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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

クローズアップ現代「長寿ペットと高齢者~老いの日々をどう生きる~」

2014/11/11 (Tue) 19:30~19:56 NHK総合
キーワード
ペット、高齢者、孤立、孤独死
参考
番組公式
 今回は、現代社会において、結びつきを強めるペットと高齢者の関係が取り上げられていた。「人間にいやしを与えてくれるペットの存在から透けて見える、高齢者の現実。長寿ペットと高齢者の関係から、今起きている課題を浮き彫りにし、より良き老後の過ごし方について考える」ことが番組の趣旨である。(番組HP より)
 
 高齢者のみの世帯や、独居世帯では、ペットを大切な伴侶とし、家族以上に愛情を注ぐ者も少なくない。「(ペットと)同じ墓に入りたい」というある女性の言葉からは、ペットが人間にとって「飼育する動物」から「家族」へとその存在意義を大きく変化させていることがうかがえるだろう。
 しかし、濃密になり過ぎた両者の関係は、ときとして高齢者の社会的孤立を招く。ペットの世話が気になって病院への通院や介護施設への入居を拒んだり、自身の食費を切り詰めてまでペットのエサ代にあてるなど、過度にペット中心な生活を送る高齢者も出てきている。また、ペットの鳴き声やにおいをめぐって周囲と対立が生じてしまうことも孤立を深める要因である。高齢者の社会的孤立は、孤独死などの問題にもつながっていくため、ペットと高齢者との過度な依存関係を改善していくことが求められている。
 
 ここまで、高齢者がペットと暮らすリスクに焦点を当ててきたが、もちろん、ペットと暮らすことでより充実した生活を手にしている高齢者もいる。番組でも、ペットを通して社会との接点や、他者とのつながりを手に入れた高齢者や、自らの生き方を見直すきっかけを得た高齢者が紹介されていた。
 番組出演者の関西学院大学教授・奥野卓司氏が語るように、「高齢者がペットを飼うことは、ベースとしてはよいこと」である。重要なのは、社会とのつながり、他者との人間関係を失うことなく、ペットと向き合っていくことである。ペットとの「依存」関係に陥ることなく、ペットを通して他者との「共存」関係を築いていくことが、ペットと暮らす高齢者の生活をより良きものにしていくために求められているのではないだろうか。
 
○参考URL
・番組HP「クローズアップ現代」
http://www.nhk.or.jp/gendai/yotei/index_yotei_3579.html (2014/11/18 最終閲覧)
・伊藤比呂美(2013)『犬心』文芸春秋
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163764603 (2014/11/18 最終閲覧)
☆高齢者がペットとの共存関係を築き、自らの人生をよりよいものとしていく例を紹介する際に、番組が参照していた本です