時までで1000万人を超えた[i]。参拝者は、若い女性が多く、内宮の「おかげ横丁」の整備や、外宮門前への新規出店増に加え、流行の「パワースポット」巡りの影響とみられる[ii]
 また、ユネスコの世界文化遺産への登録が6月に決定した「富士山」は、2013年の夏山シーズンの登山者数は37万2465人で、2012年のデータがある御殿場口からの登山者数は前年比約90%増となった[iii]。世界遺産としての正式名称が「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」であることからもわかるように、古くからの信仰対象であるとともに、西洋芸術にも影響を与えた点が評価されたが、登山者を含めて人々に富士山が「信仰対象」と伝わっているとは思われない。2014年夏からは5合目以上を訪れる登山者から原則1000円の富士山保全協力金(入山料)が徴収されることになった。須山浅間(すやませんげん)神社(静岡県裾野市)などは、その分配金に期待するが、使途は未定である[iv]
 近代の伊勢神宮の「おかげ参り」は、ツーリズムの一環として発展した側面もある。また、ツーリズムから入る信仰もあるため安易には否定はできないが、宗教界としては、“単なるツーリズム”に終わらせない仕掛けを考えていくことも大切であろう。
 

宗教関連ビジネス

 宗教ツーリズムのほかにも、ビジネス界が商機に目をつけて宗教に歩み寄るケースは目立ってきている。日中関係の冷え込みで中国からの観光客が減少するなかで、2013年7月に政府が東南アジアで観光ビザの発給要件を緩和したため、インドネシアやマレーシアなどイスラム圏からの観光客を呼び込もうと、観光業界では特にムスリム(イスラム教徒)への対応が急務となっている。この動きは、2020年の東京五輪開催に向けての観光客招致と相まって加速すると思われる。成田国際空港も関西国際空港も、2014年には礼拝場所を現在の1カ所から3カ所に拡充する予定で、イスラム教の戒律に沿ったハラール食品の提供も行う。ホテル業界でも、メッカの方角を示すキブラのシールを全室に貼ったり、レストラン、食品業界もハラール食を提供したりするなど、イスラム教徒への対応が急ピッチで進んでいる。
 2013年にはビジネスマン向けに、宗教学者による宗教理解のための書籍が何点か刊行された。だが、ビジネス向けというには教科書の域を出ずに物足りない、あるいは多忙なビジネスマンが読むには冗長すぎるなど、それぞれ難があるようだ。実務の世界で必要とされる宗教理解には偏りがあるかもしれないが、それでも海外の信仰者によって信仰の大切さが日本に伝えられ、それを重んじる風潮が広まることは、宗教界にとって歓迎すべき流れであろう。
 

