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2011/11/29 第十六回「仏教学術ポータルサイトmugen project」
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2年前に、カリフォルニア大学バークレイ校で日本仏教の研究会議があったとき、主催者のダンカン・隆賢・ウィリアムズ先生(Duncan R. Williams、University of Southern California)が、仏教を学ぶためのポータルサイト、Mugen Projectというのを構築中という話を聞きました。その時は検索しても見つからなかったので、探し方が悪いのか、あるいはサイトがまだ構築中なのかとは思いましたが、記憶の中に沈んでしまいました。今回、アメリカ宗教学会を契機に、11月19日に、仮公開(soft launch)をされました。ウィリアムズ先生じきじきに直接デモをやってもらったので、これを紹介したいと思います。 Mugen Projectは、仏教伝道協会の出資による、仏教について知るためのポータルサイト(英語)。 ちなみに、仏教伝道協会は、精密計測機器会社として知られるミツトヨの創業者沼田恵範が1965年に発願して始めたものです。ホテルに泊まると、国際ギデオン協会の新約聖書と、仏教伝道協会の仏教聖典が置かれていることがありますが、後者も彼らの活動の一つ。両者とも「宗教団体」ではなく、宗教的な智慧が万人に役立てられればという意図で、これらのテキストを普及させています。たとえばホテルの部屋になにかの事情で自殺をしようとしている人が泊まることがありますが、そうした人にも手にとってもらい、思いとどまってもらえば、という考えもあるのです。 最近は置いていないホテルも増えていますが、もったいないですね。 さて、MUGEN Projectですが、是非ウェブサイトを覗いてみてください。
サイトは大きく8つのカテゴリにわけられています。 1.Time Periods(時代) 2.Rituals(儀礼) 3.Society(社会) 4.Geography(地理) 5.Philosophy(哲学、思想) 6.Tradition(伝統) 7.Texts(原文) 8.Persons(人物) ※和訳は宗による クリックしながらたどっていくと、文献のリストがずらずらっと出てきます。 サブタイトルに"A BIBILIOGRAPHIC DATABASE ON BUDDHISM"とあるように、何かを調べるためにはどんな文献があるかを知るためのデータベースであることがわかります。とくに、仏教の長い歴史を東アジア全体で捉えるtimeや、google mapを活用した地図とデータの複合システムなど、こんな角度から調べられるのかと新鮮です。
検索すれば調べるのは簡単だ、こういうポータルサイトを手間をかけて作る意味はあるか、と考える人もあるでしょう。考えてみて下さい。ウェブで引っかかってくるのは、素人の孫引きと、マニアックな記述、専門家の論文のような記述などの混在です。きちんと調べようと思うときに、どんなものがあるのか、ということは、ウェブ上の情報ではなかなか真贋を見極めにくい。また、人に知られていないこと、人気のないことは、ウェブ上にもあがりにくい。Mugen Projectは、専門家集団の監修を経て、充実した情報源になっているのです。検索すれば、定番も、評判の悪いものも同じように並んでしまいますが、専門家は基本書や定番の資料を知っています。これはうれしいですね。ウィリアムズ先生自身が、自分の研究による文献情報も、こちらに「寄付」したと言っておられました。
きちんと調べたい、という人のためにとても貴重な情報源、現在はまだ試運転中(Soft Launch)ということなので、使ってみて意見を寄せてもらいたいということです。是非活用してみてください。 とりあえず、Parinirvanasutraとか、Angulimalaとかを探してみましたが、ちょっと見当たらなかったので、これからに期待。まだこれからデータが入るであろう領域もあります。しかし、覗いていていくらでも活用方法が湧いてくる、すばらしいポータルサイトを作られた関係各位のご尽力に感謝です。 (宗) |