• トップ
  • 第六回「来年はうさぎ年、ところで干支って?」
文字サイズ: 標準

宗教こぼれ話

このコーナーは、宗教情報センターに長年住みついている知恵フクロウ一家の
長老・宗ちゃんと、おちゃめな情報収集家・情ちゃん、そして、
日々面白いネタを追い求めて夜の空を徘徊するセンちゃんが、
交代で、宗教に関わるさまざまなエピソードを紹介します。


第六回「来年はうさぎ年、ところで干支って?」

2010/12/22 第六回「来年はうさぎ年、ところで干支って?」 

宗ちゃん マフラーが首に心地よい季節がやってきましたね。今年ももう終わりですね。ちょうど今、来年の年賀状の準備をしていますが、2011年の干支(えと)は卯ですね。
情ちゃん 日本では兎だけど、タイでは兎ではなくて猫年なんですって。ベトナムやチベットもタイと同じく猫年らしいわね。そもそも干支って、どこの国が発祥なのかしら?
センちゃん エヘン。干支は、中国で誕生しました。干支は、十干(じっかん)(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)と十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)の組み合わせでできている暦で、60年でひと回りします。この暦で言えば、2011年は辛(かのと)卯(う)です。十二支の12という数字は、木星が天を12年で一周することからきています。十二支は、本来はその年の木星の位置を表す語でした。後漢(25~220年)の時代に覚えやすいように身近な動物を割り当てたと言われています。もっとも、十二支も原点をたどればインドや古代バビロニアという説もありますが。(※1、※2)
情ちゃん では、日本やタイ、ベトナムに広まっている十二支というのは、すべて中国から伝わったものなの?
センちゃん そうですね。日本には仏教とともに伝わったようです。また、アジアだけでなくロシア、アラブ、ヨーロッパなどにも広まっていて、現在も使われています。ロシアでは干支は「東洋のホロスコープ」と呼ばれていて、運勢占いに用いられているそうです。これは日本の干支が迷信や占いと結びついているのとよく似ていますね。このように十二支は各地に普及しましたが、登場する動物は地域にとって身近な動物に置き換えられたようで、ベトナムでは丑は水牛に、辰の代わりにアラブ諸国ではワニ、ブルガリアでは猫が割り当てられています。また、日本では亥は猪ですが中国では豚で、多くの国では豚となっています。(※3、4)
情ちゃん 豚と言えば、今年の初めシンガポールのマクドナルドでちょっとした騒動があったわね。マクドナルドが、十二支の動物に扮したドラえもんのぬいぐるみを販売したんだけど、豚を食べないイスラム教徒に遠慮して「豚のドラえもん」の代わりに「天使のドラえもん」を販売したんですって。そうしたら、十二支のぬいぐるみをそろえようとした人や、自分の干支が豚だった人から苦情が殺到して、結局、お詫びの広告を出して、豚のドラえもんを販売することになったの(※5)。
宗ちゃん イスラム教徒への過剰な気配りが裏目に出たのですね。そう言えば、日本では猫が十二支に入っていない理由として、「十二支の動物を決めるときに、ネズミが猫にウソを教えたため十二支に入れなかった。だから猫はネズミを追いかけるようになった」というような話がありますが、実際には猫の家畜化が遅かったからのようですね。古代エジプト人が猫の家畜化に初めて成功したものの猫の輸出を禁止したため、中国などではなかなか猫が身近な動物とはならなかったんですね。(※6)
情ちゃん なるほど。日本では「因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)」の神話があるくらい、うさぎは昔から身近な動物だったんですよね。
センちゃん 平安時代の説話集『今昔物語集』(※7)にも、うさぎの話がありますよ。うさぎが火の中に身を投じて、お腹を空かせた老人に自分の肉を捧げたという仏教説話です。この老人は実は帝釈天(たいしゃくてん)で、捨身行為を讃えるためにうさぎを月に送ったため、月にはうさぎの姿が見えるのだそうです。
宗ちゃん 切ない話ですね。このところ不景気のせいか日本ばかりか世界全体が重たい空気に包まれていますが、そんな中でも、このうさぎのような利他の心は失いたくないですね。ところで、株式相場の格言には「辰巳(たつみ)天井、午(うま)しり下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ。戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ねずみ)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる」(※8)というのがあります。これによれば、卯年に当たる来年には相場が上昇し、株式市場が回復し始める、ということになりますが、当たるかどうかはともかく、来年が良い年となって、皆さんが幸せに向かって跳躍できるよう、お祈り申し上げます。どうぞ、よいお年をお迎えください。
参考資料
※1『読売新聞』2002年5月24日 「暮らしの謎学」大分県立歴史博物館長 岩井宏實
※2『京都新聞』1985年12月15日
※3『京都新聞』2008年1月20日
※4『東京新聞』2007年4月20日
※5『読売新聞』2010年1月25日
      http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/business/20100125-OYT8T00273.htm  
※6『朝日新聞』2007年1月13日「昔も今も」茨城大助教授 磯田道史
※7『今昔物語集8巻第五 第十三 「三獣、菩薩の道を修行し、兎が身を焼く」
※8『日本経済新聞』2002年1月4日