宗教界のトラブル

 ところで、2013年の国内の宗教界を見渡すと、好ましくない出来事のほうが目立った。
【資金問題】
 高野山真言宗(和歌山県高野町)の2月の春季宗会では、資産運用による損失の責任が問われ、庄野光昭宗務総長に対する不信任案が可決し、宗会が解散された。不信任案可決と宗会解散は、1952年の宗教法人化以来、初めて。
3月には、高野山真言宗の最福寺が競売に掛けられた朝鮮総連の本部ビルを45億1900万円で落札した。同寺の池口恵観法主は政界に広い人脈をもち、背後関係が取り沙汰されたが、納付期限までに資金調達できず、保証金5億3400万円を没収された。
 これらは宗教団体が所有する資金の多さ、あるいは資金管理の甘さについて、改めて人々に認識させたようでもある。今年は、宗教法人の申告漏れも報じられた。4月には妙智会教団(本部・東京都渋谷区)が約1億円の、10月には成田山新勝寺(千葉県成田市)が約2100万円の追徴課税を受けた。2014年4月からは消費税が引き上げられる。このような時期には特に、優遇税制の恩恵を受けている宗教法人への風当たりが強くなるので、いっそうの自重が必要であろう。
【暴行問題】
 スポーツ界で指導上の体罰や暴行が明るみに出たのと同様に、宗教界でも暴行事件が報じられた。日蓮宗の中山法華経寺(千葉県市川市)の加行所(けぎょうしょ)で行われる荒行で、2012年度は退堂者が11人と過去10年で最大となり、うち1人は退堂後に病死した。この事件を受けて入行審査の厳格化が図られたが、加行所で暴行を受けて退堂した初行僧がいたとの話も出て、宗務院が事実関係を調査することとなった[v]
 9月に曹洞宗の正法(しょうぼう)寺(岩手県奥州市)で僧侶2人が、修行僧を骨折させて逮捕された事件は、一般紙でも報じられた。法廷では、暴力が日常化していたことが認定され、「寺のほかの僧侶も暴力を見て見ぬふりをしていた」と指摘された[vi]。正法寺は、11月に宗門の僧侶の教育機関である専門僧堂の設置の認可取り消し処分を受けた。同様の事件は、真言宗善通寺派の総本山・善通寺(香川県善通寺市)の僧侶養成機関「善通寺専修学院」でも起きた。20代の修行僧にけがをさせた容疑で、寮監だった40代の僧侶が11月に書類送検され、宗派は再発防止のために寮監を1人体制から2人体制にすることとした。いずれも、被害者から警察に被害届が提出されたことで公になった事件である。
 これらは、スポーツ界で指導方法としての体罰が見直されるなかで、仏教界における修行や指導のあり方を問い直す象徴的な事件と言えよう。臨済宗相国寺派の相国僧堂の小林玄徳師家は、「重要なことは、時代の変遷のなかで修行の本質をどう守るかでしょう。臨済宗はそもそも修行において眼(まなこ)を開かせるために、平手打ちにする。それが必要な時もあるのです。警策についても同じです。ところが、最近は子供を修行に送り出す親の住職が子供可愛さにその本分を忘れている。(略)この問題は僧侶を育てるお寺の家族の意識とも深く連鎖しています」と『寺門興隆』(2013年9月号)で語っている。むやみな暴力や暴力事件の隠蔽は否定されるべきだが、従来とは“暴力”の捉え方や、その解決方法が変化してきている状況で、どのような形で修行を維持していくかが問われている。
 

宗教界の新しい動き

【浄土真宗本願寺派の門主引退表明】
 トラブルも多かったが、宗教界には新しい動きも見られた。海外では、ローマ法王ベネディクト16世が2月に生前退位を発表し、3月に南米初のローマ法王フランシスコが誕生したことが2013年の大きなニュースとして挙げられる。日本でも浄土真宗本願寺派の大谷光真(こうしん)門主(67)が、2014年6月5日に引退すると4月に正式表明した。投票で選ばれるバチカンとは異なり、浄土真宗本願寺派の門主は世襲である。光真門主も、実父の前門主の生前引退を受けて就任しており、次期門主には長男の光淳(こうじゅん)新門(35)が就くため、宗門に大きな変化はないとみられる。だが、対外的にも大きな功績を残した光真門主の引退は、当面は宗門にとって損失面が大きいのではないか。
 また、全日本仏教会の第31期(2014年4月~2016年3月)副会長4人のうちの1人に、1957年の全日仏設立以来、女性僧侶としては初めて、尼僧の鷹司誓玉(たかつかさ・せいぎょく)浄土宗大本山善光寺大本願法主が就任する。仏教界に新風を吹かせることができるのか、期待される。
【「臨床仏教師」の養成開始】
 このほか「心のケア」に関する新しい試みや、東日本大震災の被災地への継続的な支援もみられた。
 2012年から3年間の期限付きで設置された東北大学の「実践宗教学寄付講座」で行われている「臨床宗教師」研修の修了者は、2013年12月の時点で57名となった。この「臨床宗教師」の名称は他団体でも使用されるようになり、NPO法人日本スピリチュアルケアワーカー協会も独自に「臨床宗教師」を認定している。「臨床宗教師」は、宗教や宗派の壁を超えて心のケアを行うために創られた名称である。これとは逆に「仏教」であることを前面に出し、現代社会における様々な苦悩を仏教精神に基づいてケアしようという「臨床仏教師」の養成プログラムが、全国青少年教化協議会の付属の臨床仏教研究所で5月に始まった。定員80人の枠に倍以上の申し込みがあり、定員が90人に増やされたという。
 また、2013年9月には日本スピリチュアルケア学会が認定する資格「スピリチュアルケア師」の第1回資格認定書授与式も行われた。この資格は宗教色が薄いものであるが、認定者97人のうち宗教者は約20人だった。
 せっかく資格を取得しても、フォローアップや、その後の活躍の場がなければ、生きた資格とはならない。「臨床宗教師」の試みは宗教界から広く注目されたが、被災地から遠く離れた地元に帰ると活躍の場がないという声も聞く。宗教者の心理系の資格は増えたが、その資格を生かす場をいかに増やすか。資格の信頼性を、どうアピールしていくのか。資格を強化するための連携は可能か。まだ課題は山積みである。
 なお、自殺については、政府や自治体、各団体が取り組んだ成果か、内閣府と警察庁が発表した2012年の自殺者数は2万7858人と、15年ぶりに3万人を下回った。だが、厚生労働省のまとめでは、精神疾患にかかって労災認定された人は、2012年度は475人と、3年連続で過去最多を更新している。心のケアに取り組む余地は、まだあるとみられる。
【東日本大震災への対応】
 宗教界では東日本大震災への対応は継続して行われている。被災地支援のため、回向院(東京都墨田区)では戦後初めて、善光寺(長野市)の仏像を公開する出開帳(でがいちょう)が行われ、4月から5月の期間中には4万1293人が参拝した。また、宮城県東松島市野蒜(のびる)地区では11月に全真言宗青年連盟の僧侶ら約350人による巡拝慰霊法要が行われた。このような行事が、継続的支援を促すのに役立つことは言うまでもないだろう。
 今回の震災では、寺社の避難場所としての役割が見直されたが、これを機に自治体と協定を結ぶ寺院も増加した。宗派を超えた17寺院でつくる釜石仏教会と岩手県釜石市は10月、災害時に寺院を避難施設として開放するなどの連携協定を結んだ。また、11月には京都市内の11社寺が、災害発生時に観光客に避難場所を提供する協定を市と締結した。「観光客一時滞在施設」の指定を受けた清水寺、天龍寺、東本願寺は、最長3日間、避難者を受け入れる。このような地道な活動から、厳格な「政教分離」の壁が低くなっていくことを期待したい。
 

