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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

ろーかる直送便 東北Z TOHOKUメンコイらぼ「いとしの神さま仏さま」

2015/06/10 (Wed) 15:15~16:00 NHK総合
キーワード
東北、民間仏、起き上がり小法師、復興
参考
番組公式
 今回のテーマは、「運やパワーを授けてくれる神さま・仏さま」である。番組では、いま若い女性を中心に人気を集めている、仏像、お守り、パワースポットなどが取り上げられていた。本レビューでは、番組内容を振り返りながら、東北の人たちが大切にしてきた神さま・仏さまについて紹介してゆく。
 
○北東北に伝わる仏像~個性豊かな民間仏たち~

 東北地方には魅力的な仏像がたくさんある。そんな仏像大国としても知られているこの地方には、土着の信仰と混ざり合い、独自の発展を遂げてきた仏像が存在する。
 番組で紹介されていたのが、岩手県の八幡平市博物館に展示されているお像である。忿怒の形相をしているこのお像は、不動明王をモデルにして作られたという。
 
 本来、不動明王には「剣」を手にしているという決まりがある。しかし、この博物館のお像は、その手に「斧」を握っているのである。東北の人々は、なぜ決まりに従わず、お像を作り替えたのだろうか。
 その理由について、東北の仏像を研究している、弘前大学の須藤弘敏氏は、「(東北地方は)中央から離れているため、中央からの影響が弱かったのではないか」と指摘する。それゆえ、東北の人々は、「都や江戸の仏像のルールや論理、装飾の方法は一切無視して、自分たちがいいと思うもの、これなら拝めるよ、という像をつくった」のだという。
 
 このような、仏像の専門家ではない庶民のつくった仏像は「民間仏」と呼ばれる。東北地方には個性的な民間仏が多く存在するが、そうした仏像がつくられた背景には、山で生きる人たちの、生活に根ざした切実な想いがあったという。
 なぜなら、自然と向き合う山仕事はいつも危険と隣り合わせだったからである。それゆえ、当時の男たちは、自分用にアレンジしたお像を「お守り」として身に付け、日々の山仕事に望んだのである。厳しい山の中で命をかける毎日。民間仏は、いまもむかしも、人々を身近なところから見守ってくれているのである。
 
○起き上がり小法師~決してくじけない不屈の精神~

 会津の人々が昔から大切にしてきたお守りのひとつに、「起き上がり小法師」がある。「起き上がり小法師」は、転がしてもすぐに起き上がる小さな張り子人形である。小さいけれども、転んでもしっかりと起き上がるたくましさが、人々のこころをがっちりと掴んでいるそうだ。
 
 地元では、毎年1月10日に開かれる「十日市」で「起き上がり小法師」が買い求められる。ちなみに、子孫繁栄のため、家族の人数よりも1つ多く買う、というのが昔からの習わしなのだという。会津では「子孫繁栄」や「家内安全」を願って、毎年多くの「起き上がり小法師」が、各家庭の神棚に納められている。
 
 そして、2011年の震災後、復興支援の一環で、世界中の著名人がオリジナルの小法師を制作するなどして、「起き上がり小法師」は大きな注目を集めている。さらに、被災者の方々が、支援への感謝の気持ちを表すため、大熊町のゆるキャラを小法師にして支援者に届けるなど、「起き上がり小法師」は人と人とをつなぐ架け橋ともなっているのである。
 「やはり起き上がりというのがいい。どんなことがあってもめげない」と語る地元の人々。「決してくじけない会津不屈の精神がいま、福島全体を力強く励ましている」のである。
 
<参照URL>
番組HP  http://www.nhk.or.jp/sendai/tohoku_z/archive/index_menkoi.html