宗教界周辺の問題

 このほか宗教界が押さえておいたほうがよいと思われる出来事をいくつか挙げておこう。
【生命倫理問題】
 1つは生命倫理問題である。4月から、妊婦の血液で胎児の染色体異常を判別する新型出生前診断の臨床研究が開始された。安易な命の選別を助長する可能性があるとして遺伝カウンセリングの受診が必須とされたが、憂慮された事態が現実のものとなった。6カ月間の受診者3514人のうち67人が「陽性(異常あり)」と判定され、うち3人が羊水検査(確定検査)を受けずに中絶。羊水検査で異常が確定した56人のうち53人が中絶、2人が流産、調査時点で考慮中が1人という結果だった。
 8月には、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(ねつやひろ)院長が、多胎妊娠で異常のある胎児を選んで減胎手術を実施したと発表した。厚生労働省の審議会が2000年にまとめた報告書では、減胎手術は3つ子以上の場合は例外的に認めるとしたが、異常の有無や性別で減らす胎児を選ぶことは認めていない。
 新型出生前診断についても、減胎手術についても、政府の法規制がないままである。新型出生前診断には学会規制はあるが、拘束力はない。医療技術の発達に法規制も追いつかず「命の選別」だけが進む現状を、「いのち」をキーワードに原発問題等に発言をしてきた宗教界が見過ごしていてよいものだろうか。
 生殖医療の進歩は、このほかにも新たな問題を生み出している。5月には第三者の卵子提供を仲介するNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD-NET)」(神戸市)が、卵子を無償提供する女性9人を登録し、患者3人に卵子を提供することが決まったと発表した。厚生労働省の審議会が2003年、法整備を条件に、匿名の第三者の卵子提供を認めたが、こちらも法整備は進んでいない。
 12月には最高裁が、性別を女性から変更した男性について、第三者から提供された精子で妻との間にできた子を、法律上の子と初めて認めた。血縁よりも、「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」という民法772条の適用が重視された。性別を変更していない男性の場合は、第三者提供の精子で生まれた子どもも法律上の子と認められている事実からすれば、当然の流れであろう。
 だが、いずれにせよ第三者提供の精子(あるいは卵子)で生まれた子どもは、血縁上の父子(あるいは母子)関係が明白でないという問題が残る。これらは親にとってはよいかもしれないが、子どもにとってはどうだろうか。第三者提供の卵子・精子によって生まれた子どもの「親を知る権利」の問題、血縁関係が明らかでないために生物学的な理由からの近親婚の禁止が機能しなくなるなど、さまざまな問題が想定される。生殖医療が進む前に、これらへの法整備を早急に進める必要があるのではないだろうか。
 
【民法改正と倫理】
 これに対して、子どもにとっては望ましいが親にとっては疑問に思われる民法改正もあった。最高裁で婚外子の相続差別は違憲との判決が9月に下され、12月には婚外子への遺産相続分を嫡出子と平等にする民法改正案が成立した。最高裁の判決理由は、家族形態の多様化を背景とするものだった。相続争いをした婚外子にとってはよい結果となったが、結婚していた妻の権利の保護(婚外子の相続分が増えることによって相続した家屋を手放す可能性が高まる)や、夫婦間の倫理の問題は棚上げにされた。
 生殖医療にかかわる「命の選別」や、このような親子関係の問題については、宗教界とは無関係という考えもあろうが、倫理や道徳については宗教界に近しい分野でもあるので挙げておく。
 
【いつか来た道】
 最後に、日本の方向性を考えると、「いつか来た道」に戻るのではないかという危惧は、あながち杞憂でもないようである。日中関係、日韓関係は悪化の一途で、春ごろには集団的自衛権の行使を含めた憲法改正論議が盛んになった。
 4月28日には政府が開いた「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」は、「天皇の政治利用」が問題になった。沖縄県民にとっては「屈辱の日」に開かれた同式典では、会場内からの「天皇陛下万歳」との声につられる形で、出席した両陛下を前に安倍晋三首相らが「万歳三唱」をする事件が起きた。また、ブエノスアイレスで9月に開かれた2020年の五輪招致を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会への高円宮久子妃殿下の出席については、宮内庁長官が「天皇、皇后両陛下もご案じになっているのではないか」[vii]と異例の発言をするなど、やはり「皇室の政治利用」と批判された。『日本経済新聞』(2013年9月3日)は、「天皇に主権があった戦前の国家体制の弊害を教訓として、日本国憲法が天皇(および皇室)の政治活動を制限していることを忘れてはならない」とした。
 安倍首相はまた、10月の伊勢神宮の内宮で行われた式年遷宮の「遷御の儀」への参列を「私的」と強調したが、1929年の浜口雄幸首相以来の現職首相の出席で、これも「政教分離」に抵触するのではと賛否が分かれた。國學院大學の大原康男名誉教授は、「特定の宗教を援助や助長、促進することにはならないから憲法違反ではない」とし、政治評論家の伊藤惇夫氏は「私人としたのは『政教分離に抵触する』という認識があるからだろう」と分析し[viii]、児童文学作家の山中恒氏は、「かつて伊勢神宮は祭政一致、国体原理主義の総元締だった。安倍首相の行動は明らかに戦前回帰」と批判した[ix]
 12月に参院本会議で強行採決された特定秘密保護法については、「先の大戦で多くの情報が国民に秘匿された歴史」などを理由に挙げて、11月の時点で真宗大谷派が宗務総長名で内閣総理大臣宛てに「『特定秘密保護法案』の廃案に関する要望書」を提出するなどした。法案成立後には、日本カトリック司教協議会常任司教委員会が、特定秘密保護法は「主権在民、基本的人権の尊重、平和主義を侵害する恐れがある」などとして、強行採決への抗議声明文を発表した。
 政権の目指す方向性が杞憂に終わればよいのであるが、戦争協力を反省した過去をもつ多くの各宗教団体は、このような政治や社会の動きにも、注意深く対応していく必要があるかもしれない。
 
[i] 『日本経済新聞』2013年10月13日
[ii] 『東京新聞』2013年10月4日
[iii] 『東京新聞』2013年9月7日
[iv] 『東京新聞』2013年12月3日
[v] 『中外日報』2013年5月18日
[vi] 『読売新聞』2013年9月13日、2013年9月27日、『岩手日日新聞』2013年9月27日
[vii] 『産経新聞』2013年9月3日
[viii] 『東京新聞』2013年10月4日
[ix] 『朝日新聞』2013年10月3日